カナレットとヴェネツィアの輝き SOMPO美術館 2024-10-19
カナレットとヴェネツィアの輝き
名前の通りヴェネツィアの風景画ばかりなので、あの水の都が好きであればたまらないと思う。
カナレットを中心として、画家によってどういうところにこだわって描いているのか異なるので、昨年の「ゴッホと静物画」のように同じようなモチーフを画家や異なる年代で並べて比較しながら見られるとよかったんだけれど、展覧会的にはひたすらカナレットが続いた後に他の画家、となるので見比べるというのはなかなか難しい。
展示会の趣旨的にはカナレットがメインディッシュということだろう。
気に入った作品
58 「ヴェネツィア、カナル・グランデ」リチャード・パークス・ボニントン
展覧会の構成のおかげとも言えるんだけれど、第五章から年代が経過して、緻密な描写から絵画らしい表現に変わっていく。
その最初に出てくる絵がこれで、キャンバスは小さいがざっくりとしたディティールで生き生きした色使いで描きだしているのが目を引いた。
中央に大聖堂のようなドームがあるんだけれど、実物はこんなに真っ白じゃないだろうというくらいに、空の光を受けて青白く塗られているのが面白い。
59 「溜息橋」 ウィリアム・エティ
ウェブサイトの紹介で見かけて、陰影のコントラストの良さが気になっていた作品。しかし画像だとトーン調整されているので、実物だと案外好みでないということも珍しくはない。
実物を観てみると、描きこまれた情報量の多さに気が付く。
誰もいない静まり返った夜に死体と思われる人を運び出している様子や、それを見ているかのような象徴的な星が際立つ。
物語性の強い作品だったのが初見から印象が変わって面白かった。
55 「カプリッチョ:セント・ポール大聖堂とヴェネツィアの運河」 ウィリアム・マーロー
実在の建造物だけれど、それを自由に組み合わせた空想画のことをイタリア語でカプリッチョという、というような説明がある。
僕が考えた理想の景色、みたいなこだわりが見られる。
カナレットのようなきっちりと描く人でも、実際の風景よりも絵画的によくするためにアレンジを加えているようが、この作品ではファンタジー的とも言えるような配置とスケール感があるのが格好良い。
23 「昇天祭、モーロ河岸に戻るブチン トーロ」 カナレット
カナレットがないじゃないかということで、挙げるのであればこれ。
まばゆい反射光を点々と光の粒のように表現しているのが他の実直な作品群と異なる。
光の表現を自由に描こうとすることは印象派の特徴でもあるんだけれど、この作品はそれより100年以上前というのも興味深いところだ。