Eversolo DMP-A6 Master Edition試聴記
Eversoloの新製品DMP-A6 Master Editionの試聴をする機会を得たので、昨年末から借りている仕事場でやっとオーディオを設置できたこともありインプレッションをさせていただく。
試聴環境
スピーカー
DYNANDIO Confidence C-1 Signature
アンプ
marantz PM6006
この通り、価格バランスはいびつな環境でインプレッションを行う。自宅、オーディオルーム、仕事部屋と3箇所にオーディオ環境があり、最近借りたこの仕事部屋は各所からあぶれた機材を持ち込んで、とりあえず音が鳴るようにした。もちろんスピーカー位置のセッティングは入念に行ったが、ルームチューニングや電源環境の見直し、ケーブルの吟味などはまだ行っていない。悪く言えば未完成な、良く言えば機材の基礎能力が試される環境である。
ここからしばらく、オーディオ機器のインプレッションに対する私自身な考えを述べさせていただく。お急ぎの方は下にスクロールして次のトピックス「こんな音でした」からお読みください。
この記事を読んでくださる方々に有用な試聴インプレッションでありたい。となれば、単純にDMP-A6 Master Editionを繋いで鳴らした音の感想を述べても意味がないだろう。
環境により感想はまちまちになる。私自身の方針として、試聴インプレッションは「他の機器との比較」でなければオーディオファンにとってのオーディオ選びの指針にはなり得ないと考えている。
また、あまりに価格帯が離れた機器同士の比較も意味がないように思う。
フェラーリF8トリブートとトヨタ86を比較試乗したインプレッションは、読み物として興味は惹くかもしれないが、本当にフェラーリなり86なりの購入を検討している方にとっては大した材料にはならないだろう。86が値段のわりにパワフルであり、ドライビングプレジャーに富んだ車であっても「じゃあ、フェラーリ買うのやめて86にしよっと」とは普通はならない。
なので、今回DMP-A6MEと比較試聴するために用意したのはBluesound NODEである。まあ、用意したというよりもともと持ってたんですけどね。
Bluesound NODEはRCA端子の幅が狭く、私が所有しているそこそこのお値段のRCAケーブルが入らない。なので、比較においては光デジタル出力からとした。
しかし、DMP-A6MEはネットワークプレーヤーとしてだけでなく、豊富なデジタル入力に対応したプリアンプ的な使い方もできる。そうなると、単なるデジタルファイルトランスポートとしてのインプレッションでは物足りない。
なので、DMP-A6MEのアナログ出力と、marantz PM6006の内蔵DACの音質比較をする事とした。
PM6006は定価66,000円のリーズナブルな製品だが、D&M社のこの価格帯の製品のコスパの高さは多くのオーディオユーザーがご存知な事と思う。
スケールメリットが大きく、総合オーディオメーカーの強みが発揮されるレンジであり、他のオーディオ機器と比較してきているが、価格を大きく超えた性能であると感じることがとても多い。
とはいいながらも、DYNANDIO Confidence C-1 Signatureを鳴らすと、力不足を感じる部分は多い。低域の制動力がもう少し欲しくなるし、中高域は薄味に感じる。しかし、これは私が他に所有するoctave のRE290やマークレビンソンの334Lと比較した場合であって、これだけを聴けば音楽の醍醐味を充分に感じる事はできる。
さて、とても長い前置きをして、やっと本題に入らせていただく。
こんな音でした
比較音楽ソース
Amazon Musicより aiko 「花火」(ハイレゾ)
Bluesound NODEとのデジタル出力での比較。まず、音の表現の違いに驚いた。NODEがまとまりの良い聴かせ方をする一方で、DMP-A6MEは音場の広がりを強く感じる。これは好みが大きく分かれそうだ。念のため、クラシックを何曲か適当に選んで再生してみたが傾向は同じだ。
誤解を恐れずに言うなら、NODEが「欲張らない」音であり、DMP-A6MEは「欲張った」音である。
欲張らないというのは、この価格帯で無理にワイドレンジにしようとしたりハイレゾ的な抜け感や空気表現をしようとして「なんちゃってハイエンド」みたいな音にするのではなく、実に堅実に音楽をまとめ上げているという意味である。Bluesoundは先進的なデジタルオーディオのメーカーであるが、音楽の表現は実に基本に忠実である。雰囲気として、実家でいまだに現役稼働しているDENONのCDプレーヤー1650ALに近い印象がある。中域を厚くしているという訳ではなく、音楽全体のまとまり感にとても好印象を持てる。
その一方でDMP-A6MEは、音像が広いメリハリの効いたサウンドであり、これはこれでとても聴きやすい。各音のセパレーションが適度に良く、音楽全体の見通しが良い。これを「ドンシャリ」と思ってしまったらもったいない。
ヴォーカル表現は、濡れた艶というより、ドライでサラッとした手触りの良さがある。システムによってはいわゆる「サ行のキツさ」を感じるかもしれない。しかし、それは好みの範疇であると言える。特に英語圏の歌などは気音がしっかり出ていなければ言語としてよろしくない。(正確な「サ行」の再生なのか、「強調しすぎたキツいサ行」なのかは経験や知識で左右される部分なので、ビギナーが誤解しないようにあえて説明した)
PM6006との比較
続いてDMP-A6MEのアナログ出力(出力固定)とPM6006のデジタル入力との比較。つまりはDAC部分の比較である。
DMP-A6MEのアナログ出力は、傾向としてはデジタル出力のようにサウンドステージを広くとり、メリハリを効かせている。しかし、PM6006の内蔵DACより暖色系の音になっている。
PM6006のDACは、比較すると、特に中低域が骨太に感じる。メリハリはDMP-A6MEの方が効いているので、どのような表現でその違いを伝えると良いのか迷う。
輪郭の太さの違いというのが適切かもしれない。DMP-A6MEはシャープでエッジのたった輪郭である。万年筆のような金属のペン先の輪郭である。PM6006は強いコシのある筆のような輪郭である。とはいえ、滲みがあるような輪郭ではない。
この試聴記の目的はオーディオ機器に勝ち負けをつけるためではなく、多くのオーディオファンの機器選びの一助になることである。まとめとして以下のように結びたい。
私自身がDMP-A6MEを導入するとしたら、コンパクトなスピーカーをコンパクトなデジタルパワーアンプで駆動するためのデジタルプリとしてだろうと思う。
現状でそのようなシステムの需要が私に無い、というかそういうシステムを置くような場所が無い。だが、リビングなどでTVや映画の音声も聴きつつ、ネットワークプレーヤーとしてストリーミングで家族が様々な音楽を楽しんだりするシチュエーションでは相当活躍するのではないだろうか。
気になるの上位モデルDMP-A8との比較である。私自身、2024年6月に国際フォーラムで開催されたOTOTENにおいてブライトーン社のブースにてDMP-A8のデモをさせていただいた関係で、じっくり同製品を試す機会があった。しかし、DMP-A6MEの日本導入はその後だったため、比較する機会が無かった。同じ環境で(できれば自分の試聴環境で)比較してみたい。
ちなみに、この試聴記の執筆にあたり、ブライトーン社からのギャランティは一切発生していない。というかブライトーン福林社長は私が記事を書いてるのも知らないはずである。だって、言ってないもん。言ったら気をつかわれちゃうし、こっちも気をつかうし。お金もらってたら、もっと褒めるし。
ともかく、読んでいただきありがとうございました。
YouTubeで空気録音などもやってますので、よければご視聴ください。