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~パークホテル東京の快進撃 3/5 自分たちにないものではなく、「あるもの」を探す

岡村 衡一郎

自分たちにないものではなく、「あるもの」を探す

 パークホテル東京の創業の原点探しは、運営会社である「芝パークホテル」の創業にまでさかのぼりました。
創業者は何を意図し、芝パークホテルをつくったのか。
そして、どのような経緯で、パークホテル東京をつくったのか。
2003年の開業にたどり着くまでに、役員の人たちにはどんな苦労があったのか。
後を継ぐ自分たちが原点から発展させていけるもの、いくべくものは、何なのか。

 創業の原点には、外国人バイヤー向けホテルとして「日本のホテル業界」草創期をリードしてきた先達の思いがありました。
パークホテル東京がデザインホテルズに加盟したのには、ユニークさで勝とうとする狙いがありました。

 先達は何を大切にしてきたのか、自分たちは何を大切に引き継いできたのか、ひいては「自分たちに『あるもの』は何なのか」を改めて教えてくれたのは、林義明総支配人(当時)でした。
これらの創業の原点への振り返りは、自分たちにとって当たり前である「サービスの背景にある強み」について、改めて確認しようという機運へと発展していきます。

 パークホテル東京のスタッフたちは、「ひと月に数回は外国人客から『ワンダフル』と絶賛される」サービスを提供していたのです。
例えば、自分たちが当たり前にやっていて、外国人客から喜ばれるのは、バーで出すウイスキーの丸い氷です。
丸い氷は、 溶けにくく、飲みやすく、見た目も美しい。
外国ではなかなか出合えません。
水墨画の展示販売や、餅つき、和太鼓などのイベントも、好評でした。

 相手が感動してくれたできごとを棚卸ししてみると、当たり前に やってきたことの中に、お客さまにとっての価値が見えてきます。
これまで北米系の外国人のお客さまに向けて対応してきたため、「外国人客をもてなす」という技能と経験があったのです。

 強みに気づいたメンバーたちは、自分たちの強みを商品で形にする方法を模索し始めます。
お客さまに予想以上に喜ばれた事柄を振り返りながら、その中心に「どんな価値があるのか」を考えてみることにしたのです。
1日にして数百万円分の「墨汁で描いた絵画」が売れたのは、外国人客が「日本の文化」の価値を認めてくれたからじゃないか。
また、丸い氷に日本人の繊細さを感じるように、相手の情緒に訴えるのが価値になるのではないか。
そのような議論を繰り返しながら、見えてきたキーワードが 「日本の美意識」です。

 ただ、ここまでは行き着きましたが、みんなが「それは面白い」とわくわくする最後の一つのピースがはまりません。
「日本の美意識」というキー ワードが見え、進むべき道がなんとなく見えてきたものの、それをどう「売り」に変え、「もうけ」につなげて いけばいいのか。
あと一歩のアイデアがなかなか見つかりません。

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