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怪談奇談

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御前田次郎が書いた怪談および不思議な話をまとめています。ほとんどが創作ですが、実際にあった事象が紛れ込んでいるかもしれません。
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記事一覧

白い素肌のままでいて

 ある二十代の女性、佳奈さんから、友人にまつわるこんな話を伺った。友人の名前は美咲さんと…

御前田次郎
4週間前
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二枚でどうだ

 Aさんは戦慄した。今夜も霊が出た。そこで年長者の次郎さんに相談したところ、お札を貼れば…

御前田次郎
1か月前

オートフェーダー

 レコーディングエンジニアのMさんの話。  あるアイドル系のボーカリストのミキシングを請…

御前田次郎
2か月前

年越しは紅白

 その年の大晦日は随分と寒かった。なのに私はその年に限って、近所の神社に初詣に出掛けよう…

御前田次郎
1か月前
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ごめんね

 百合子さんが母を亡くして間もなく、夜中に母の霊が現れるようになった。悲しげな顔で「ごめ…

御前田次郎
2か月前
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高い声

「もしもし」  田中さんは友人のSさんから掛かってきた妙に高い電話の声に驚いた。なぜなら…

御前田次郎
2か月前
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浮気の代償

 日本人なら、お寺や神社でお参りをすることは日常的にあるだろう。馴染みの寺社があったり、目的によって特定の寺社に詣でたりすることもあるかもしれない。  私にも馴染みの神社がある。新宿の街中に小さな祠を構えており、プロ・アマチュア問わず芸能に関わる人たちが多く参拝に訪れるところだ。私は、初詣はもちろん、舞台公演の前には成功を祈って手を合わせに出向くことにしている。  私の場合、神頼みの対象はこの神社に限っている。日本人は古くから多神信仰が根付いているとされ、旅先で寺社を見つける

それも殺人

 俺、何度も殺されてるんだよね。  SNSとか色んな投稿サイトとかYouTubeのコメントとか…

御前田次郎
3か月前
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真夜中の車列

 私は、10年以上前、短い間ではあるが警備員をやっていたことがある。警備員というとどんな…

御前田次郎
4か月前
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ここでキスして

 私がまだ二十代の頃、不思議な女に出会った。夜中の十一時くらいだろうか。飲屋店街から少し…

御前田次郎
8か月前
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俺が退去した後の部屋が事故物件のはずはないのだが(仮)

 私は以前、神奈川県の東京寄り、新宿から三、四十分の所に住んでいた。1Kの賃貸マンション…

御前田次郎
4か月前
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居眠り

 ある日の夕方、私はお寺での朗読会を聴きに行っていた。古い文学作品にはお寺の雰囲気がよく…

御前田次郎
6か月前
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抜きますか

 田中さんという五十代の男性の話である。  彼は一年前に今の職場に転職した。人間関係はお…

御前田次郎
8か月前
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いきる

 そいつが姿を見せるようになったのは三ヶ月ほど前だろうか。ワンルームの我が家、仕事の帰り道、エレベーター、電車の窓、あらゆる所に現れては険しい顔で何かを叫んでいた。  叫んでいるといっても声は聞こえず、何を言っているのかも分からない。表情から(ああ叫んでいるんだな)と思ったに過ぎない。煩くもないので気にせず放っておいた。  それが、しばらくすると口の動きから言葉が推測できるようになった。 「俺は生きている!」  そう言っているようだった。おそらくそれしか言っていなかった。 「