【全文無料】掌編小説『はやる』小野寺ひかり
今月で1st Anniversaryを迎えた文芸誌「Sugomori」。6月の特集として、季節の掌編小説をお届けします。今月のテーマは『一周年』。書き手は小野寺ひかりさんです。
『はやる』
はやる気持ちを抑えようと、山本昭は自らの白髪頭に手をやった。
切りたての短髪が手のひらにわずかな刺激を生む。
人生は思わぬ出来事の連続だ。病魔に侵されたことを知ったときは、神も仏もあるものか、と運命を呪ったが今は己の中に存在する腫瘍こそ生きる糧ともいえるのであった。
余命は1年ーー