[オーディオ] ROON ServerをIntel NUCに変えた
私のリスニング・ソースはファイル再生とサブスクストリーミングで90%、ヴァイナル(アナログ)で9%という状況です。CD再生は1%か、場合によってはそれ以下。もちろんCD盤そのものは今でも購入/サンプルを含め少なくない数を入手していますが、すべてロスレス・リッピングしてデータ化して聴いています。なので手持ちのエソテリックのSACDプレイヤーよりもパイオニアのBlu-rayドライブの方が稼働率が高いほど。聴かないわりに重くてデカくて場所ばかりとるSACDプレイヤーはついに撤去してしまいました(手放す決断はまだできない)。
さてデジタル再生のうちローカル・ストレージ(NAS)に保管しているファイルの再生とTIDALやSpotifyなどサブスクの再生の比率は3:7か2:8ぐらいでしょうか。 音楽ライターという職業上、新譜を大量に聴くのが仕事なので、どうしてもサブスクリスニングが多くなります。サブスクで聴いて特に気に入ったもの、自分にとって大事なアーティスト、そして当然ながらサブスクにないものはデータを買うことになります(その中でもさらに大事なものはヴァイナルを購入)。そうしたデジタル再生全般を司っているのがROONという海外発の総合音楽再生/データベース・ソフトです。
ROONについては既にあちこちで語られているのでここで改めて詳細について触れることは避けますが、私が一番重宝しているのが、ローカル・データとサブスク音源をシームレスに統合・管理できること。といってもROONで取り扱うサブスクはTIDALとQobuzのみで、どちらも日本では正式にサービスインしていない。特にQobuzは日本からの利用がほぼ不可能であり、TIDALもこっそり裏技的に使うしかないんですが、どちらも使っていないという人はROONを使う意味は半減すると思います。ちなみに私はTIDALをROONに組み込んでこっそり使っています。詳しくは砂原良徳さんのポッドキャストであれこれ喋ってますので、お暇な方はどうぞ。ちなみにQobuzは日本の配信サービスe-ONKYOを買収し、年内に日本進出するとアナウンスがありました。Qobuzが日本で使えるようになれば、ROONの利用価値はさらに上がります。
このROONという音楽ソフトは、日本でも評価が高く、利用者もかなりの数に上ると思われますが、特にオーディオマニアに人気が高い。それはROONの機能性や使い勝手の良さ(特に動作が非常に軽く大量のデータを片っ端から検索しても全くストレスがないのが素晴らしい)もさることながら、音の良さと、その音の良さを引き出すためにあれこれ工夫が必要で、それがマニア心をくすぐることも大きいのではないかと思っています。自分のシステムを良い音で慣らすためには労苦を厭わないのが、いやむしろその過程を楽しめるのがオーディオマニアですが、ROONは手間をかければかけるほどどんどん音が良くなるソフト/再生システムなのです。それは逆に言うと、何も手を施さない素の状態ではそんなに良い音ではない、ということでもあります。実際、私がROONを使い始めた当初は、それまで使っていたAudirvanaという再生ソフトの方がずっと良い音だと感じました。それでもその高い機能性や使い勝手の良さに惹かれて我慢して使い続け、少しでも音を良くしようとLANケーブルやスイッチング・ハブをオーディオグレードのものに変え、USBストレージをNASに変え、ストリーマー(ネットワークトランスポート)を良いものに変え、強化電源を導入し、電源ケーブルを変え、USBケーブルをグレードアップして……と手を加えれば加えるほど、目に見えて音が良くなっていったのです。今ではかなり満足度の高い音が鳴っていると思います。
それはひとつにROONは基本的にネットワーク・オーディオで使うことで本領を発揮するソフトだからです。ROONはROONをインストールしたパソコン1台あれば、そこからUSBケーブルでDACに繋ぎ、そこからアンプに接続するだけで使えます。つまりCDプレイヤーと同じようにオーディオソースのひとつとして手軽に聴けます。ですがこれではROONのポテンシャルの何分の一しか発揮していないと思われます。同じようにUSBでDACに繋ぐだけなら前述のようにAudirvanaの方がずっと音がいい。しかしパソコンからLANケーブルで、ルーターに繋いだスイッチング・ハブに繋ぎ、そこにぶら下がっているNASのデータを再生し(あるいは、サブスクのデータを再生し)、やはりハブに繋がっているネットワーク・トランスポートを経てDACに信号を流す……という、オーディオに詳しくない人にとってはかなり面倒臭い、ややこしいプロセスを経ることで、確実に音が良くなる。伸びしろが大きく、手間をかければかけるほど良くなるのはROON……というよりネットワークオーディオ全般に言えることですが、聴き手の使いこなし次第で音が大きく変わるという意味ではアナログ(ヴァイナル)再生に匹敵するかもしれません。USB直結だと、せいぜいUSBケーブルと電源ケーブルを交換するぐらいしかやることがないですが、ネットワークだといっぱい手を加える余地がある。LANケーブルをアマゾンベーシックの安物から1万円クラスのオーディオグレードに変えただけでびっくりするほど音が変わる。その変わり幅は、場合によってはスピーカー・ケーブルやラインケーブルを変えた時よりも大きいかもしれません。その「手をかければかけるほど良くなる」のが面白いわけです(もちろん、ごちゃごちゃと安物ケーブルのネットワークで繋ぐよりも、良質なUSBケーブルでDAC直結したほうが音がいい、ということもありえます)。もっとも、その道を究めれば究めるほど機材の数もケーブルの数も増え、配線や機器構成はどんどん複雑化してくる。そのことに音を上げ、こんな記事を書いたこともありました。
さてここのところの私の再生環境はこんな感じでした(ネットワーク/ROON関係のみ。ケーブルは除く)
Mac Mini (ROON Server)
↓
Silent Angel N-8 (Network Switch)
↓
Silent Angel M1T-8GB(Network Transport -- Roon Output)
↓
DAC
↓
アンプへ
最近になってさる方のご厚意でLUMIN U2 Miniというネットワークトランスポートをお借りしていますが、基本はこんな感じ。U2 MiniはROON Only Modeという、ROONしか使えない設定(もちろんそっちの方が音は良い)に変更して使っています。Spotifyの再生はM1Tを使用。
ここからグレードアップするにはいくつかやり方があるんですが、今回私が手をつけたのが、ROON ServerもしくはROON Coreと呼ばれるROONの中心部。これを汎用のコンピューターであるMac Miniから、ROON専用のコンピューターに変更しようと思いました。他にいろいろ使う汎用PCよりも、専用PCでROON関係の仕事に専念させたほうが音が良くなるという理屈です。ROONが販売するNucleasという純正機器もありますが、目の玉が飛び出るほど高いので除外。ROON ROCK(Roon Optimized Core Kit)というROON専用のOSを、既存のコンピューターにインストールすることにしました。ROONが推奨するのがIntel NUCという格安の超小型コンピューターのキット。そこらの中古の格安PCでもいいんですが、マシン性能を重視したかったので、ROONが推奨する通りのものを用意しました。うまい具合に中古の出物があったので入手。
いろいろリサーチしてみると、ここまでのハイスペックでなくても十分快適に動作するようですし、むしろスペックをあげすぎるとファンノイズで音に良くない、という話もあるんですが、私の場合合計8TB以上のデータがNASに収まっており、上記の「Large Libraries」に相当するようなので、快適に動くことを最優先して、念のためNUC11TNHi7にしたわけです。マシン性能をケチったおかげで検索がスムーズにいかないなんて、泣いても泣ききれませんから。メモリも16GBとちょっと奢りました。ここまでかかった費用はメモリやSSDを含め8万程度。
NUCはおろか自作パソコンも未体験だったんですが、組み立ては拍子抜けするほど簡単。ROONのインストールもチュートリアルを見ながらやったらあっさり終了しました。マシンの選定や組み立て、インストールまで、このサイトを参考にさせていただきました。非常にわかりやすく懇切丁寧に解説してくれます。
ところがMac MiniからIntel NUCへの移行作業に大苦戦。具体的にはROONデータのバックアップからの復元がどうしてもうまくいかず、結局NASのデータを最初から解析しデータベースを一から構築することになってしまいました。Mac Miniで構築したデータと再構築したNUCのデータでは(アルバム数、トラック数など)微妙に異なるみたいですが(おそらくタグ付けしてないWAVファイルの関係)、こればかりはどうしようもない。それでもNUCのマシン性能が高いおかげで、解析は1日かからず終了。今では以前と同じように使えています。もちろん検索等でのストレスは一切なし。心配していたファンノイズもほとんど気になりません。Mac MiniはROON Remoteとしてそのまま使っているのて、操作上はこれまでと変わりません。
肝心の音ですが、全般にわたってS/Nが向上し、解像度が高くなって中高域はクリアに、低域は深く沈み込むような鳴りになりました。ネットワーク・オーディオに於ける音質向上対策は、いかにノイズを軽減するかだと思っていますが、ローレベルのノイズが減りマスキングされていた音がクリアに聞こえ、特に小音量時の微細な信号の再生クオリティが上がった気がします。
そしてここからさらに対策を施します。まずスイッチングハブに繋げるLANケーブルを、一般的なパソコン用のものから、オーディオグレードのものに変更。具体的にはフルテックのLAN-8 NCF。ほかの箇所でも使っており、比較的リーズナブルな価格のわりに、良い性能だと思います。もちろん10万クラスの超高級ケーブルを使えばさらに良くなるんでしょうが、その勇気はまだありません……
そしてもうひとつの対策は電源です。Intel NUCの電源は19V、電源アダプターのコネクターはC5タイプ(ミッキー型)というもの。既存の安定化電源では適合するものが見つけられず、またミッキー型のプラグを使用したオーディオグレードの電源ケーブルも、輸入品のこれしか見当たらない。しかも入荷まで1ヶ月もかかる。
ということで、困った時にはここ。オーディオみじんこです。
特注でいろんなケーブルの制作を請け負ってくれる頼もしいお店に早速問い合わせたところ、快く引き受けていただき、わずか2日で完成。
もしかしてケーブルを特注するまでもなく、もっと手軽に使えて効果の高い、しかも安い電源等あるのかもしれませんが、私の情報リサーチ力ではこれが精一杯。
まだケーブル交換から数時間しか経過しておらず、エージング等の進行でこれから音はどんどん変わってくるものと思われますが、現時点でもかなりレベルの高い音になっていると自画自賛。
とはいえ、ネットワーク・オーディオの奥の細道はまだまだ続きます。Facebookには「極☆ネットワークオーディオ」というグループがあるんですが
オーディオのプロやプロはだしのマニアが集結し、私など口出しすることもできないウルトラ高度な議論が展開されています。ここに集う人たちから見れば私など初心者もいいところで、ここまで書いてきたことも初歩的すぎて鼻で笑われそうですが、本気でのめり込むと恐ろしいほどの沼が待っているのがROON〜ネットワーク・オーディオなのです。
Direttaとか光アイソレートとかHQplayerとかまだまだやれることはありますが、とりあえずこれ以上は現在の私には手に余るので、ネットワーク関係の対策は一段落。次はずっと前からの課題であるDAC探しの旅が待っています。まだまだゴールは先の先・・・