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怪談奇談

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御前田次郎が書いた怪談および不思議な話をまとめています。ほとんどが創作ですが、実際にあった事象が紛れ込んでいるかもしれません。
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#怪談

白い素肌のままでいて

 ある二十代の女性、佳奈さんから、友人にまつわるこんな話を伺った。友人の名前は美咲さんと…

御前田次郎
4週間前
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二枚でどうだ

 Aさんは戦慄した。今夜も霊が出た。そこで年長者の次郎さんに相談したところ、お札を貼れば…

御前田次郎
1か月前

オートフェーダー

 レコーディングエンジニアのMさんの話。  あるアイドル系のボーカリストのミキシングを請…

御前田次郎
2か月前

年越しは紅白

 その年の大晦日は随分と寒かった。なのに私はその年に限って、近所の神社に初詣に出掛けよう…

御前田次郎
1か月前
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ごめんね

 百合子さんが母を亡くして間もなく、夜中に母の霊が現れるようになった。悲しげな顔で「ごめ…

御前田次郎
2か月前
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高い声

「もしもし」  田中さんは友人のSさんから掛かってきた妙に高い電話の声に驚いた。なぜなら…

御前田次郎
2か月前
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真夜中の車列

 私は、10年以上前、短い間ではあるが警備員をやっていたことがある。警備員というとどんな業務を想像するだろう。夜間、ビルの各フロアーを巡回する、そんな業務だろうか。いかにも怪異現象に遭遇しそうな状況であるが、残念ながら私が経験したのはそれではない。交通誘導および雑踏の警備。警備業法の第二条第二号に該当するので〈二号警備〉とも言われる業務である。すなわち、人や車両の混雑する場所で安全な通行を確保する業務だ。  特に多かったのは道路工事の現場だ。工事によって道路が塞がっているとき

ここでキスして

 私がまだ二十代の頃、不思議な女に出会った。夜中の十一時くらいだろうか。飲屋店街から少し…

御前田次郎
8か月前
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俺が退去した後の部屋が事故物件のはずはないのだが(仮)

 私は以前、神奈川県の東京寄り、新宿から三、四十分の所に住んでいた。1Kの賃貸マンション…

御前田次郎
4か月前
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居眠り

 ある日の夕方、私はお寺での朗読会を聴きに行っていた。古い文学作品にはお寺の雰囲気がよく…

御前田次郎
6か月前
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抜きますか

 田中さんという五十代の男性の話である。  彼は一年前に今の職場に転職した。人間関係はお…

御前田次郎
8か月前
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いきる

 そいつが姿を見せるようになったのは三ヶ月ほど前だろうか。ワンルームの我が家、仕事の帰り…

御前田次郎
9か月前
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押したのは誰

 三十代の男性、渡辺さんの友人の話。その友人、気功や古武術などの東洋の身体技法に興味があ…

御前田次郎
9か月前
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夢で感じた重み

 夢を見ている時、人は身体的な実感をどれくらい感じるのだろうか。脳内で起きているだけだから身体実感なんかあるわけがないとお思いかもしれないが、そうでもないらしい。少なくとも私の場合はそれを感じることが多い。  たとえば地を蹴って空を飛んでいるときの浮遊感。美女と抱き合っているときの肉感。走って逃げなければならないのに足がなかなか前に進まない時の足の重さ。それ以外にも尿意を感じながらトイレを探すシーンにはよく出くわすが、これは現実に起きている感覚なので除外すべきかもしれない。