ライヴ覚え書き(2025/1)

1月25日(土)
Virgin Babylon Night 2025 @ 渋谷www
world's end girlfriend / KASHIWA Daisuke / VMO / mizuirono_inu / 窓辺リカ

world's end girlfriend主宰のレーベルのショウケース的な?

 4時間半立ちっぱなしで非常に疲れましたが、アクトはすべて興味深かった。個人的に馴染めないものもありましたが……。先日のRyoji Ikeda のサポートで見てもう一度ちゃんと見たいと思っていたVMOは気迫の大熱演で凄かった。ダーク・ゴシック・インダストリアルなEDMというか。KASHIWA Daisukeはオウテカにピアノをフィーチュアしたような端正なエレクトロニカで好み。そして御大WEGは、よくぞあんなにややこしい入り組んだアレンジをかっちり決められるもんだと感心。構成力と世界観の作り込みは群を抜いていると思う。去年exシアターで見たワンマンは年間ベスト級の凄まじいライヴだったけど、今回は30分強のコンパクトなセットでインパクトも強かった。すごいバンドだとつくづく思います。最後は「ツイン・ピークスのテーマ」で、デヴィッド・リンチ追悼。仕込みやリハーサルが大変そうだけど、年に3回ぐらいはワンマンやってほしいですね。

しかし週末の渋谷でライブはやらないで欲しいと心底思う。最近の渋谷の人出の多さは異常。2週連続で土曜の渋谷スペイン坂で疲れたよ…

いや、全てのライブってわけじゃなく、オレの行くライブは(自分勝手

1月19日(日)
3日連続の現場、最後はL'Arc〜en〜Ciel @ 東京ドーム

 素晴らしいライヴでした。休憩挟んで3時間超、全然飽きなかった。過去に何度かラルクのライヴは見てるが、間違いなく今日がベストだった。ドームと言っても特別凝った演出があるわけでもなく、ひたすら歌い演奏するだけで、長丁場をぐいぐいと引っ張っていく。ヴォーカルのHYDEの誕生日祝いということで、温かく親密なムードが漂っていて、それでいて内輪ノリの閉鎖的なファンクラブ集会には決してならない。セットの組み方もそうだが、バランス感覚が抜群だった。バンドも客も。お客さんが本当に素晴らしかった。

 ある友人(女性)が「虎に翼」の岡田将生を「(リアリティを売り物にするドラマなのに)なぜあんな非現実的なイケメンを出すのか」と文句を言ってたけど、この日のHYDEこそ「非現実的なイケメン」そのもの。今はド派手な金髪になってて、K-POPのスターみたい。でも投げキッスがよく似合う、その絵に描いたような王子様ぶりがあるからこそ、広いドームを現実から離れた夢のような非日常空間に変えられるわけで、あれがTシャツ短パンの親しみやすい隣のお兄ちゃんみたいなキャラだったら、絶対あんな濃密な空間にはならない。ドームを一杯に覆った非日常空間。5万人が見た白昼夢。スタンド席からではアーティストは豆粒にしか見えず、巨大スクリーンで追うしかないが、5万の観客に一挙手一投足を見られながらも、HYDEは歌もアクションも仕草も立ち居振る舞いも優雅で自然であり、かつフロントマンらしい輝きに満ちている。やはり並みのスターじゃないですね。それでいて根が関西人だからスカシてる感じにもならない。イケメンがロックをやると、「見た目で評価されたくない」的なプライドが邪魔するケースが多かったけど、堂々と自分の強みを最大限に活かし売り物にして、高い音楽性も両立させスターになった最初の例(のひとり)が櫻井敦司だと思っているが、HYDEとラルクはその衣鉢を見事に受け継いでいる。

 ライヴの前半はメランコリックでダーク、ヘヴィなサイケデリック曲が多く、なんだかキュアーみたいだなと思った。特に「Everlasting」から「forbidden lover」に至る流れは、炎を効果的に使ったヴィジュアルも含め息が詰まりそうな濃密かつ緊張感あふれる展開で、この日の最大の見せ場だった。この路線を突き詰めれば本当に日本のキュアーみたいなカルト・バンドになったかもしれないが、もちろんそんな範疇に止まらなかったからこそ東京ドームで何度もライヴをやるようなバンドになったわけだ。そういえば昔「FINE TIME」というニュー・ウエイヴ・トリビュート・アルバムをプロデュースしたとき、レコ社のエラい人からHYDEにキュアーを歌ってもらえばいいんじゃないか、というアイディアが出たことがあった。発売元がラルクの所属レコ社であるキューンだったから可能性はそれなりにあったはずだけど、結局実現しなかったのは、返す返すも残念……と20年たって今さらのように残念がっております。

 休憩を挟んでライヴ後半はポップでアッパーで開放的なヒット曲連発。これがあるからこそラルクは紅白に出るような国民的人気バンドになったのである。ハッピーバースディのクラッカーもあり、前半のダークでダウナーで内省的な流れから一転してパーティーらしくなり、HYDEの口数も増える。なにがきっかけだったのか感極まって涙ぐむシーンもあった。終わりがあるからこそ頑張れるんだ、という意味のことを喋っていたが、別にキャリアを重ね歳をとったからそう感じるようになったのではなく、おそらく若い時から死というものを意識していて、その死生観を作品に反映してきたんじゃないか(だからキュアーのような音楽に惹かれたんじゃないか)……とは今日のライヴを見て改めて思ったことだった。最後は「あなた」で会場あげての大合唱。これまた感動的な光景で、いいファンに支えられた幸福なバンドだな、と思いました。

 ドラムのyukihiroによく取材している関係でこの日のライヴを見たわけですが、ラルクこそは現存のバンドで質量・名実ともに日本一…と言い切ってしまうと角が立つので「日本最高峰のバンドのひとつ」と、改めて断言したいと思います。

それにしても下北沢THREE、渋谷wwwから東京ドームまで。振幅の大きな3日間でした。

1月18日(土)

あらかじめ決められた恋人たちへ@渋谷www

 いやもう、素晴らしい。最高のライヴでした。

 まずは池永がひとりで出てきてトラックをバックに鍵盤ハーモニカを聴かせる。こうした形でソロでやると、あら恋の悲しみとか孤独とかやるせなさとか憂愁とか、そういうメランコリックで内省的な部分が強く出る。そこからだんだんメンバーが増えていくストップメイキングセンス形式だったが、メンバーが増え音が分厚くラウドになり強力なビートとダビーなエフェクトが会場を圧するような大音量のサイケデリリアになるにつれ、悲しみややるせなさの情よりも、生きるための力強いエネルギーのようなものが強くなっていって、最終的にはすごくポジティヴで開かれた世界へと昇華していく。そいつはえらく感動的な体験だった。マッシヴ・アタックのカヴァーをやっていて、マッシヴに影響受けてるのは池永も認めてたけど、最終的に目指すところはだいぶ違う。

 あら恋の音楽はすごくエモーショナルだけど、歌がないインストゥルメタルなので、そのエモーションがどこから来るのかは聴く者が想像するしかない。その想像力の飛躍こそがあら恋の音楽を理解する核心である。長く劇伴の仕事をやっていることもあって、池永の音楽には映像的なイマジネーションを刺激するようなシネマティックなところがあって、映像や照明と相まってすごくドラマティックだった。池永は鍵盤ハーモニカを吹く以外はときおりラップトップを操作するだけで、あとは叫んでるか踊ってるかどっちか。でも誰よりも饒舌で華やかで説得力のあるフロントマンだったと思う。

 後半になるとゲスト・ヴォーカリストが登場。圧巻は曽我部恵一だった。すごい声量とパワーでたちまち会場を圧倒する。曽我部というとどうしてもシンガー・ソングライター的な繊細さを思い浮かべてしまうし、それは間違いではないが、あれほどパワフルでソウルフルなシンガーだとは思わなかった。あら恋の轟音ダブ・サイケデリアにまったく負けてないどころか完全制圧している。恐れ入りましたと言うしかない。曽我部の持つまろやかで優しいが強力なパワーが、あら恋の生のエネルギーと相まって、すさまじく高揚した空間をつくっていた。曽我部のアルバム「ハザードオブラブ」のダブミックスをあら恋がやって、その中から何曲か歌っていたのだが、あれほどのライヴを聞かされたら、物販でヴァイナル買うしかない。

ジャケのイラストは田名網敬一の遺作だそうな。

 たっぷり2時間半。すごいエネルギーをもらいました。いつまでも力尽きるまで続けてほしいバンドです。

1月17日(金)

キメラ祭@下北沢THREE & BASEMENT BAR
あっこゴリラの新作『キメラ』のリリース・パーティ。楽しいパーティーでした。

 下北のライヴハウス2会場を使って同時進行でDJ除く計7アーティストが出演。規模は小さいがフェスみたいなもんで、正直あっこ以外はまったくの初見だったけど、大変楽しいパーティーだった。フェスは全然知らないバンドを発見するのが一番面白いし、サブスクでは聴いたことのないアーティストを掘るのが楽しい。よく知ってるバンドだけを見たり、よく知っている曲しか聴かない人も多いけど、せっかく目の前に新たなものに出会う機会が転がっているのに、ずいぶんもったいないなと思う。

 というようなことはともかくとして、今日見たのは以下の通り。ちょっと遅れていったんだけど、30分ぐらい押してたみたいで、結果的に全部見られた。以下見た順。

illiomote 
 女性ヴォーカルのポップなロック・バンド。明るく楽しそうにやってるのがいい。ヴォーカルのキャラもいいけど、歌にもう少し味とか強さとか出てくるといい。

RiL
 ギターヴォーカルとドラムスのみの2ピース・バンド。ニルヴァーナとかレイジとか、90年年代グランジ〜オルタナの路線かな。エネルギーがあって大変よろしい。型通りのロックをやる意義みたいなものは絶対あると思うけど、それならすごいエネルギーがあるとか情熱があるとかぶっ壊れてるとか狂ってるとか、とにかくどこか過剰でやりすぎでエクストリームなところがないと面白くない。このバンドはギターとドラムのみという編成のいびつさ以上に、そのガッツとエモーションにやられました

大冒険
 管4本、ギター2本、ベース、ドラムス、パーカッション3人、ヴォーカルの12人編成のアフロファンク・バンド。簡単に言うとじゃがたらの大編成版というか。 こういうパーティーに来る人でこういうダンス・バンドが嫌いって人もそうはいないと思うが、陽性のエネルギーがあって大変に楽しい演奏だった。確固たるオリジナリティという点ではあともう少しだが、ヴォーカルを始めみなまだ若いみたいなので、焦らずじっくり長く続けて、オトナの味が出てくるともっといい。

Wang Dang Doodle
 アシッド・テクノとジュークとジャングルとガバとファンクとブルースが合体したみたいな打ち込みをバックに女性MCふたりが歌ったりラップしたり踊ったり楽器演奏(ブルース・ハープとギター)したり。ちょっと電気グルーヴやビースティ・ボーイズのようでもあった。歌はソウルフルでドス効いてるしキャラ立ってるし、これまたユニークで楽しいライヴ。

AJATE
 「大冒険」はオーソドックスなアフロ・ファンク・バンドだったが、これはアフロ・ビートの盆踊り的展開というか、民謡のフェラ・クティ的展開というか。タイコ・笛類や金物や手製の和楽器みたいなものとエレキベース、エレキギターなど10人編成で、演奏うまいしグルーヴたっぷりで音強いし太い。女性ヴォーカルもソウルフルで強力。けっこうキャリアのあるバンドなのに知らなかったのはお恥ずかしい限りだが、音楽そのものの骨組みはわりとフェラ・クティそのままなのに、和楽器に置き換えるだけでここまでオリジナリティ富んだ表現になるのは面白い。音源を聴くとこじんまりキレイにまとまった感じもあるが、こういうバンドはやはりライヴならではで、フロアは沸騰状態だった。

民謡ユニット こでらんに~
 わりとオーソドックスな民謡を今風にやるバンドかなと思ったが、あっこゴリラに間に合わせるためはやめに退散して申し訳なかった。

あっこゴリラ
 パワフルでソウルフルで、とにかくそのポジティヴで開放的なエネルギーに圧倒された。ライヴはだいぶ前に一度見て以来だが、その時と比べても自分独自の表現をしっかり掴んだという手応えと自信に満ちあふれていて素晴らしい。出てきただけでステージが明るくなる華やかなスター性、客を煽るカリスマ性も十分。トラックをバックに、コーラスの女性含め2人だけでやってるとは思えない迫力は,もっと大きな会場で見たいと思わせたし、大冒険やAJATEなど大編成バンドに全然負けてない。新作は盆踊りとか民謡みたいな日本土着のダンス・ミュージックにインスパイアされたもので大面白い出来だが、この日はトラックをバックにラップするだけなのでその真髄はパーカッション3人をバックにしたバンド編成でやるという4月のワンマンライヴで実現されそうではある。

 あっこは2020年4月に所属事務所及びメジャー・レーベルとの契約を打ち切り、完全インディペンデントでの活動に移行したわけだが、たったひとりですべてを仕切って思い通りのプランを実現させなおかつホストとして客を楽しませ、自分も楽しむ(この日あっこは出演バンドすべてのステージ最前列で踊っていた)。そのエネルギーは大したものだと思った。この日集まった人々は、客も出演バンドも、みな彼女のそうした生命力の強さのようなものに惹かれてるんだと思う。

 4月のワンマンライヴが楽しみです。

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小野島 大
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