特許から教わる塩クッキー【特許レシピによる料理⑦】
※ 本記事はパテントサロン「知財系ライトニングトーク#13 拡張オンライン版 2021 夏」向けに執筆したものです。
パテサロLT、3連続3回目の参加です。今回はクッキーを作ってみました。
(前々回は炊き込みご飯)
(前回はチャーハン)
過去2回はお米系。今回は初めてお菓子に挑戦します。
特許レシピ:塩味を有するクッキーの製造方法(特許第5966066号)
参考にするのはこちらのクッキーに関するレシピ(特許)。この特許によれば、簡易な方法で「塩なれ効果」を無くすことができるようです。(塩なれ効果:日が経つと共に塩味が薄れていくこと)
【課題】使用する食塩の量が少なくても、甘味と共に塩味を楽しむことができ、しかも簡易な方法で塩なれ効果をなくすことができる、塩味を有するクッキーの製造方法及び塩味を有するクッキーの提供。
特許第5966066号より J-PlatPat リンク, Google Patents リンク
健康に気を使いつつも、やはりしょっぱい物は食べたい!これはとても楽しみです。
さて、どの様な特許なのか?特許の権利範囲を示す【特許請求の範囲】を眺めてみましょう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩を含まない材料を複数混合した生地を所定温度で所定時間焼成し、クッキー本体の表面温度が30乃至70℃まで冷却後に食塩を表面に付着させたことを特徴とする塩味を有するクッキーの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記食塩が山塩であることを特徴とする塩味を有するクッキーの製造方法。
特許第5966066号より J-PlatPat リンク, Google Patents リンク
これは......!
なんというシンプルな内容。私でも実施できそう(´ン`)
食塩を入れずに生地を焼いて、クッキー表面が30~70℃のときに塩を塗せばいいんですね。楽勝です。
材料を用意します。小麦粉、砂糖、バター、味付けのためのココア。
ぐにぐに混ぜて、冷蔵庫ですこし冷やします。
オーブンで焼きます。いくつかはちゃんと型抜きしましたが、途中で面倒になりました。
焼いている間に、本発明の最大のポイントである「塩を塗すタイミング」について復習しておきます。30~70℃とあるが、いつが最適なのか?特許の明細書の中身を詳しく読んでみましょう。
【0029】・・・食した時の塩味及び塩味と甘味とのバランスは、実施例1乃至4共に良好であり、実施例2及び3が特に良好であった。
特許第5966066号より J-PlatPat リンク, Google Patents リンク
特許第5966066号 表1より
ふむ。
どうやら40~60℃がよさそう。お風呂の温度まで下がるのを待っていたら危ない感じですね。
焼きあがりました。
指温度センサーを頼りにタイミングを見計らいながら・・
塩をサッサッサッ (´ン`)ノシ
塩が溶けずに残り、いい感じ。そしてお味も美味しい!塩の食感とクッキーの甘味の絶妙なバランスがたまらない!!これは令和のクッキー、ビューティフルハーモニー!!!
・・・という感じでした。
そしてこれは特許料理シリーズの中で一番の傑作だなーと思っていたところ、横にいた人がこんなコメントを。
「最後に塩をかけるなら、次は無塩バターでやってみようか。」
ファッ!?無塩バター?
今回使ったバターには、もしや塩が入っている・・?
入ってましたーー
【特許請求の範囲】によれば、「食塩を含まない材料を複数混合した生地を・・」とのこと。つまり食塩が入ったバターを使っていたら、文言上は特許の内容から外れてしまいます。
なんてこった。全然楽勝じゃナカッタ。
無塩バターによる本発明の実施はまたの機会にします(´ン`;)
Uchida l 知財ライター Twitter:https://twitter.com/estoppel88
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