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「しっぽにリボンをつけなくちゃ」の秘密

Netflixで「ムーミン谷のなかまたち」を見てる。

第7話「スナフキンと公園番」を見ていたら、リトルミイが歌いだした。
その歌の歌詞の秘密についてのお話。

英語で見てたんだが、「tails」とか言って、あれもしかしたら…と思って日本語で聞いてみた。
そしたら「しっぽにリボン」って言ってて、ああ!あの原作に出てきた歌か!あの歌にメロディがついて実際に聴けるのか!と感動。
でも何か歌詞が…

しっぽにリボンを着けないと
ヘムレンの牢屋にぶち込まれる罪を犯したら償わなくちゃ
人になすりつけるのはなし

(ムーミン谷のなかまたち 7話 日本語版)

All small beasts should have bows in their tails
Or they'll find themselves locked in hemulen's jails
If you make a mistake, get ready to pay
You can't blame another and run away!

(ムーミン谷のなかまたち 7話 英語版)

ぶち込まれる?そんな歌詞じゃなかったはず、と思って原作をチェック。

すべてちっちゃな動物は
しっぽにリボンをつけなくちゃ
そう リボンをね しっぽにさ!
ヘムルはみんなかざってる
かんむりと花輪をね
月がしずめば ホムサがおどる
・・・

(ムーミン谷の夏まつり 2011新装版)

すべてちっちゃな生きものは
しっぽにリボンをむすんでる
リボンをね そう しっぽにね
ヘムルはみんなかざってる
冠と そう 花輪をね
月が沈めば ホムサがおどる
・・・

(ムーミン谷の夏まつり 2019新版)

全然違う…
アニメは原作を無視したオリジナル?
では原作の英語版はどうなってる?

All small beasts should have bows in their tails
Because now the Hemulens are closing the jails:
Whomper'll dance to the moon and rejoice.
...

(Puffin版 Thomas Warburton訳)

英語版とも違う。
そもそも原語版はどうなってるのか気になる。楽天Koboで原語版を買ってあるので見てみた。

ja rosett, ja rosett på sin svans,alla hemuler bär krona och krans,Homsan ska dansa när månen går ner ...

(Förlaget M 2019版)

スウェーデン語は読めないので、グーグル翻訳で英語に翻訳してみた。

yes the bow, yes the bow on her tail, all hemules wear crown and wreath, Homsan will dance when the moon goes down ...

「ヘムレンは冠とリースを着飾ってる…」
日本語版小説は原語版小説に忠実なのだと判明。
英語版小説は独自のアレンジがなされている模様、ヘムレンのところが。
ん? jails?
"Because now the Hemulens are closing the jails" を訳すと「ヘムレンは牢屋を閉じちゃうから」
アニメ版の「ヘムレンの牢屋に~」ってのは英語版小説の影響から来た歌詞だったのか。

alla hemuler bär krona och krans(原作スウェーデン語版)
 ↓
Because now the Hemulens are closing the jails(原作英語版)
 ↓
Or they'll find themselves locked in Hemulen's jails(アニメ英語版)
 ↓
ヘムレンの牢屋にぶち込まれる罪を犯したら(アニメ日本語版)

このような経緯があったのだ。
何で「ヘムレンの牢屋~」なんて歌詞にしたかというと、全くのオリジナルなわけではなく、英語版小説の影響があるから。
でも実はアニメのこの後のストーリーを予見した歌詞でもあるんだけど。
原作小説の要素を取り入れつつ、アニメ独自の歌詞に変えつつも、なおストーリーに関連のある歌詞となっていてお見事、ということでした。

「ムーミン谷のなかまたち」はかなり見ごたえあり、原作ファンなら是非チェックです!



(2021.12.21追記)

「ヘムレンの牢屋」にばかり気を取られていたが、実はもっと重要な秘密があったのに気づいた。

それは歌のはじめの「しっぽにリボンを着けないと」。
英語では「All small beasts should have bows in their tails」。

この「should」が一番のポイントで、これがあるから「ヘムレンの牢屋に~」って歌詞も導かれるし、今になって初めて Ellinooraが歌うこの歌のフルバージョンをSpotifyで聴いたのだが、shouldが歌全体に大きく影響を及ぼしていて、shouldありき、should無しでは考えられないくらいの歌詞となっている。そもそも曲の題名が「All Small Beasts Should Have Bows in Their Tails」と should前提の曲だし。

この shouldを日本語版小説でどのように扱ってるか注目してみよう。すると原語版ではどうなっているか…それは明かさないことにしよう。全てを白日の下にさらしてはつまらない。謎は謎のままでよいものもある。

しかしこの shouldがあるから英語版小説の「jails」の記述が出てきたし、そこからアニメ英語版の歌詞が作られ曲名も左右し、それが日本語版の曲名・歌詞に影響を及ぼし、そしてそもそもはるか昔から日本語版小説も shouldに右往左往させられているという…。
should一語でどんだけ世界を動かしてるんだっての。
ムーミンはスウェーデン語の小説のはずなんだが、明らかに英語の方が影響力の強さが大きい。このアニメがイギリスで作られてるのも、英語の国だからって理由もあるのかも。

まあそれはともかく、この曲のフルバージョンをかなり気に入ってしまって、購入できないのかと思ったらAmazonで250円で売ってるじゃないの。でも他の曲もちゃんと聴きたいからアルバム買っちゃったけど、でもあのスナフキンの件の曲が250円で買えるんですよ!スナフキンファンは買うしかないんじゃないでしょうか。リトルミイとの合作だし、ミイファンも買いましょう!

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