[ライヴ評] The Comet Is Coming (2022/12/1 東京・www)
[ライヴ評] The Comet Is Coming (2022/12/1 東京・www)『しんぶん赤旗』2022年12月9日付けに掲載。
「野放図な活力に満ちて」
すさまじいエネルギーに圧倒された。英国のザ・コメット・イズ・カミング初の単独来日公演は、最先鋭のジャズの熱気と盛り上がりを生々しく伝えて、とてつもなく刺激的だった。
英国ジャズの中心人物と目されるサックス奏者シャバカ・ハッチングス、ドラムのベータマックス、シンセサイザーのダナログという腕利きからなる3人組。躍動感のあるリズム、アナログ・シンセサイザーの分厚く荒々しい音色、そして骨太なサックスが相まっての演奏は迫力たっぷり。椅子に座ってちんまりと鑑賞するようなお行儀のいい鑑賞音楽でもなければ、腕組みしてしかめ面して見るような芸術でもない。オールスタンディングの会場に詰めかけた観客は誰もが頭を振り、体を揺らし、踊りながら聴いている。ライヴハウスに立ちこめる若い熱気がすごい。
ロバート・グラスパーなど米国の新しいジャズがヒップホップやR&Bを取り入れて新鮮な音楽を作り出すのに対して、英国はテクノやドラムンベースなどエレクトロニックなダンス・ミュージックを取り入れたスタイルに特徴があるが、コメットはその代表格だ。強烈な高揚感に満ちたダンサブルなジャズは、頭脳や感情ではなく肉体を直撃する。
ノスタルジーとは全く無縁な、現在進行形としてのジャズ。最新型なのに音楽の根源を思わせる野放図な活力に満ちていて、聴く者を勇気づけ元気にさせるような圧巻のライヴだった。
(小野島大・音楽評論家)
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