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チバユウスケ追悼行脚の記録④2024/7/28フジロック〜WEEKEND LOVERS'24"with you"

アラバキに行ったことで自分のダメージの大きさに改めて気付かされてからは、また喪失感と虚無感と隣り合わせの日々だった。記憶の謎解きをするために、またもやフジテレビNEXTを契約して放送されたアラバキのライブを見てみたけど、感じたことは現地でのそれと一緒だった。他に追悼の機会はないのだろうか、ずっとこのモヤモヤを抱え続けるのだろうか。そもそも追悼ってなんだろう。そんな思考の沼に陥りそうな頃、フジロックにWEEKEND LOVERSの出演が発表される。

フジロックには気づけばもう15年ほど通っているが、フジロックに行き始めたのもThe Birthday見たさがきっかけだった。はじめて行った20代後半のあの年、グリーンステージの3列目くらいで今にも泣き出しそうな焦燥しきったチバを見た。その年のフジのライブはアベフトシの訃報があった数日後「俺たちの親友だったアベフトシにささげます」という言葉で口火を切ったあまりにも切ないステージ。それが私が初めてフジロックでチバを見たときだった。いろんな音楽の楽しみ方を知った近年は、バースデイが出ていても遠目に眺めるくらいの年も増えた。それでもいつも気にはしていて「おっ元気でやってんね!また一段と老けたね!」と生存確認する場所でもあった。最後の出演となった、邦楽アーティストのみの出演となった2021年コロナ禍の異例なフジロックでは、とにかく楽しそうに音を鳴らし、悦びをにじませるように歌う姿を見た。休養が発表された後も、また苗場で会えると、都合よく思っていたのだ。チバ自身もとてもフジロックを楽しんでいたし、大事にしていたように受け取っていた。そんなフジで今度はWEEKEND LOVERSときましたか。行くことは決まっている。が、これは見ても大丈夫だろうか、また処理しきれない感情を増すことにならないだろうか…と怖くなった。けど「WEELEND LOVERS 2024”with you”」、そうwith youと題されたタイトルで、出演者はLOSALIOS,The Birthdayとだけ書かれている。アラバキのときはたしかThe Birthdayというクレジットはなかったはずだ。なにか、全く違ったライブを見せてくれるんじゃないか、そう思うと胸が高なった。

渋谷某所のパーティーも行ったりした。


フジロックの前、7/10チバの誕生日には「サイダー」のMVが公開された。このMVがその日に公開される、そのストーリーがもう。もう!この文章を書いている今、チバのことを思い出してふと泣けてしまうことはほとんどなくなったけど、「サイダー」のあの絵たちとひずんだ静かな歌声を思い出すとやっぱり涙腺が刺激される。あのサイダーの泡は、私もたくさん受け取ってきたんだから。推し方はあまりわからないし、どんなネタをやっていたかすらもう思い出せないけど、鉄拳を一生推したいと思う。

人生たのしもう!


そうして迎えた、フジロック。手っ取り早くWEEKEND LOVERSがどうだったかというと、超安直ストレートに最高だった。お涙ちょうだいにすら感じてしまうほど湿っぽく感じたアラバキに比べ、ここにいるみんなで、たぶんそこらへんにいるアイツも交えて盛り上がろうぜ!という、底抜けに明るいパーティーに感じた。冒頭、まだ誰もいないステージを目前にして流されたWEEKEND LOVERSのテーマで聞くチバの声にはやっぱりグッときてしまったけど、初手に登場したLOSALIOSの演奏はどこまでも痛快で、The Birthdayのメンバーを迎え入れて投じた「CISCO」は全身全霊、あの頃の細胞が蘇るような感覚のまま手を挙げて叫んだ。そして、ボーカリストのいなくなったがバースデイが「The Birthdayです。」と名乗ってはじまったライブは、残された者たちの愛で成り立っていてとてもとても温かかった。フジケンが短いフレーズを叫ぶ「I SAW THE LIGHT」、一番をハルキが、二番をキュウが歌った「サイダー」。どちらもチバがいなくなってから、今年の4月に発表された彼らの最新作であり、最後の作品なのだろうか。それをライブで聞けた。しかもメンバーたちだけの歌と演奏で、ということだけでさみしさと愛おしさでいっぱいになる。なんせ、メンバーの中で遥かに若い末っ子ポジションで、インタビューなどの際にもいつもモジモジモゴモゴ(言い過ぎ)していた印象のあのハルキがリードボーカルを取り、本人も底はかとないさみしさを垣間見せながらも泣いている観客をいたわり、MCで感謝の思いを伝えたり笑いを誘ったりしている。このことには、ライブ後に会った友人と会うなり、「ねえ、ハルキが!立派だった!!感心しちゃったわよ!!あのハルキが!!大きくなって…泣!!」とお母さん化してしまった。

3人で3曲演奏した後は、2人のゲストボーカルが迎え入れられた。ムードが断ち切られてしまわないかと不安になったものの、その感情はすぐに吹き飛んだ。この日のゲストたちの在り方は、想像したものとは色が違った。まず「ハレルヤ」のイントロが鳴って登場したのはTHA BLUE HARBのBOSSだ。オーディエンスは私と同じくHIPHOPに明るい人は多くなかっただろう。正直最初は「ラッパー風情の兄ちゃんが登場したけどどうなるのさコレ」という感じだったし、チバとの関係性もよく知らない。けど、歌のカバーではなくオリジナルのリリックが紡がれていることに気づくと一語一句のフレーズを逃したくないと思うほどに惹きつけられた。「今日は誰かのバースデー Happy Birthday to you!」という、誰もにシンプルにぶっ刺さるフレーズが繰り返され、この曲のあたたかなメロディと相まってとても綺麗。その後に登場したのはYONCEだった。Suchmosはデビューした頃、わりと気にして追っていたときもあり、彼らの曲もYONCEのキャラクターもある程度知ってはいたが、このステージを見た後に調べるまで、彼が最初にバンドを組んでコピーしたのがバースデイの「アリシア」で、チバを敬愛していたというエピソードは知らなかった。いつもステージ上ではスカした兄ちゃん的印象のあるYONCEが、少し緊張していそうに、なんか少し照れくさそうに、ちょっと誇らしげに、そしてさみしそうだけど楽しそうに全力で「ローリン」のボーカルを取っている。これは無条件に推せる!愛せる!そんな姿を見ながらこちらも全力で体を揺らしているうちにライブは終幕した。

疾走した1時間のロックンロールパーティー。気がつけばステージバックは、今回のWEEKEND LOVERS2024のキービジュアルになっている手を広げたモノクロのチバの姿になっていた。生身のヤツはやっぱりここにはいない。ライブ後には寄り添って泣き合う人たちを見かけた。でも私は、少しだけ眉をひそめ、少しだけ口をへの字にしながらも笑っていたと思う。喪失感はもちろん消えないけど、それ以上にチバと過ごしてきた時間をこれからも忘れたくないと思った。”with you”ってこういうことだったんだ。まだまだ一緒にいる。パーティーは続く。WEEKEND LOVERSはそんなことを表現していたように思う。

少し気持ちの区切りがつけられる気がした。4月の終わりから持ち続けたモヤモヤを昇華するように、降りだした苗場の涙雨を浴びながらビールをあおった。笑っていた。ビールがうまくて、晴れやかに笑っていた。

ハイネケンは泡無しにかぎるね


以下セトリ
WEEKEND LOVERSのテーマ音源

LOSALIOS/
HAE
Hit Man
SICK
IQ69
CISCO(The Birthdayセッション)

The Birthday/
月光
I SAW THE RIGHT
サイダー
ハレルヤfeat.BOSS(THA BLUE HARB)
ローリンfeat.YONCE(Suchmos,Hedigan’s)






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