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高い声
「もしもし」
田中さんは友人のSさんから掛かってきた妙に高い電話の声に驚いた。なぜなら、その友人はいつも、どちらかというと低い声で話す人だったからだ。
数日後、その友人が亡くなった。田中さんは先日の電話の声がひどく気になった。なにか関係があるのではないかと。
彼は数年前にあった別の電話のことを思い出した。その相手も数日後に亡くなっている。その人物は、盗みを働いたり、暴言を吐いたり、人を殴ったりと、誰からも憎まれているような人だった。そしてその時の電話の声は不自然に低かった。
それを思い出して、田中さんはほっとしたという。
「ああ、Sは天国に行けたんだな」
―― 了 ――