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怪談奇談

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御前田次郎が書いた怪談および不思議な話をまとめています。ほとんどが創作ですが、実際にあった事象が紛れ込んでいるかもしれません。
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記事一覧

浮気の代償

 日本人なら、お寺や神社でお参りをすることは日常的にあるだろう。馴染みの寺社があったり、…

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それも殺人

 俺、何度も殺されてるんだよね。  SNSとか色んな投稿サイトとかYouTubeのコメントとか…

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真夜中の車列

 私は、10年以上前、短い間ではあるが警備員をやっていたことがある。警備員というとどんな…

御前田次郎
1か月前
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ここでキスして

 私がまだ二十代の頃、不思議な女に出会った。夜中の十一時くらいだろうか。飲屋店街から少し…

御前田次郎
5か月前
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俺が退去した後の部屋が事故物件のはずはないのだが(仮)

 私は以前、神奈川県の東京寄り、新宿から三、四十分の所に住んでいた。1Kの賃貸マンション…

御前田次郎
1か月前
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居眠り

 ある日の夕方、私はお寺での朗読会を聴きに行っていた。古い文学作品にはお寺の雰囲気がよく…

御前田次郎
3か月前
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抜きますか

 田中さんという五十代の男性の話である。  彼は一年前に今の職場に転職した。人間関係はおおむね良好だが、一人だけ、佐藤という厭な先輩がいた。先輩といっても歳は10歳下で、なにかと田中さんに突っかかる。田中さんが入社した初日、まだ仕事を教わっている最中に通りかかり「使えねぇな」とはっきり聞こえる声で呟いた。それ以降、毎日毎日〈使えない〉を証明するのが目的であるかのように、田中さんの粗を探しては叱りつける。あまりに理不尽な場合には反論することもあったが、度重なる叱責に田中さんの憎

いきる

 そいつが姿を見せるようになったのは三ヶ月ほど前だろうか。ワンルームの我が家、仕事の帰り…

御前田次郎
6か月前
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押したのは誰

 三十代の男性、渡辺さんの友人の話。その友人、気功や古武術などの東洋の身体技法に興味があ…

御前田次郎
6か月前
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夢で感じた重み

 夢を見ている時、人は身体的な実感をどれくらい感じるのだろうか。脳内で起きているだけだか…

御前田次郎
9か月前
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コーヒー豆の怪

 私は無類のコーヒー好きで、豆を自分で挽くのは勿論のこと、休日は生豆を買い出しに行って自…

御前田次郎
9か月前
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母に会えたら

 私には霊感がないらしい。そもそも霊感の厳密な定義など分かっていないのだが、霊を見たこと…

御前田次郎
11か月前
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クリスマスね

 年の瀬も迫った冬の夜、彼女と近所の公園を歩いていた。人もあまり通らない小さな公園にもか…

御前田次郎
11か月前
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会議卓は踊る

 この話は友人のHから聞いた話であるが、90パーセント嘘ではないかと私は思っている。なぜなら彼はお調子者を絵に描いたような人物で、私は彼の景気のいい出まかせに何度騙されたか分からないほどなのである。それでもたいへん興味深い話だったので、かなり脚色しつつもここに紹介することにする。  Hが勤めるIT企業の会議での出来事である。プロジェクトの方向性を決める大事な会議であるが、なんとも重苦しい空気が漂っている。部長――実際はカタカナの長い肩書きらしいが忘れてしまったのでこうしてお