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うどんのように飲み込んで

初めて胃カメラを飲んだときのこと。
注意:これを読んで胃カメラ嫌いになっても当方は一切責任を持たないのでそのつもりで。

30代前半のとき、胃の調子が悪かったので近くの病院に行った。
最初から胃カメラを飲むつもりだったので、胃の中は空っぽにしておいた。果たして、医者は胃カメラで実施することに決めた。

胃カメラを飲む前に、喉を麻痺させる薬やら、筋肉を弛緩させるというメチャクチャ痛い注射やら打たれてから運命の部屋に行く。

胃カメラを操作するのは女性の医者だった。
横にされ、何かをくわえさせられる。
そのころには少し頭がボーッとしていてされるがままだった。
部屋が暗くなり、妙に明るい光を感じた。胃カメラの先端だった。
それが口の中に入ってくる。
ちょっと予想以上に太いんだなあ、と思った。女医が言う。

「さあ、うどんのように飲み込んで」

え?うどん?うどんより遥かに太いぞ!
こんなもの飲める訳ないでしょう、と言いたかったが、
当然のことながら、猿ぐつわ状態の私は喋れるわけがない。
ウーウー言うだけである。

無理やり入ってきた!
ウ・ウゲー・ウゲゲゲゲエエエエ。

「はい、じょうず、じょうず」と女医が言う。

飲んでない、飲んでない、私は飲んでない!
あんたが無理矢理に捻じ込んでるんだ!
声にならない悲鳴を上げる。
抵抗しようとする私を看護婦が抑えつける。
筋肉が弛緩している私にはどうすることもできない。
苦しい・苦しい、気が遠くなりそうだ。
食道と喉は必死で胃カメラを吐き出そうともがく。
女医は相変わらず、無責任なことを言い続けている。

「はい、じょうず、じょうず。もうすぐ終わりますからねえ」

もうすぐ終わると聞いて、マジで助かったと思った。
だが嘘だった。
それからも地獄の苦しみは続く。
もう限界だ。私は死ぬ。
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…………………
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……

遠くで声が聞こえた。

「はい、終わりましたよ~」

終わった?何が?
あ、そうか私は胃カメラを飲んだんだっけ。
生きてるのか?

悪夢の時間は終わった。喉が痛い。
胃の具合が悪い。病院へ来る前よりも悪いぞ。

結局、何ともないと言われた。
喜ぶべきなのだろうが、素直に喜べなかった。
何ともないことを調べるためにあんなに苦しまなければいけないのか。
なんという矛盾。

もう二度と飲むまいと誓った私だった。

ところが、当時の会社の定期検診では35歳から胃カメラでの検診を強要される。
だから、飲みたくない胃カメラを毎年飲んだ。
ただ、麻酔を射ってくれるので、それが効きさえすれば苦しくない。
(効かないときもあるが)

胃カメラ・・・これほどおいしくない飲み物もないな。

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