構造材と吸音材だけで作る安価な防音室
どの程度静かになる?
そんなに厚くない構造材と吸音材で適当に作っても、20dbくらい減衰します
すごく静かになる感じがしますが、周囲が静かだと漏れてるのがうっすら聞こえます
音の特性(耳の特性?)的にそういうものですが、そんなんでも環境はだいぶ変わります
作る前に調べておきたいのが床の耐荷重です
大体の木造建築は180㎏/㎡以上と定められています
床全体の耐荷重で基本は考えますので、広い部屋ならばその分耐荷重が高いようです(天井の梁が広い部屋ほど頑丈なように、床も同様)
歩いただけでたわむような古い建築物の場合は注意が必要です
鉄筋コンクリートとかなら気にしなくても大丈夫ですが、鉛だの石膏ボードだのをフルに使ったゴージャスな防音室を考えてるなら一度調べた方が良いかも知れません
使用する構造材(壁・天井・床)は?
音は貫通すると共に反射するものです
ですので、一に遮音、二に吸音が必要になります
遮音を担う構造材はなんでも良いと思うのですが、たわみトラブルが多い為、硬い木材が良いようです
また厚みの3乗でたわみづらくなっていくので、単純に厚ければ厚いほど構造材として優れていると考える事もできます
OSBが叩いた時の音の響きがにぶい(多分響きづらい?)上に、結構強度もある板なのでオススメですが、そこはホームセンターで適当に叩いたり持ったりしてご自身で確かめてみてください
OSBは簡単に言えば、木材のかけらを集めて固めた、接着剤の塊です(接着剤の塊(過言?)なので頑丈ですし、気密性も高いです。逆に言えば隙間は無いのでしっかり換気口を作る必要があります)
一般的にはラワン合板が重くて硬くて良いらしいです
重いほど振動しづらくなり、それはつまり音の貫通量が減るという事ですので、遮音材として考えるなら重さも大事です
材質毎のおおまかな差(厚みでも大きく変わります)
購入した構造材で箱を作ればどんなに薄い壁でも、最低でも10dbは減衰します
一番薄いベニヤで6db程度の減衰ですが、薄すぎると壁が作れないので、壁と天井を作れる時点で最低でも10dbは減衰するという事ですね
ちなみに段ボールでも3dbも減衰できる事から、10db程度は余裕だというのがお分かりいただけると思います
吸音材の役割
次は箱の内側に吸音材を貼っていきましょう
音の直進性はかなり高いので、吸音材を簡単に貫通してしまい、あまり音を減衰しません
しかし吸音材が無いと反響が強くなり、反響が強いと隙間から音が漏れます(船の伝声管に近い現象です。厳密には違いますが)
換気口を作らない訳にもいかないので吸音はしっかりしておいた方が良いです
収録音源への影響
吸音をしないと強烈なリバーブがかかった感じになるので、録音した音声のできが悪くなります
マイクを覆うようなリフレクションフィルタを用意して、吸音材でも取り切れない反響音を低減させると更に良いらしいです
ただし自分の声が確認できない程に吸音すると色々と問題が生じるので、動かせる反射材を用意して自分の声をモニターできるようにすると良いかも知れません(マイクから遅延無しでヘッドフォンに自分の声を流せるならそれが一番ですが)
軽い余談
ここまですれば最低でも20dbは音が減衰しています
普通に喋ってる声も真夜中+電子ノイズや換気扇の音とかが無い状態じゃないと聞こえないくらいです
カクテルパーティー効果なんてものもありますが、人間の耳はそんなに万能ではないので、小さな音が鳴っているだけで音が聞き取れなくなります
昼間なら小さく歌った程度の音ならわからない程になるかも知れません
箱を二重にする提案
世の中にはもっと凝った作りの防音室もありますし、あえて面倒な作りにする必要性も薄いのですが、部屋の広さに余裕がある方には箱を二重にする提案をしたいです
板と吸音材で箱を二重にする程度でも30dbくらいは減衰できるでしょう(20db減らす箱を二つで40dbにはなりません。そもそも音のエネルギーは10db上がると十倍です)
その際は一つ目の箱と二つ目の箱との距離を40センチ開けると、空気層による減衰効果をしっかり受けられるそうです(これの逆が伝声管現象です)
利点は他の設計を用いるよりも効果と予算が予想しやすく、3x6材を4x8材に変えるなどで同じ感覚で作成できる点です
防音室+自室(自室の強化ポイント)
「防音室+自室」という考え方も大事で、自室自体の防音性能も高めて対策できれば更に良いです
その場合は「窓ガラス(貫通しやすい)と換気口(音漏れしやすい)」辺りを強化しましょう
音は水に伝わる波紋と同じです
水槽に薄いプラスチック(遮音材)を入れたら、波紋はかなり減衰されます(プラスチックを貫通して少し波紋は広がります)
しかし、水槽の壁にぶつかった波紋がプラスチックの裏に回り込んでしまうでしょう
その状態が音漏れと同じです
全部を遮音材で埋めるのがベストですが、換気口を完全に塞ぐ訳にはいかないので、吸音材を配した曲がりくねった空気の道を作り、音(波紋)を吸音しましょう
イメージとしては「堤防に置いてあるテトラポットで作った道」みたいな感じですね
音漏れ全てに言える事
どれだけ吸音しても、貫通する音があれば台無しです
同様に、遮音がよくても、音漏れがあれば台無しです
何故なら、いずれも音が抜けた先で拡散して広がっていくからです
どちらか大きい方の音を周囲は感知します(夜中は音が聞こえ、昼だと聞こえないのと同じ原理)のでバランス良く強化しましょう
一般には遮音の方が大事だと言われています(吸音と違って後付けの対策がしづらいからだと思います)ので、どの程度を目標とするかを考えて構造材の厚みや重さを選択すると良いでしょう
最後に
頑張っても限度はありますので、防音室の外でラジオとかテレビを鳴らしても収録した音声に支障がない程度を目指して、とりあえず作ってみるのをオススメします
狭い防音室にすれば2万円もかからずに20db減衰くらいは簡単にできますし、外で音を鳴らしておく事でよっぽどの大声でなければ掻き消せます
その出来栄えと労力を考えて、更なる防音室を作るのか、あるいはレンタルしたり買ったりするのか、を考えても良いと思います
何より、一度作った事がないとより良い物も作れませんしね……
個人的な経験から言うと、床を伝わる音漏れが結構酷かったので、一度そこを経験していただき、次の防音室に活かして欲しいと思います(私の場合の話なので、皆さんの場合はまた違った問題が出てくる可能性はあります。扉の音漏れ問題などもよく聞きますね)
床に関してはぶっちゃけ私も対策がわかってないのですが、床の下にグラスウールなどを敷くのが良いと言われてるようです
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