The Alternative | A Play for Ireland (03102019THU)
by Patrick and Oisín Kearney
台風が近づいていたので空席も目立ったが、来なかった人は後悔したほうがいいと思うくらい面白かったし、考えさせられた。
今年度に入って3回目の観劇だったが、今までで一番はきはきセリフが話され、訛りも少なかったためとても理解しやすかった。
あらすじ
What if Ireland was still part of the United Kingdom? What if Home Rule had passed? What if there was no War of Independence? No Civil War? No partition? What if the island had only one soccer team?
The year is 2019 and it is the eve of the Referendum. British Prime Minister Ursula Lysaght is returning to her hometown of Dublin to convince voters to Remain. With the threat of chaos in the streets, and personal conflict behind the scenes, the final debate is set to begin at BBC Dublin: Should Ireland leave the UK?
(from: https://www.limetreetheatre.ie/show/the-alternative-a-play-for-ireland/)
*国歌斉唱
始まるとともに「国歌斉唱ですみなさんご起立願います。」とのアナウンス。きょろきょろしながらも客席の半分くらいが立ち上がった。そこで流れ始めたのはイギリス国歌。みんな笑いながら座っていく。そう、アイルランドという”国”が存在しない世界の話だから。
*ジージーいう照明
2幕では直っていたが、基本の照明になった時にジージーいうのが気になった。何人かは上を見上げていた。あれは古めの照明を使うときに高校でもよく鳴っていた音だなあと懐かしく感じた。オレンジの優しい光が付くとともにジージー鳴るんだよなあと。
*Brexitのパロディのような作品
明らかにBrexitを批判して笑いをとる(日本語が出てこないがディスのような?)ことが多々あった。
閲覧者の質問「もしアイルランドが独立したらEUはどうするつもりですか?脱退しますか?そのままステイしますか?」
アイルランド代表者「抜けるわけがない。抜けて何の得があるんだ!」
ここで大きな笑いが起きていた。時事ネタを挟んでくるのは面白いなあと改めて感じた。
このほかにも、通貨はどうするのか、イギリスに頼らない経済はどうやったら達成できるのかなどの質問に答え合っていた。
*シリアスとコメディが行ったり来たり
舞台の2階部分ではたいていシリアスなシーン(パラレルワールドが見えるという娘と薬で治したい父親の会話など)が起こり、CICOで1階部分に切り替わるとBBCでイギリス首相とアイルランド国家代表の討論番組(コメディ)に切り替わる。場合によっては両方が同時進行で起こるため、心が忙しかったが臨場感を得られた。
*映像と舞台の融合
今回の舞台には大きなスクリーンがあって、BBC放送のシーンなどでは本当にカメラに映されたテレビ映像としてスクリーンに1階舞台が映し出されていてとても面白かった。2階でその放送を見ているというようなシーンなどでも、どういう映像を見ているかが分かるので、感情などがより伝わってきた。
*アイルランドの歴史を作り替える精密さというか、こだわりというか。
スクリーンに「アイルランドを知らない君のために簡単に紹介しよう!」のような画面が現れて、アイルランドがどこにあるか、今までの歴史、著名な人物などが紹介された。特にアイルランドの著名人がBritishとして紹介されるシーンで大きな笑いが起きていた。
*客に事前に質問用紙を渡して読ませる
客の何人かに事前に紙を渡していたようで、客席からの質問に両代表が答えるシーンでは本当に客席の照明もついて、何人かが読むように促されたセリフ(質問)を読んでいて、客も受け身じゃないんだというinvolvedされた感じに引き込まれた。私たちが決めるんだというような空気感を作り出していた(正直私にアイルランドイギリス参政権はないから客観視というか部外者感はあったけれど、大事な自分の住む国の投票にいけないというような在日外国人の気持ちを疑似体験した気がした)。
*客席に役者を紛れ込ませる
これはたまに見る手だが、今回は思った以上に客席後方に忍び込ませていた。彼は両代表に怒りをぶつけてその場から去るという役割で、客の近くで魅せるというのもあって臨場感を出していた。これも私たちを受け身から脱させようとしている感じがした。良かった。
*声が通る
生まれつきの声が通る通らないというのはとても演劇に深くかかわってくると思っている。今回の舞台ではイギリス首相以外の役の人の声がとても通る声でとても聞きやすかった。イギリス首相役の方も声量はあるので余裕で聞こえてきたけどねもちろん。
*話の分かりやすさ
役者のはきはきした話し方とわりかしストレートなストーリーのおかげで私も内容が分かって笑うことが出来た。これは先週2つの舞台だと出来なかったことだから嬉しかった。
*CO中に動く人
COされてからもストップモーションがしやすい体勢(なのかな?)になるまで動き続ける人もいて、ストップし始める時間の差が少し気になった。そういう風にしているのか、そういうものなのか、分からないけれど。
*リアルさ
幕間でもみんなが話していたが、本当にあり得たかもしれないというリアルさがあった。本当にここがイギリスだったかもしれないと思える一見シリアスな雰囲気の中にふんだんに笑いが織り込まれていた。
*客席の興奮
幕間の客席の興奮がすごかった。みんな一気に話し出すし、自分だったら独立かそのままかどちらに入れるかなどの討論も始まっていて、客全員が本当に引き込まれていたのを感じた。
*パラレルワールドが見える子の話
父親が、「あいつの話によるとパラレルワールドではアイルランドは独立しているらしい。まあ何故か北の一部はイギリスのままらしいがな」
と言って大きな笑いを起こしていた。
*RTÉじゃなくてBBC
これは友達に言われるまで気づかなかったのだけど、もちろん討論の場になっていたダブリンもイギリスなのでアイルランド放送RTÉではなくBBCDublinという放送会社(?)が主催の討論放送になっていた。ここは本当に気づかなかった。ここにも”アイルランドじゃないから”要素が盛り込まれているとは思わなかった。
*香港
この舞台を見て一番に思い浮かべたのは現在の香港だった。この舞台の設定は明日が独立かそのままかが決まる投票の日で、外では独立賛成派と反対派の暴動も起きていて、警察も出動し、けが人も続出していた。
これは本当に今香港の現状として流れてくるニュースと酷似していた。
香港のことは本当に最近のことだから時事ネタとして織り込んだわけではないと思うけれど、本当に似たようなことがこの世界で起きているからこそ、リアルさがあった。
もう一回見たい。もう一回考えたい。独立したらどうなるかをそれぞれの目線で熱弁するアイルランド代表とイギリス首相が素晴らしかった。
舞台が終わってロビーに出ると、反対か賛成かのアンケートが行われていて自分でシールが張れるようになっていた。
舞台後まで客を引き込ませてくれる良い舞台だった。