ライヴ覚え書き(2024/12)

2024/12/28
mother,SPOILMAN,computer fight @ 阿佐ヶ谷イエロービジョン

 motherの井出痛郎が、motherのライヴをやるのにmotherのほかの2人のメンバーがやってるcomputer fightとspoilmanをブッキングして3マンにした、と思われる。だから基本は井出さんのイベントだけど、3バンドともドラムは同じチャック(田辺)だから、結果的に約2時間以上チャックが叩きっぱなしで、チャック祭りでもあった。30人でソールドアウトになるぐらいの狭いハコで、私はたまたまチャックの前で見ることになり、その凄まじいパワーを全身に浴びて聴くことになった。何度か彼のプレイは見てるけど、こんなすごいドラマーだったとは。今度中村達也とドラム対決すべきですね!

 computer fightはいつにも増してキレキレのライブで凄かったし、SPOILMANの個性も実に面白い。motherは二度目だったけど、井出さんはいつどこで見ても井出痛郎だと思った。ある種センチメンタルな文学性とハードなプログレ美学の融合。

 昨日のmoreruの熱さとは対照的なクールなイベントだったけど、バンドはどれも質が高かった。30人しか客いないけど、次々と知り合いに会ったのは面白かったですね。

 これが今年のライヴ締め。また来年。

2024/12/27
moreru、CARTHIEFSCHOOL、Sorry No Camisole、おそロシア革命 @ 新代田FEVER

 1年前にインタビューしたこの記事がめちゃくちゃ反響があった6人組moreruのEPレコ発ライヴ。

 実はこれを書いたときはまだ1回しかライヴを見てなくて、その時もDMBQとの対バンで、彼らにとってはアウェーな状況でのライヴだった。しかも彼らのライヴはオールナイトで行われることが多く、その後なかなかライヴを見ることができなかった。今日は久々に普通の時間帯でのライヴだったのである。

 音楽的にはジャンク、スカム、ノイズ、ハードコア、J-POPやJ-ROCKやアニソン、アイドル、ボカロ、エレクトロ、オタクカルチャー、青春文学まで複合してぐちゃぐちゃに撹拌したようなカオスでラウドなロック。1年前に見たときは暴れ回るメンバーをDMBQ目当ての観客が遠巻きにして見てる感じだったが、今回はもう、全然違う。最近あれほどアナーキーでカオスで熱気とエネルギーが満ち溢れた現場は居合わせたことがない。フロアはモッシュ、ダイブの嵐で、ぼんやり突っ立ってると暴れ回り走り回る観客に突き飛ばされそうになる。実際、2〜3回は思い切りぶつかられた(実際流血騒ぎもあった模様)。でもひたすら健やかでみんな楽しそう。歌詞とか全然聞き取れないけど、要所では大合唱も。暴力的なだけでなくしっかり共有もされている。秩序だった体操みたいなモッシュも多いけど、あれほどアナーキーに暴れ回る観客は久々に見た。その観客のテンションが乗り移ったように演奏も最高に爆発炎上してて最高としか言いようがないし、最高に楽しかったとしか言いようがない。なんかこう、キラキラした青春の輝きがノイズコアになって襲いかかってくるというかね。

 でもよく見るとメンバーで暴れ回ってるのはバンド・リーダーでもあるヴォーカルだけで、彼だけは客を煽りフロアにダイブして暴れてたけど、ほかのメンバーはきっちり決められたパートをしっかり演奏している。だから限りなくうるさいしノイジーでカオスなようで、実は演奏はしっかりしていて、冷静で構築的ですらある。それでいて観客のあの度を過ぎた暴れっぷりは、やはり彼らの音楽が本質的に孕む扇動性であり起爆力ゆえだろう。つまりは客を煽り駆り立てるカリスマ性があるってことだ。

 この日は4バンドが次々と登場するライブで、それぞれに興味深かったけど、やはり今やロックというのは大なり小なり決まり切ったスタイルの定型表現になっていて、キャリアの長い聞き手なら、これはアレね、それはコレね、と簡単にお手本が指摘できてしまう、と感じてしまった。そこを面白く聴かせるには、並外れた情熱と桁外れのエネルギーとアホみたいなアイディアの数々となんじゃそりゃと言いたくなるようなケッタイな視点と絶対的な現代性と突き抜けたカリスマ性が必要だ。moreruは間違いなくそれらをすべて併せ持っていて、しかも笑ってしまうほどの極端さがある。ロックのロックたるゆえんを極端なまでにデフォルメした真のエクストリーム・ミュージック。今どきロックなんてあそこまで振り切ってなきゃ絶対面白くない。今日のFEVERはそんな解放された魂が行き交う限りなく自由な空間だった。

 ちなみにmoreru以外には、最初に出てきた「おそロシア革命」というバンドが面白かった。彼らだけは定型を食い破る情熱と、切羽詰まった表現衝動を感じた。尾道のバンドらしいが、機会があればもう一度見たい。やりたいことを続けるのは、バンド続けるのは大変だけど、頑張ってほしいですね。

2024/12/21
OGRE YOU ASSHOLE @ リキッドルーム

 久々に見たけど、ヤバいの一言。前半はのんびりゆったりレイドバックした感じでじわじわあげていき、後半大爆発。サイケデリックでドラッギーでトリッピーでダンサブル。完全にトバされました。ちょっとROVOに近いものを感じた。フィッシュマンズとゆらゆら帝国とROVOが少しづつあって、で総体的には誰にも似てない独自性。こんなバンドはほかにない。来年は結成20周年だそうで、なんか大きいことやりそうですね。

2024/12/16
Mannequin Pussy @ 渋谷www-x

  ヴォーカルはビスチェに露出多めな衣装で色気たっぷり。囁くようにポエトリーリーディングするかと思えば、獰猛なシャウトでビシッと気合いを入れる。パンク、ハードコア、グランジ等いろんなラウドロックの要素がミクスチャー。新しいことはやってなかったが、ヴォーカル嬢がかっこよくて合格。客の半分以上が白人男性で、英語がわかる客が多いせいか、MCも含めアメリカでやるショウとほぼ同じと思われる。9ヶ月続いたツアーもこの日が最後だそうで、楽しそうにやってました。

2024/12/13
池田亮司、VMO a.k.a Violent Magic Orchestra @ ZEPP横浜

久々に見たけど、いやー凄いとしか言いようがないです。あれだけキレキレの電子音をあれだけデカイ音で鳴らしながら全然歪みっぽくならず飽和もせずうるさくない。音の密度が高くて音圧感もすごいが、荒っぽさがなく隅々まで洗練されている。リズムがかなり強い演奏だったが耳障りでなく、ひたすら気持ちいい。こういう音楽、というか音響アートの世界はともすれば小難しいリクツがくっついてきちゃうけど、私は2024年最新型インダストリアル/EBM(EDMじゃなく)/破壊系IDMの極点として楽しみました。こないだのアルバムもそうだったけど、今はそういうモードなんだろう。映像も凄かったです。

 サポードのVMOも良かったし熱演だったけど、池田亮司のソリッドでタイトでハードでしなやかな音に印象が更新されちゃった感があるので、単独ライヴがあれば足を運びたい。

2024/12/8
Geek Sleep Sheep @ 横浜ReNY

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小野島 大
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