社長芸人による芸人経営学.2
第2項 芸人経営とは
前項では、芸人としての成功の定義を述べました。
本経営学においては、芸人事業の成功を2.7億円を稼ぐことと定めて、その為のアプローチを考察していきます。
つまり、その目標を達成するための過程が「芸人経営」です。
詳しく定義するとしたら
「芸人という事業を行い、2.7億円を稼ぐ為の諸活動」です。
では、その芸人経営においてはどのような活動が具体的に必要になるのでしょう。
一般的な企業活動に沿って以下の5つの部署に分けて説明していきます。
(1)製造部門(2)営業部門(3)流通部門(4)人事経理部門(5)総務部門
(1)製造部門
これは、商品としての「芸」を製造する部門です。ここで製造された商品を市場に提供することで収益を得ます。
一般的な工業製品と同じように、高品質かつ不良品率が低いことが求められます。
芸の種類は多岐に渡ります。
・ネタ
お笑いの基本です。M-1グランプリなどの賞レースで競われるような漫才や、コントがその代表です。それ以外にも、1人で行う「ピン芸」や、バラエティ番組で見られる「団体芸」などもあります。歌ネタ、フリップネタ、モノマネ、手品、漫談、落語など様々なジャンルがあります。
昨今ではネタが多様化してきており、YouTube channelやTikTokなどに投稿される動画も、企画や編集、演出を含めた「ネタ」と定義することもできます。
基本的には、1人(もしくはコンビ、トリオなど固定された集団)で完結する、単発の芸です。
・MC
マスターオブセレモニー。その空間における支配者です。芸としてのMCというのは、与えられたお笑いやバラエティの空間において、所定の進行を行う芸です。
司会者とも呼ばれますが、いわゆる議事進行の役割だけでなくその空間の構成メンバーの個性を引き出し、エンターテイメント要素を最大化することを目的とする役割です。
スムーズな進行、多くの出演者への応対、臨機応変な対応、幅広い知識、受け答えの瞬発力など総合的な芸能力が要求されます。
また、MCの知名度や格が番組の格に直結するため、有力なMCは取り合いとなります。一般的には、芸能界においてMCとしての地位を確立し、MCとして頻繁に露出することによって「天下を取った」と評されます。
上記のように、MC芸を製造するには極めて高度な技術力が要求され、また信頼性を得るために長期的に安定したパフォーマンスを提供し続けなければなりません。
・ひな壇
バラエティ番組などでよく見られる、MC対極に位置する場所で行う芸です。
主に複数名で構成されます。構成メンバーには様々な個性が要求され、また個性の組み合わせが番組の成否に直接関わるため、世間に対して明確な「個性」の認知が必要となります。
受け答えのスピードや内容も世間に認知された個性と一致することが強く求められます。ひな壇同士、もしくな大物MCと相性が良い組み合わせを構築することで、様々なシーンで需要が高まります。
特定の組み合わせで一定以上の評価を受けると、組み合わせありきでの新しい需要が発生するため、同時期における他の競合(共演者)を分析することも欠かせません。
また、他者との組み合わせによる評価や認知度が高まると、仕様変更(キャラ変)が極めて難しくなります。
・特技
特技というのも当然芸に該当します。
お笑い芸人としての経営ですが、笑いに直結しない芸が多くあることが特徴です。特に趣味のジャンルにおいて顕著であり、バーベキューや鉄道、絵画、音楽、文章などエンターテイメントの分野であれば広く需要が発生します。
広く認知されていない分野であっても、熱狂的なファン層がいれば事業として成立しますが、そういうジャンルにおいては「いっちょ噛み」が極めて嫌われる傾向にあります。
分野に対する愛情や深い知識、考察力が必要なため、ある程度の期間と費用が必要にもなります。
とはいえ、規模は小さくても根強い需要がある分野であれば十分に事業として成立していくため昨今の特に細分化された趣味の世界においてはまだまだ新しい需要が見込まれます。
それでは、次回以降は(2)の営業部門から説明していきます。