無料ツールによる特許調査/特許検索 - LENS, Google Patents
*12/7 追記しました →「参考情報3:LENS の使い方(Youtube)」
本記事は「知財系 Advent Calendar 2020」12/14(月) にて公開しようと考えて執筆しましたが、1ヶ月待っていたら検索結果が変わってしまうかもしれないので、もう公開してしまいます。12/14(月)は別記事をUPします!
ここでは無料の特許検索ツール「LENS」や「Google Patents」にて、手軽に特許情報を検索出来ることを紹介します。勿論、特許庁の J-PlatPat でも特許検索が可能ですが、LENS や Google Patents を用いることで、以下のメリットがあります。
・海外の特許を調べることができる
・注目すべき特許を手軽に調べることができる(引用・被引用文献)
・発明者や特許分類のランキングをマップ化することができる(LENS)
特に LENS に関しては操作に慣れが必要ですが、そこそこ便利です。
なお、Google Patents や LENS の使い方については、本記事末尾の Youtube 動画にて詳しく紹介されています。
1.想定事案:対象企業&ゴール
対象企業
WOTA 株式会社(以下、WOTA)
ゴール
WOTA が他社特許のクリアランス調査を行うにあたって、「ちょっと気になる会社やその会社の特許情報」を探る。(ここで得た情報に基づき、その後の詳細な調査に繋げる)
他社特許のクリアランス調査:侵害の恐れがある他社特許権を調べること。
WOTA 関係者の方々にとっては余計な内容かもしれず恐れ入ります。
技術的&特許的な詳細には踏み込まず、
「ここまでのことなら、無料ツールだけでもサクッと調べられる」
という点を紹介させていただければ幸いです。
2.WOTA 株式会社:自律分散型水循環システム [WOTA BOX]
今回の調査対象は、2020年度グッドデザイン大賞を受賞した WOTA の「自律分散型水循環システム」です。
3.調査の流れ
WOTA 文献を調査(LENS / Google Patents)
↓
WOTA 文献の引用・被引用文献を調査(LENS / Google Patents)
↓
気になる会社の特許群を調査・分析(LENS:Analysis 機能)
4.WOTA 文献を調査(LENS / Google Patents)
まずは社名で検索します。もし発明者のお名前が分かっている場合は、念のため発明者検索も行います。(出願人がベンチャー企業の場合、企業名の変更等により、現社名でサーチしてもヒットしない恐れがあるため)
ここでは LENS を使用します。
LENS: https://www.lens.org/lens/search/patent/structured
「Field」にて Applicants を選択し、「WOTA CORP」を入力します。
このとき、もし英語の表記名が分からないような場合は、Google Patents 等にて確認してから LENS で検索するとよいです。
US20190031530(Google Patents リンク)
5.引用・被引用文献を探る(LENS / Google Patents)
次に、WOTA と関連しそうな他社特許を探るべく、「引用文献・被引用文献」について調べていきます。
引用文献・被引用文献 のイメージ
・引用文献(Patent citations *)
起点となる特許より前に出願されている関連文献
・被引用文献(Cited by *)
起点となる特許より後に出願された関連文献
(被引用文献の引用文献 = 起点となる特許文献)
* Patent citations , Cited by :Google Patents 上における表現
LENS, Google Patents いずれにおいても引用文献・被引用文献を調べることが可能ですが、以下では LENS にて被引用文献、Google Patents にて引用文献を調べていきます。
5.1 LENS で被引用文献を探す
上記検索により、WOTA の案件は11件(4ファミリー)ヒットしました。
被引用文献を調べたいので、「List」タブ → 「Cited by other patents」でソートします。
LENS 検索結果リンク(↑と同じ画面が開くはずです)
ソート結果を眺めていくと、一番上の案件だけ「Cited by :1」とあります。WOTA の出願は比較的新しい案件が多いので、被引用文献はまだ1件しかないようですね。
その1件がこちら↓
Gree Electric Appliances Inc(珠海格力电器股份有限公司)という中国の家電メーカーによる出願でした。
5.2 Google Patents で引用文献を探す
例えば WOTA の以下文献だと、10件の引用文献があります。
WO2017155124:水処理装置管理システムおよび家庭用水処理装置
パナソニック や Danco 等、いくつかの会社の案件を引用していました。
6.気になった会社を調べる(LENS:Analysis 機能)
お題は「他社特許のクリアランス」なので、WOTA 文献よりも前に出願されている「引用文献」の情報をもう少し深堀していきます。
なんとなくちょっと気になる会社・・ということで、ここでは Google Patents で確認した10件の引用文献における下から4件目の「Danco, Inc.」に目を付けてみます。
「Applicants:DANCO INC」にて LENS で検索したところ、137件(56ファミリー)ヒットしました。
Danco はどういう分野の出願が多いのか?を確認すべく、今度は「Analysis」タブを表示してみます。
LENS 検索結果リンク(Web 閲覧推奨。↑と同じ画面が開くはずです)
「Add New Chart」にて色々なマップを追加できますが、上記リンク先表示においては、
・出願件数推移(左上)
・特許分類(IPC)の件数ランキング(右上)
・被引用回数×出願日マップ(左下)
・発明者ランキング(右下)
を表示させています。
右上の特許分類(IPC)のランキングを見ると、「E03C」や「E03D」が多いですね。配管設備や洗浄弁などを扱っている米国の会社のようです。(Danco HP)
(参考)Danco 社の文献に多く付与されている特許分類の説明
A47K 他に分類されない衛生設備
E03C 上水または排水用の家庭用配管設備
E03D 水洗便所または洗浄装置を備えた小便所;そのための洗浄弁
・・・ということで、Danco 社の特許は、「自律分散型水循環システム」を扱う WOTA からは少し離れた分野の案件が多そうということが分かりました。(勿論、ヒットした引用文献等、WOTA 製品におけるハードウェア部分で関連する Danco 特許がある可能性はあります)
なお、LENS 上でも特許分類の説明を確認出来ます。棒グラフ上をクリックすると、その分類についての説明がポップアップウィンドウで表示されます。上位階層の情報も表示されるのでなかなか便利です。
7.さいごに
なんだか中途半端な気もしますが、ここで終わりとします。
更に調査を行う場合は、「5」で発見した引用文献・被引用文献について深堀りをするとともに、その後の詳細な調査に向けて必要な特許分類を抽出していくのがよいかと思います。
そして詳細な調査を行うには、キーワードや特許分類も複雑に駆使して母集団を作成する必要があります。故に、LENS や Google Patents では満足な調査が行えません。
しかし、短時間で手軽に上記情報を得られるだけでも、これら無料ツールを活用する価値があります。もし突如打合せ等に出席することになったとしても、(操作に慣れれば)上記の情報であれば 0.5 ~ 1h程 で得ることができます。
是非使ってみてください。
参考情報1:特許の大学「特許ってどう調べるの!?」
特許調査の必要性や調べ方、考え方について、優しくわかりやすく説明されています。
参考情報2:Google Patents の使い方(Youtube)
Google Patents の使い方については、e-Patent 野崎さん の以下動画をご確認ください。
「超基礎 Google Patentsを使って無料で特許検索」e-Patent
「(続)超基礎 Google Patentsを使って無料で特許検索」e-Patent
参考情報3:LENS の使い方(Youtube)
「【調べるチカラ3分講座】Lens orgを使って無料でグローバル特許分析」e-Patent
参考情報4:引用・被引用情報について
引用特許分析の有効性とその活用例(情報と科学の技術, 2006 年 56 巻 3 号 p. 114-119)
特許の「牽制」情報から、自社技術を活かした新たなテーマを探す方法(Astamuse Lab, 2016-10-19)
等。
他、「引用 被引用 特許」などで Web 検索すれば色々と情報が出てきます。
検索条件
検索日:2020.11.6
検索DB:LENS, Google Patents
以上