[日々鑑賞した映画の感想を書く]『最後の決闘裁判』(2021年 リドリー・スコット監督)(2022/1/27記)
中世フランス(13世紀)を舞台にした重厚な史劇で、傑作『グラディエイター』を作った監督お得意の決闘ものだ。「困難な状況でも真実を訴えることをやめなかった勇気ある女性の物語」がテーマだそうだが、見る者に希望やパワーを与えるような作品ではないです。登場人物の誰にも感情移入ができないまま終始暗く重いお話が進むので、クライマックスの決闘シーンも迫力は凄まじいもののカタルシスがなく、見終わったあともどよーんとした重苦しい気分になることは確実。昔はこんな酷くて理不尽なことがありました的な歴史物としての価値はあるが、それが現代の問題、たとえばフェミニズムやMeToo、あるいはオルタナティヴ・ファクトやフェイク・ニュースの問題としてうまく消化・接続されているかは微妙な感じ。
やはりこの映画の最大の価値は現代最高水準の映像と音響でしょう。中世ヨーロッパに重苦しく沈んだモノトーンの風景の緻密さと美しさ、電気などない時代の唯一の灯りである炎の鮮やかさと鋭さ、精巧に再現された建物や衣装、武具などの質感の生々しさ、剣を切り結ぶ鋭く太い金属音、甲冑や武具がぶつかりあうこすれあう音、馬の蹄の地響きの音など、実に生々しく、決闘や合戦の場面の迫力は凄い。私はDisney+の4Kストリーミング配信を自宅シアター環境で見ましたが、おそらく配信で見られる最高レベルの絵・音だと思う。たぶんUHD Blu-Rayで見ればもっと凄いでしょう。オーディオヴィジュアルマニアの方には全力でお勧めします。(2022/1/27記)
いいなと思ったら応援しよう!
![小野島 大](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/128390/profile_2f0cbaa2c4115888627704b79a2060cf.jpg?width=600&crop=1:1,smart)