【イベレポ】通称・リンモチ小笹会長に話を聞いてみたら、人的資本経営で最も大事なことに気づけた話。
2022年6月23日に、株式会社リンクアンドモチベーションの代表取締役会長を務める小笹氏をゲストに迎え、モチベーションや採用、経営についてお話いただく経営者座談会を開催しました。
本記事では採用や経営に悩みを抱えている方に向けて、イベントの内容を一部抜粋し、お届けします。
■登壇者
■タイムスケジュール
イベントの流れは画像の通りです。
■みなさまからの質問タイム
参加者には事前にアンケートを配布し、小笹氏に質問したい事項をヒアリングしました。質問タイムでは、アンケートでの回答が多かった質問をメインに、経営者同士で話題になることとイベント中にあがった質問にお答えいただきました。
組織・人事について
平野(以下、敬称略):
人を採用する時にはどのようなことを重視していますか?
小笹(以下、敬称略):
採用で妥協するとそのあと長く苦労します。そういう意味では、優秀な人材を如何にして惹きつけるかということが大事です。
新卒採用に関して言えば、優秀な人材は優秀な人材に惹かれると考え、当社の優秀なエースを採用担当に任命し、学生と接点を持つ機会を作っています。毎年1万人から1万2,000人ほどの学生と出会っています。それほど新卒採用を重視しているんです。
会社の力が100点だとすると、中途採用では大体90から100点の人材が採用できます。それが新卒採用だと、経営者の意気込みやお金の賭け方次第で500点や800点にまで成長する人材を採用することができます。だから、新卒採用には力を入れて、時間もかけています。
実際に優秀な新卒を採用したところ、中途採用のエンジニアたちを3年ぐらいで抜いてしまうこともありました。
平野:
採用後の人材開発はどのような点を意識していますか?
小笹:
採用と人材開発は全く別のものだと考えられていることもありますが、私たちはどちらも同線上にあると考えています。先ほど、採用では優秀な人材を惹きつけるためのアクションを起こしていると話しましたが、入社後も働いて成果を出してもらうという意味では、如何に会社に惹きつけ続けられるかが肝になります。
そこで重視しているのが従業員エンゲージメントです。これは経営において最も大事な観点だとも思っています。
平野:
従業員の離職についてはどのような考えをお持ちですか?
小笹:
私は従業員を投資家であると捉えています。創業初期は「従業員は家族だ」くらいの気持ちを持っていましたが、それでは退職した時に自分自身のメンタルが保てません。特に期待をかけている人材が辞めていく時のショックは言葉で言い表せないほどのものでした。
そのような経験を重ねて、ある年から従業員は投資家だという考え方に切り替えました。会社に資金を出している訳ではないのですが、自らの人生の時間と能力を会社に投資してくれていると考えています。
従業員は投資家だと捉えられれば、退職も投資先の変更だと受け取ることができます。その時は、選び続けてもらえるようにもっといい会社にしようと前向きに思えるようになりましたね。従業員は投資家であるというのは自分の中で大事なフレーズです。
平野:
マネージャーの採用や人材教育についてはどのようなお考えをお持ちですか?
小笹:
マネージャーを任せるうえで重要な観点は「結節点の役割を担えるか」だと考えています。結節点とは情報の受発信を行うポジションを指します。現場の意見を経営陣に届けたり、マネージャー同士で意見交換をしたり、などの役割です。
そのうえで、結節点に求めるポイントが4つあります。「情報の収集」「情報の発信」そして「父性」と「母性」です。
前者2つについては、そのままの意味でコミュニケーション能力や情報の編集能力など、そういったことも含めてできるかどうかがポイントです。誤解を招く表現かもしれませんが、父性は判断力と行動力、母性はモチベーション喚起を含む支援力をイメージしています。当社ではこの4つのポイントに関してサーベイを用いて図っています。
私がよく見てきたのはスキルが高いことや経験値があることを判断基準に人を選び、マネージャーを任せて失敗してしまう企業です。そうすると、経営陣の考えが浸透しなかったり、現場で起きていることが経営陣まで伝わってこなかったりと、マネジメントがうまく機能しませんから。マネージャーを社内で育てるにしても社外から採用するにしても、結節点の役割を担えるかが大事です。
モチベーションについて
平野:
コロナ禍でリモートワークを実施する企業が増えましたが、リモートワーク下で従業員のモチベーションを維持するために実施されていることはありますか?
小笹:
リモートワークによって、以前よりも孤独感や不安感を感じ、メンタルに不調を来す人が増えましたよね。
リモートワークに限らず当社ではモチベーションを維持するための施策として、3カ月を1年とした独自のカレンダーを導入しています。3か月ごとに休暇が3日間取得できたり、人事評価も賞与の支払いも3カ月ごとに行います。
評価のすり合わせは簡単になりますし、例え上手くいかない3か月でも、すぐに新しいスタートが来るため、気持ちの切り替えをして、前向きにまた頑張ることができるんです。
平野:
小笹さん自身はどのようなことをモチベーションに仕事をしていますか?
小笹:
創業当初は、「早く上場する」ことが何よりのモチベーションになっていました。クライアントの業種や規模が幅広く、大手もあれば中小ベンチャーまでお付き合いしていました。自分たちが支援する会社が上場しているのであれば、同じ視点を持てるようにいち早く上場したいと思っていたんです。その結果、2007年には東証2部、翌2008年に東証1部に上場しました。
現在は、「自分が現役のうちに会社の時価総額を1兆円にする」というのがモチベーションです。
平野:
小笹さんはモチベーションを維持するためにどのようなことをされていますか。
小笹:
モチベーションは常に上下するものです。そのため、下がった時にどうするのかが重要なのです。私はモチベーションが下がった時は視点を変えるために2つのマジックを使っています。時間のマジックと空間のマジックです。
時間のマジックでは、先の目標を見つめる時と直近の様子を見る時に分けて、異なる時間軸から物事を考えるようにしています。具体的には、6年単位で掲げている目標と一日一行書いている日記を使っています。
誰しも目標があって未達の場合にはストレスを感じるものです。そういう時は、一行日記を見て、着実に進んでいることを認識するんです。反対に目の前のことで何か悩みがあれば、今度は6年単位のページに飛びます。そうやって一日単位の時間軸と、長い時間軸を見て自分をコントロールしているのです。
空間のマジックは、広い空間と狭い空間を使い物事の見方を変える方法です。私は家にも会社にも地球儀を置いています。その地球儀を眺めていると、自分がぶつかっている壁が小さい話だと感じられます。
反対に視界を狭める時には目の前にあるものだけを見ます。空間のマジックを従業員への指導に使うこともあるんです。例えば「僕はこの業界を変えたいんです」と、大きいことを言っているが目の前の顧客から契約が取れていない従業員がいたとします。そういう時には鉛筆1本を渡して、「これを売るためにどうしたらいいかを考えよう」と伝えています。
■小笹氏と基幹技術「モチベーションエンジニアリング」について
小笹氏は新卒社員としてリクルート社に入社し、前半の7年間は人事課で主に新卒の大量採用、従業員教育を行い、後半の7年間はリクルート社史上初のコンサルティングセクションである「組織人事コンサルティング室」を立ち上げ、責任者として過ごされました。
小笹氏は様々な業種や規模の企業の経営陣と関わる中で、彼らの最大の悩みが「従業員のモチベーションを如何に高めて組織の成果に結びつけるか」という点で一致していることに気が付きました。
しかし、当時の世の中にはビジネスパーソンのモチベーションを重点に置いたサービスはありませんでした。そこでモチベーションにフォーカスしたオンリーワンのコンサルティング会社として、株式会社リンクアンドモチベーションが設立されました。
小笹:
リンクアンドモチベーションでは、基幹技術である「モチベーションエンジニアリングによって組織と個人に変革の機会を提供し、意味のあふれる社会を実現する」をミッションに掲げて事業を展開しています。
モチベーションエンジニアリングには軸となる2つの考えがあります。1つは「人間は完全合理的な経済人ではなく限定合理的な感情人である」という人間観。従業員に成果を出してほしいのであれば、金銭報酬は大前提の話ですが、それに加えて、感情報酬も十分に与えることが大事だということです。
例えば承認欲求を満たすことだったり、成長実感を持てることだったり、あるいは良好な人間関係ということだったり。そのような環境を作ることが大事なのです。
行動経済学の第一人者であるダニエル・カーネマンの「人は勘定ではなく感情で判断する」というフレーズがありますがまさにこのことです。金銭報酬だけでは今後うまく経営ができませんよ、と多くの経営者に啓発しています。
もう1つが「組織は要素還元できない協働システムである」という組織観。左の絵をご覧ください。これを見た時、A、B、C、D、Eさんの5人のチームだと数えるのが普通だろうと思います。
次に右の絵では、メンバー同士が繋がっています。これは協力や連携を行う関係を表しており、5人ではなくて、5×4÷2=10本の関係性の持つチームであるというような見方をします。これが協働システムの見方です。
5人のチームと10本の関係性を持つチームでは、後者の方が意思疎通や合意形成に2倍の時間がかかるということです。このような考え方でよりリアルな組織の動きを捉えています。
組織内で問題が起こった時、人は特定の個人に原因を求めがちです。しかし、組織の問題は個人ではなく人と人の間(=関係性)に生じると私たちは考えています。どことどこの関係性を再度繋ぎ合わせれば組織が活性化するのかを見極めて、実行する、「問題は人ではなく間にあり」という考え方を啓発しています。
モチベーションエンジニアリングは、この2つの考えを軸に企業・組織の問題をあぶりだす「診断」と診断によって明らかになった問題を解決する技術や方法論を提供する「変革」のサイクルを生み出し、企業の「従業員エンゲージメント」向上を実現しています。
人的資本経営の中で一番大事なのは、従業員のエンゲージメントです。労働力人口の減少が叫ばれる中、従業員のエンゲージメントを高めて生産性を高めていくことがこれまで以上の意味を持つことになるでしょう。そのためのノウハウが当社にはありますので、頼っていただけたら、お力になりますよ。
もっとリンクアンドモチベーション社や小笹氏のことのことを知りたいと感じた方は下記のサイトを参考にしてください。
▼リンクアンドモチベーションHP
▼モチベーションクラウド詳細
▼小笹氏のインタビュー
■最後に
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
今回は、”モチベーション”を切り口に「組織づくり」「個人づくり」「組織と個人のマッチング」を支援する株式会社リンクアンドモチベーションの小笹会長より、組織運営に関わる考え方や取り組みについて伺いました。
組織づくりに関して、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
株式会社オンリーストーリーは、決裁者マッチング支援SaaSの運営を通して、つながりを通した経営課題解決に取り組んでいます。
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