[北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2021]11/ 16 西川・大田・秋吉に来季契約を提示せず
新庄監督に関する報道は相変わらず過熱していてさすがの私も食傷気味。気になる情報はいちいちクリッピングしていましたが、もう追い切れません。そのくせ肝心の組閣(コーチ人事)は一向に正式発表されません。特に小笠原、高橋信二、小田と1軍担当が3人とも辞めた打撃コーチの後釜は誰なのか気になります。もしかしたら日本シリーズ出場チームのコーチを誰か引き抜くつもりなのか。いずれにしろ新庄新体制での来季ハムを占うのはもう少し先になりそうです。そんな矢先、ビッグニュースが飛び込んできました。
(球団は)海外FA権を持つ西川遥輝外野手、国内FA権を持つ秋吉亮投手、大田泰示外野手の3選手に対し、来季契約を提示せず、野球協約第66条の保留手続きを行わないことになったと発表した。
「3選手と来季以降のプレー環境について協議した結果、選手が取得した権利を尊重し、ノンテンダーとすることを選択しました。選手にとって制約のない状態で、海外を含めた移籍先を選択できることが重要と考えた結果です。昨年も、ノンテンダーの村田透投手と再契約した例があるように、ファイターズとの再契約の可能性を閉ざすものではありません」(稲葉GM)
日本ハムは3選手がFA移籍すれば人的補償や金銭補償を受け取ることができた。3選手を交換要員としてトレードに動くこともできたはずだ。しかし、今年の成績で仮にFA権を行使しても西川は年俸上位3位までのAランク、大田と秋吉は同4~10位までのBランクとみられ、人的補償と金銭補償が移籍交渉の足かせとなる可能性があった。そのため稲葉GMは「選手にとって制約のない状態で、海外を含めた移籍先を選択できることが重要と考えた結果」と実績がある功労者の3選手に配慮し、補償を必要としないノンテンダーFAを選択したとみられる。
これはちょっと驚きました。3人とも今季極度の不振だったし、FA権を取得したとはいえ、自信を持ってFAできるような状況じゃないことは確か。選手がFA権を行使する意思があるなら球団に止める権利はありませんが、おそらくFA宣言は断念したのでしょう。そこでこの措置です。まあ実質、戦力外の自由契約ってことですね。
どうしても必要で残したい選手ならFAだろうがなんだろうが、いい条件を出して引き止めるはず。でも、球団は君たちの望むような条件は出せない、来季のレギュラーも保証できない、それが不満なら仕方ない、自由にしてあげるからあとは自分で移籍先を探して、ということ。「ノンテンダー」なんてメジャー用語を使ってかっこよく装ってますが、要はコストに合わないからリストラってことです。選手が移籍先を自由に選べると言っても、「戦力外通告」よりは体裁がいいってだけの話ですね。数年前にオリックスから金子千尋が自由契約になった時と同じです。あとは彼らの他球団との交渉次第。とはいえ西川は今季年俸2億4200万(推定)、大田は1億3000万(推定)、秋吉も5000万(推定)。戦力として彼らに興味を示す球団があるとしても、それだけの金を出してまで取りに行く球団があるとはとても思えない。その中でどれだけいい(マシな)条件を引き出せるかが彼らにとっての勝負です。もちろん稲葉GMの言う通り、ハムが再契約する可能性もある。村田のほかに坪井、多田野といった過去の例もあります。しかしその際はほかに行き場がなくなってのギリギリの選択になるから、村田らがそうだったように条件は値切られまくり、かなりの大幅減俸となるはず。
秋吉はともかく、西川と大田は昨年までバリバリのチームの柱でした。この二人ともいなくなるとなると、チームは大きく変わるし、変わらざるをえない。今年のハムの年俸ランキングの1位(中田)3位(西川)5位(大田)の3人が退団するんだから。どうやらハム球団、新庄新体制に向けて本気で根本的にチームを作り替えるつもりみたいです。
彼らが抜けることによる戦力的なダウンはどうか。
西川はここで再三再四指摘してきたように肩の衰えが顕著で、今季は主にレフトを守りましたが、外野守備レベルの高いチームならとてもレギュラーを張れるような状態ではない。指標を見ても守備範囲がここ2〜3年でぐっと狭くなっています。守備を重視する新庄監督から見れば、アピールするポイントがない。また売り物だった走塁面でも、盗塁成功率が大幅に低下していることからもわかる通り、衰えは明らかです。そして私が何より気になるのは、プレイの覇気のなさ。たとえば現役時代の稲葉は自分が肩が弱いことを自覚していて、それをカヴァーするために全力で前にダッシュしてなるべく早く打球を処理して、素早く送球することを心がけていたそうですが、西川はランナーがいて自分の前に打球が飛んできても、初めから進塁阻止など諦めているかのように山なりの送球を返すだけ、という情けない場面を何度見たことか。自分の肩の弱さがバレるのがいやだったんでしょうか。去年メジャーに行けなかった悔しさでやる気が出ない、目標を見失った、みたいな発言を春先にしてましたが、そんなことでプレイも無気力になるようならプロ失格です。西川の強みは圧倒的な選球眼の良さ=出塁率の高さですが、守備面やそうした態度がチーム、特に若手に与える影響を考えるとメリットは少ない。DHか一塁しかポジションがなく、そこには近藤や強打の新外人、高濱や清宮などが座ることを考えれば、彼の居場所はなくなってしまう。西川に関しては、糸井が退団したあとの一押しが西川だったこともあり、私にとっては思い入れの深い選手ですが、それはまた改めて書きます。
大田は今年とにかく出場試合が少なくファームでも精彩を欠いていて、いったいどうしたのかと思っていました。打撃はもともと好不調のムラがあり脆さもある。でもちょっと今年は酷すぎた。年齢的にまだ老け込むようなトシではないので、復調の可能性は十分にある。守備の衰えを指摘する声もありますが、もちろんケガしたわけではなく肩も相変わらず強いので、その気になればまだ外野の一角を任せるぐらいは大丈夫だと思いますし、復調すればハムには貴重な20本以上のHRを打てる貴重な長距離打者です。もしかしたら栗山政権下でやる気を失っていた可能性もあるので(干されていた感もある)、心機一転しての来季の捲土重来を期待していたのですが、こうしてあっさり切られてしまった。
秋吉は去年あたりからもうタマ自体が通用しなくなっていた感があるので、これは仕方ないかな、という気がします。
こうして見ると大田以外は納得だし、大田も今年の成績だけ見れば仕方ない、とも言えます。
こうしてドラスティックにコストに見合わない中堅〜ベテラン選手をカットしていくドライなやり方は、北海道移転以降のハムの得意とも言えます。私はこの欄で、そうして中堅ベテランを片っ端から追い出した結果、チームの伝統が途切れ、損なわれてしまうこと、培われてきた戦い方の基本が忘れられること、身近な手本がいなくなることによる若手への悪影響を何度も書いてきました。ちょっと年俸があがるとあっさり切られてしまう先輩たちを見たら、チームに愛着も持ちようがない。それでも若手が順調に育っている間はいいですが、ここ数年のように若手が伸び悩むと、たちまち新陳代謝を欠きチームが低迷することになる。せっかくFAで戻ってきた鶴岡が退団してしまったこともそうですが、西川といい大田といい、ほんの1年前まではバリバリの主力・功労者だった選手のこの末路を見て、ファンはどう思うか。そして、これからプロに入るアマチュアはどう思うか。
とはいえ、そうしたデメリットや反発は承知の上で、ハム球団は今回の決断をしたのでしょう。それだけチームを変えたい、栗山政権10年ですっかり淀み腐ってしまった流れを変えたい、ということなんだと思います。稲葉GM=新庄監督の就任と、コーチ陣の大幅な入れ替えも、そのひとつ。それがプラスと出るか、それともさらなる泥沼に突入するのか。答えは簡単に出そうもありません。
それにしてもこうしたやり方を見ると吉村浩前GMの力は、以前と変わらず強いと痛感します。稲葉なんて秋季キャンプにベタ付きで選手に技術指導してるぐらいで、GMとして西川や大田と話しあってる時間なんかなさそうですもんね。裏方としてチームの編成などもろもろを仕切っているのは相変わらず吉村さん、ということでしょう。稲葉GMが単なるお飾りなのかどうなのか判断はまだ出来ませんが、直接表に出なくなって院政になった分、吉村さんが以前にも増して権力を奮っていることは確かのようです。