【ソン・ドンヨル】韓国史上最高の投手と呼ばれた右腕は母国でやり残した事はないとNPBにやってくると中日の守護神となり名古屋の太陽とファンに愛されたKBOから日本移籍のパイオニア

おはようございます。
日本で戦うために、海を渡ってきた
愛すべき助っ人たち。

今回は、ソン・ドンヨルを
取り上げていきます。

https://www.youtube.com/watch?v=76IeWX7_Axc

1963年、大韓民国、光州市(クァンジュし)で
旅館を営む両親のもとに生まれたソン・ドンヨルは
若い頃から野球の才能を発揮、
高校時代は全国大会で優勝を成し遂げると
1980年、軍事政権を倒すべく
民主化を目指して市民が立ち上がった
光州事件(クァンジュじけん)が勃発した際には
テロを鎮圧しようと街にやってきた
軍人に捕まり
銃剣をノド元に突きつけられましたが
野球好きだった戒厳軍の将校が
ソンと分かるや解放を命じたほどでした。

高麗大学校（コリョだいがっこう)に進学した右腕は
1年時に世界野球選手権大会で優勝すると
ヤンキースやブルージェイズからオファーが
あったほか、ドジャースの会長から
「フェルナンド・バレンズエラが
ロサンゼルスのメキシコ人コミュニティで
希望の星になったように貴方も
コリアンタウンの英雄になってください」と
契約金1億円で誘われましたが
これを拒否、韓国化粧品実業団に入部しました。

元々KBOリーグ、ヘテ・タイガースに
入団する予定でしたが
契約金が折り合わず、社会人野球に進んだソンは
地元ファンや母親からの希望もあり
改めてプロ入りを決意すると
そのずば抜けた才能と国民の期待を考慮して
韓国野球委員会は
「実業団入りした選手は2年間プロに入れない」という
規定を撤廃、特例としてシーズン後半から
出場可能となったのです。

1985年、ドラフト1位でヘテに入団し
後半戦から出場すると
7勝4敗8セーブという成績ながら
防御率は1.70で最優秀防御率のタイトルを
獲得、その後も投手三冠にシーズン8完封
のKBO年間記録を樹立するなど
「彼が投げたら見なくても結果がわかる」と
称されるほど、圧倒的な実力を見せつけました。

社会人野球に、一人メジャーリーグのエース
が混じっているような投球で4年連続最多奪三振や
3年連続最多勝、7年連続最優秀防御率と
韓国史上最高の投手と称された至宝は
1991年、日韓国交樹立25周年と
韓国プロ野球発足10周年を記念して
開催された日韓プロ野球スーパーゲームで来日、
「君はソン・ドンヨルを見たか？」と
特集記事が組まれるほど注目されたのです。

実際に対戦した落合は
「ストレートは評判通りの威力で
スライダーも素晴らしい。
韓国No.1というのはダテじゃないね」と語り、
各球団の関係者も「15勝はかたい」と
獲得を目論むと、中日やダイエーは
積極的に接触を図りましたが
ヘテ・タイガースサイドは
自国の英雄流出に拒絶反応を示しました。

1993年、クローザーに転向して10勝3敗31セーブ、
防御率0.78をマークした右腕は爆撃機と
恐れられるほど絶対的な守護神になると
「中日か巨人で投げてみたい」と
希望を口にしましたが、日本に行かせたくない
球団オーナーが一方的に残留を発表した事で
不信感を募らせていきます。

当時の様子を阪急ブレーブスから
サムスンライオンズに移籍した
金本誠吉（かなもとせいきち)は
「6年間で数え切れないほど
対戦しましたが相手がソンだと分かると
もう諦めの境地です。1試合に1点取れるかどうか
というピッチャーなんですから。
ストレートはすべて150キロ台で
スライダーは手元にきてスッと曲がる。
日本で郭泰源の高速スライダーにも
驚きましたが、彼はそれ以上でした。
しかもコントロールが抜群によく、牽制もうまい。
日本で先発すれば15勝以上、
抑えなら30セーブは間違いないでしょう」と
語りました。

1995年も109イニング投げて防御率0.49、33セーブで
2度目の最多セーブを獲得、KBO11年間で146勝40敗132セーブ
1698奪三振に防御率1.20という前人未到の成績を
残した右腕は
「もうここでプレーする意味がない
自分の力を日本で試したい。行かせてくれないなら
ユニフォームを脱ぐ」と強硬手段に出ると
マスコミやファンから
「もう十分だろ、夢をかなえてやれ」と
球団へ後押しの声が殺到した事から
「3年後に戻ってくる」条件付きで日本移籍が認められたのです。

韓国の至宝解禁の情報を得た巨人と中日は
何とか手に入れようと争奪戦を展開、
一時は巨人入りが決定的となりましたが
譲渡金3億円、年俸1億5千万円の2年契約を
提示した中日が大逆転で契約を勝ち取ると
身長184センチ、体重90キロの助っ人は
海を渡って来たのでした。