オンネトーのアイスバブルを安全に見るために
最近、北海道の湖で見られるアイスバブルっていうものが人気になってきています。
アイスバブルとは、湖底から出ているガスが湖の氷に閉じ込められる現象。
美しくアートな文様が描かれるというのが近年知れ渡ってきました。
こんなの
主に道東の結氷した湖でよく見ることができます。
今回はその中でもオンネトーのアイスバブルをできるだけ安全に見るための方法を書いていきます。
アイスバブルを撮影するという事は、凍った湖の上に乗らなくてはいけません。
当然怖いです。
もし割れたら冷たい湖に落ちて浮かんで来れないかもしれません。
どういう用意をしてどういう状況なら安全なのか?
それをこれから書いていきます。
オンネトーが凍るのは毎年11月下旬から。
11月20日をすぎたらそわそわしてきます。
今年のオンネトーの結氷はどんなかな~?と。
そこでまずは情報収集。
オンネトーにはライブカメラがないので、頼りはネットの情報です。
私はいつもツイッターでオンネトーを検索し、最新情報を見ています。
ちらほらと最新のオンネトーの画像が上がってますので、チェック。
薄氷が張ってきたのがいつか確認します。
アイスバブルもいいですが、この薄氷が張ってきた瞬間もすごく大事。
薄氷の上に雪が降れば、まだ降っていない水面とで白と緑のまだら模様ができ、素晴らしくキレイな時があります。
ちょうどいい写真がありませんでしたが、イメージ的にはこんなの
なので、薄氷が広がってきてたらまず一度行くというのがセオリー。
その後はオンネトーの天気予報を確認。
最低気温がマイナスならどんどん結氷は広がっていきます。
この時期はだいたいマイナス5~15度。
全面的に薄氷が張って、通常は3日ほどで岸辺なら人が乗れるくらいまで凍ってきます。
ただ、沖の方はまだまだ氷が薄くてまず落ちます。
岸の方で慎重に確認してそこだけにしておきましょう。
氷の厚さは基本的に目視します。
氷は透明なので厚さは分かりづらいですが、たいていヒビが入っています。
日中と夜間の温度差で亀裂が入るんですね。
こんなの
体重70キロの場合、岸付近の氷の厚さが3センチなら岸辺は歩けるけど沖には行かない。
沖の方が確実に薄いので、ある程度のところまで行くと薄くなって落ちるリスクがめちゃくちゃ高くなる。
なので3センチの時は肩慣らしならぬ足慣らし。
せいぜい岸から数メートル歩く程度、それも慎重に。
わずかでもピキピキいったりたわみを感じたら即撤退します。
この状態では、初めてや数回来たくらいの方はできる限り氷には乗らない方が安全です。
本当に岸の間近あたりだけにしておいた方が良いでしょう。
その後は天気予報の最低気温を確認しながら良さそうな日を選定。
順調にいけばさらに2~3日すれば氷は厚くなっているはず。
実際に行って岸で5センチくらいある日から本格的に始動です。
ゆっくり歩きながら沖を目指します。
ただし氷の厚さは常に目視。
また、足を乗せたとたんヒビの音がしたりしたらそれ以上先に進むのはやめます。
この時期、まだ結氷して日が浅いので、アイスバブルは数も少なく、表面に少しだけしかありません。
タワーのように何層も重なったアイスバブルは、結氷が相当進まないとできません。
なぜなら、泡が湖面の氷に届く。
バブルになる、少し氷が厚くなる。
そこにまた泡が届いて前のバブルの下に新しいバブルができる。
これを繰り返してどんどんバブルは層を重ねていきます。
なので、理論上12月の初めに行くより1月や2月に行った方がすごいバブルが撮れるのは自明の理です。
バブルを撮るだけならなるべく遅く来た方がいいですね。
雪を掘ってブラシできれいにしてお湯でもかければけっこうすごいバブルが撮れるんではないでしょうか。
その時期にわざわざ行ったことないけど。
結氷してすぐの時に行く利点。
1 ゲートがまだ閉まっていないかも。
オンネトーは野中温泉という所に冬季通行止めのゲートがあって、毎年12月10日頃閉まっていました。
ゲートが閉まるとゲートから片道2キロ歩かなくてはなりません。
なのでゲートが閉まる前なら車で直接湖畔まで行けるのでラク。
でも2020年は12月4日に閉まってしまった。
なんでか毎年ゲートが閉まる時期が早まっているんですよね~。
除雪経費節約のためなのか!?
2 クリスタル結氷が見られるかも!?
薄氷が張った後、人が乗れる厚さまで雪が降らなければ、湖すべてがガラスでできているかのようなクリスタル結氷が完成します。
この状態で湖に乗ると、ガラスのように湖底までスケスケ。
恐ろしくも美しい体験をする事ができます。
こんなの
湖底の木や石が見えます。
当然死ぬほど安全確認しています。
70kgの大人がジャンプしても割れない5センチ以上のところのみ行きます。
結氷してすぐに雪が積もっちゃったら、あまり急いでオンネトーに行く必要はないんじゃないかな。
雪が載ったらもうどこがどのくらい厚いか分からないし、リスクが高いです。
薄氷が張ってから毎日天気予報を見て、最低気温がずっとマイナス5度以下だったら1週間後くらいに乗ってみてもいいかなと思うくらいだけど、今まではバブル掘りだしてまで撮るなんて考えなかったから、そもそも雪で真っ白になったら終了って感じだった。
今後はバブル撮影の為に、氷薄くても無理して氷の上に乗って転落する事故が起こらないとも限らない。
バブルを撮影するだけなら氷の厚さが厚くなってバブルも豪華にバブってくる12月中旬以降をおすすめします。
まず雪はのっちゃってると思いますし、雪も時期を遅めれば遅めるほど深くなって、掘るためのスコップも大きい除雪用のものが必要になるでしょう。
ゲートから片道2キロを、スノーシュー装着して大きなスコップ持ってとなるとなかなか大変にはなってきますね。
『旅行や遠方からオンネトーの結氷を体験に来た方へ』
オンネトーの結氷の美しさやアイスバブルをネットで見て、これは一度は見てみたい!と思う方は多いと思います。
私も、一生に一度はぜひ見てもらいたい、そう思っています。
一度見たらまた次も来たくなる、それほどの魅力があります。
そこで遠路はるばるオンネトーまでやって来ました。
いざ見ると氷が薄そう、大丈夫かな!?
「ええーい、遠くからわざわざ来たし、明日は違うとこいっちゃうし、乗ってしまえ~!たぶん大丈夫だろう。ここまで来てアイスバブル見ないで帰るわけにはいかない!」
こういう考えになりませんか?
この方の末路はどうなるでしょうか?
運がすご~く良ければ、無事にアイスバブルも見れてなにごともなく帰れるかもしれません。
でも、状況が整っていないにもかかわらず無茶をすれば、おそらくは転落し場合によっては命も失うことになるでしょう。
オンネトーはスマホの電波は届かず、少なくともゲートの付近まで戻らないと外部への連絡はできません。
アイスバブルを見るためには、絶対に無茶をしてはいけないのです。
今、安全な状況か?
これを常に自分に問い直して下さい。
オンネトーの結氷は12月5日を過ぎればある程度安全性が増してきます。(その年の気温によっては12月8日頃でも凍ってない時があります。)
早めに来て、イチかバチかで氷に乗る方が増えれば、いずれ重大事故が起こります。
できれば日程に余裕をもって、時間のある方は阿寒湖温泉など付近の温泉街に連泊、もしくは旅行の初日に阿寒湖温泉に宿泊し、その前後にオンネトーをまず訪れる。
その後摩周湖や知床を回って、旅行の最終日にもう一度オンネトーを訪れる。
こうしておけば初回でダメだった時でも数日後ならチャンスができている可能性がありますし、ダメな時に無茶をしなくて済みます。
オススメはゲートが閉まる前日にまずオンネトーに行く日程を組む事。
クルマで湖畔まで行けるのでラクに状況確認ができます。
そしてできれば3泊4日以上の旅行を組めば、少なくとも岸辺には上がれる可能性が広がります。
絶対じゃないですよ。
その年の気象条件次第です。
あくまでも可能性は広げられるという話です。
絶対に氷の上に上がりたい方は、12月15日からの3泊4日とかにしてください。
これで上がれないという事は今までないですからね。
雪が載ってる確率も90%以上ですが。
ちなみにオンネトーのゲートの情報は「オンネトー 冬期通行止め」で検索すれば十勝総合振興局の冬期通行規制のサイトを発見できるでしょう。
949オンネトー線のオンネトーゲートの欄に載っています。
『プロのガイドに頼めば安全』
湖の氷の上に乗るという行為、あなたはどう思いますか?
「なんて危険な!今すぐやめろ!」
こう思うのも無理はありません。
見た目のイメージ的には危なそうですもんね。
でも、阿寒湖では毎年冬に氷上フェスティバルというイベントを開催します。
凍った阿寒湖の氷上に大勢の人が乗って楽しんでいます。
これも危ないんでしょうか?
危なくないですよね。
それだけの人が乗っても割れない氷の厚さがあるからです。
クルマだって氷の上を走っています。
つまり、氷の上だから危ないのではなく、乗ったら割れる厚さだから危ないんです。
割れない厚さなら安全です。
一律に氷の上だから危ないのではありません。
大事なのは状況判断、知識、経験、装備です。
これらを兼ね備えている人が何人かいます。
一般の方が同行できるのは、お金を払えば同行してくれるプロのガイドという事になるでしょう。
また、プロでないけどプロ以上の経験を持っている方もいます。
オンネトーの結氷に関して言えば、30数年の経験がある方や60年くらい毎年オンネトーをスケートで滑ってる方などもいます。
こういう方は氷の状態がどうなら落ちないか、どこが落ちやすいかを熟知しています。
オンネトーの結氷に関しては日本一詳しい人たちでしょう。
これらの方がガイドしてくれれば心強いですが、彼らは自分の趣味でやっている事なので、自分の友人知人しか案内してくれません。
一般の方で絶対に安全に行きたい方はプロのガイドにお願いしてください。
今のところプロのガイドでオンネトーの結氷を案内してくれるところは、私の知る限り2か所あります。
阿寒湖のガイドの西田さん
阿寒湖のホテルグループ鶴雅のガイドステーションSIRI
私が知らないだけで、他にもあるかもしれません。
知ってるとこだけ載せました。
『湯つぼについて』
オンネトーでもっとも危険な湯つぼエリアというのがあります。
湖底から温水が湧き出していて、周辺は凍っているのに、そこだけは落とし穴のように水面が出ている。
この穴がいくつもトラップのように密集しているエリアがあります。
一般的な湯つぼエリア以外にも小規模ですが湯つぼがある所もあります。
湯つぼはプロガイドといえどもそうやすやすと攻略できる所ではありません。
ただ、ある条件が整った時のみ、湯つぼを安全にかなり近距離で見ることができます。
どんな条件かはここでは書きません。
非常な慎重さが求められるため、条件が整っても経験がないとやはり命を落とす可能性があるからです。
このような条件が整うのは1シーズンでも1~2日あるかないか、時には1日もないという年もあります。
というか、1日もない年の方が多いです。
先日、その条件が整った日があったので、行ってみました。
目の前には凍っていない水面がパックリ
こんな近距離で大丈夫なのか?と思われるでしょう。
この日は大丈夫な条件が整った希少な日だったのです。
ただ、その状況判断は経験豊富なガイドじゃなければ分かりません。
たぶん大丈夫なんじゃね!?
と、ずんずん近づけば、どこかにある薄い氷の湯つぼトラップに転落して命を落とすでしょう。
湯つぼを見たい方は絶対にガイド同伴で行って下さい。
なんともなかったとしたら、たまたまあなたが条件のいい日に行っていたという事で、いつもいい日とは限りません。
ガイドなら、その日の状況で湯つぼとの安全な距離を保ってくれる事と思います。
実際にはどのようにガイドしてるのかは知らないので、気になる方は上記のガイドさんに問い合わせてみて下さい。
『装備』
私の場合ですが、ライフジャケット着用。
救助用ロープ持参。
です。
ライフジャケットを脱ぐ場合もありますが、それはライフジャケット着用状態で一定のエリアの完全な安全を確認した後、写真撮影でライフジャケット着てない写真も撮りたいときだけです。
普段は湖上に居るときは常に着用してます。
一般の方も見に来るならできる限りライフジャケットは着用してもらいたいと思っています。
万が一の時も生還できる可能性が高まりますからね。
氷の下に入り込んでしまったら、基本的に上は氷ですからもう浮かび上がれません。
落ちても沈まないというのは重要です。
2~3千円で買えるものもあるので、できる限り着用を推奨します。
最強は知床の流氷ウォークでも使ってるドライスーツってことになるんでしょうね。
高いけど。
『まとめ』
いかがだったでしょうか?
この時期のオンネトーは絶景の多い北海道でも、四季を通じて最も美しいとさえ思えるほどです。
さらに宇宙との交信音と思われるような独特な音が鳴り響くなど、来たことない方にとっては異次元空間に迷い込んだような一生心に残る素晴らしい体験となる事でしょう。
かつてはこの時期にオンネトーに訪れる方は一日にほんの数人ほどだったのが、今年は100人以上は居そうな勢いです。
来年以降さらに増えるかもしれません。
安全に関する知識がないと、遠くない未来に痛ましい事故が起きる可能性が高まります。
冬山登山やサーフィンなど、なんの知識もなければ危ない行為でも、しっかりした装備や知識があれば安全に楽しむことができます。
見た目だけで、オンネトーは危ない、とは思わないで。
ぜひこの記事を参考にして、自分の命は自分で守ってください。
体重70キロ前後の人間の経験ですので、それより重い方、機材を多く背負っている方は、この記事よりさらに慎重に!
危険を感じたら即撤退!これを徹底して下さい。
遠くから来てるとチャンスを逃したくない気持ちは分かりますが、命を失くしてはなんの意味もありません。
ぜひ次の機会を作ってもう一度チャレンジして下さい。
ガイドも神ではありませんので、氷を厚くする事はできません。
ガイドが無理と言ったら絶対に従って下さい。
あなたの命を守るためです。
逆にガイドが大丈夫と言ったらそれは大丈夫。
危なく見える場所でもガイドの指示に従えば貴重な経験をする事ができるでしょう。
規律をもってオンネトーの結氷を楽しんで!
【なお、この記事の通り行動して事故にあったとしても、私の方で責任は負えませんので、各々自己の責任で行動してください。】