制作過程と裏話 その1・花見に逃げ腰〈夢中のストラット〉

Newtype 2023年4月号掲載
夢中のストラット
その1『花見に逃げ腰』


〈memo〉
ニュータイプの編集者さんにお声がけをいただき始まった
私のオリジナルストーリーの短編連載、第1話です。

思えば小学1年生の時から漫画家を目指し、
14歳から22歳くらいまで「今は描けないな」と思い続けたのももう15年前。
物語を描きたい気持ちが抑えきれず、
たとえ漫画を描く予定がなくても、
プロットやら人物像の肉付けみたいなことを、
癖でやっているような大人になってしまいました。

そういう構成的な想像をするのが癖になっていたわりには、
「漫画を描く」ということは「絵を描くこと」なのだと、
私の中でかなり強く思っていたことも影響したかも知れません。
だからこそ「アニメーション」の世界に飛び込み、
それなりに体当たりしながら魅了もされて、10年を過ごしたわけですが。

そういえば小説だったら、絵を描かなくても物語描けるんですね。
全然思いつかなかったです。

今思えばなぜ、そんなに強く「物語=漫画=絵」だと思っていたのか……

というわけで小説を書くのは、小学校での国語の時間の課題以来で、
ほとんど初めてです。

たった3ヶ月前ですが、読み返すと拙さを感じます。
でも書いていると、水の中でも息ができるような、
そういう爽快感に包まれます。
文章表現って面白いな、なんてカラフルで巧妙な世界なんだと。
この先もまだまだ、読み返したらちょっと拙いと感じる作品を
私は作り出していくと思います。
いつか自分で読んでも傑作だと思えるものが作れたら良いですね。


さて本題です。

月刊誌ということで、
その季節の何かしらをモチーフに取り入れて物語を歩み始めようかと思い、
この号はひとまず、新連載のお祝いの意味も込めて、桜になりました。

登場人物は、
極度の人見知り、内向派なピンクのちんちくりんのヴォーカル「ブブ」と、
ロングな三つ編みと丸眼鏡が目印の外向派、
アコーディオン弾きの「ナガヲ」です。

ふたりは、音楽を愛するアマチュアの音楽家です。

ブブは、「歌を愛する」というよりかは、
もはや呼吸や消化排泄のように自然とやってしまう天才肌。
ナガヲは、音楽を一生の仕事にしたくて努力や計画を惜しまない一方で、
ブブの歌や世界観を愛していて、
彼女のどんな”はみだし”も”雪崩”も、飄々とした顔で受け止める
優しいしっかり者です。

さてふたりは果たして、念願のメジャーデビューができるのか。
どうでしょうか。


本誌で頂いている1ページは、
分量としては決して多くはないので、

調子に乗って文章を書いてしまうと
あっという間に絵を見せる余白がなくなってしまうし、
また調子に乗って絵を描いてしまうと
あっという間に文章を書く余白がなくなってしまうので、
先に文章を決め、文字数を固めてから、画面構成を組みます。
(しかし3ヶ月後、絵に文章はどんどん被って良いと開き直ることになります)

結構スピーディに連載が決まったこともあって、
この時はまだ、さてどんな作り方をしようか確立ができておらず、
この号では CLIP STUDIO PAINT を使ってみているのですが、
なんと次号、早速 Procreate に乗り換えます。

そう、なぜタイムラプスでもないのに過程を動画にしているかというと、
来月号からタイムラプスが公開できるからです。
今月号は、クリスタのタイムラプス記録チェックを押すのを忘れており、
残っていませんでした……
( Procreate は自動で記録されるからチェック忘れなし)

と言っても今月号は、クリスタでもほとんどラフ程度までで、
本格的な着彩などはPhotoshopでよく描いたので、
どちらにせよあまり記録に適した環境ではなかったんですが。

ただこの作画作業の前後で、Adobeはよく使っていて、
文字の配置や文章調整には Illustrator を、
CMYK化や色調調整に Photoshop を使っています。

今回は僅かに残っている途中経過のデータを組み込みつつ、
仕上げのレイヤー構造を紹介しました。アハ体験のようですみません。


初稿納品では、文章は確定のものを、
絵の方は、一旦色合いや構図が見通せるところまで進めています。
そこから校了までのところで、編集部のデザイナーさんに
テキスト部分のレイアウト編集を進めて頂いています。
その間、私の方ではイラストを仕上げ、
最後に絵の最終データをお渡しして差し替えてもらい、校了になります。
校了後は、印刷、そして毎月10日目安で本屋さんに並ぶんですね。


新連載掲載号の見本誌をいただいた時に、
紙で自分の作品を手にした嬉しさがありました。
自分のオリジナル作品がメディアに載ることの嬉しさがまず第一。
そして、テレビで放映していただけた事は何度かありつつも、
紙に出力されたものを手にした経験はほとんどなかったんです。
映像編集を仕事にしていても、根はアナログ人間なままなようです。

思えばこの連載も、
最初「紙に絵の具で描こうかな……」と悩むところから始めたんでした。
「いや1ページといえどもそんなに時間ないぞ、失敗時のリスクが高い……」
的な葛藤をして、結局デジタルイラストに落ち着いたわけですが。

とはいえ、編集部の担当の方には
「なんでも自由にやっていい」と言っていただいているので、
この先、アナログ絵になる月もあるかも知れませんし、
小説じゃなくて漫画になる月もあるかも知れません。
楽しみです。


といった形で、制作過程と裏話を
定期的にこのnoteにアップしてまいります。
初号だから長くなってしまったのだろうか、
それともこの分量で続けていくのか……果たして。

最新話数は、ぜひ本誌である「Newtype」にて。
毎月10日頃発売です。

どうぞよろしくお願いします。

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小野ハナ
ありがとうございます!