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夢で感じた重み

 夢を見ている時、人は身体的な実感をどれくらい感じるのだろうか。脳内で起きているだけだから身体実感なんかあるわけがないとお思いかもしれないが、そうでもないらしい。少なくとも私の場合はそれを感じることが多い。
 たとえば地を蹴って空を飛んでいるときの浮遊感。美女と抱き合っているときの肉感。走って逃げなければならないのに足がなかなか前に進まない時の足の重さ。それ以外にも尿意を感じながらトイレを探すシーンにはよく出くわすが、これは現実に起きている感覚なので除外すべきかもしれない。

 先日、私はこんな夢を見た。昼間、太陽が高く昇っている。一直線に高速道路が走っている山の中をその道路脇を歩いている。西の方角のどこかに用があるようだ。なぜか私は交通機関を使わずに徒歩で移動することを選んだらしい。汗をかきながら真っ直ぐな道をひたすら歩いている。
 太陽が真上に差し掛かった。そのまま高速道路に沿って歩けばいいはずなのに私はなぜか脇道へと入って行った。上り坂を一歩一歩歩いていると、なんだか急に背中が重くなった。何かがのしかかっているようだ。人間か、それともある種の獣か。肩に手が掛かっている気がする。もしかすると前脚かもしれない。私はそれを確かめたいと思いながらも振り返らずにそのまま足を運んだ。背中はどんどん重くなる。
 しばらくすると私は墓地のような所に入り込んでいた。草が生い茂る中に墓石と思われる四角い塊が頭を覗かせている。あたりの空気がずっしりと重い。空は晴れているのに重い。私は周りを見渡して気が付いた。墓石かと思ったものは慰霊碑だったのだ。ならばここには魂が――誰かはわからない、その数が多いか少ないかもわからない魂が――霊が眠っているのだろうか。では、私の背中に乗っているのは何なのだ。眠れずにいる霊なのか。きっとそうだ。そうに違いない。夢の中で私はそう確信した。そして、霊に取り憑かれるときの実感、その時ずっしりと感じる重さというのはこういうものなのだと、その時はじめて納得した。

―― 了 ――

余談

 この夢を見たのはいつだったか、私ははっきりと覚えている。2023年2月13日深夜。その日は丁度「怪談好きが集まるBAR REQUIEM 第参章」の御前田次郎が出演した回が放送される予定だった。私はCSチャンネル「エンタメ〜テレ」に加入していないのでリアルタイムで観ることは出来なかったが自分が出演するのだから当然気になっていた。
 だが、何時ごろからか分からないが、私はうたた寝をしてしまい、その中で見たのがこの話に書いた夢である。背中にのし掛かられ、嫌な重みを感じていたところで目が覚めた。時計を見ると1時30分。「ああ、こんな時間。寝てしまった」と思うと同時に「REQUIEM」のことを思い出した。今まさに放送されている。その最中さなかにこんな夢を見た。これは偶然じゃないかも。と一瞬思い、すぐに否定した。私はそういうのをあまり信じないタチなのだ。とは言え、番組と夢との関連をいつまでも覚えているということは多少なりとも信じているのかもしれない。


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