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仕事スイッチで求人難を乗り越える

岡村 衡一郎

 人が集まらない。サービス業で顕著になりつつある問題だ。
特にホテル業の場合、転職によるキャリアアップが前提にあるからなおのこと頭が痛い。

人に集まってもらえるよう仕事そのものではなく、制度の優位性を打ち出す求人広告も目立ってきている。勤務地が選べます、週に3日休めます、勤務時間が短くてもOKなど。しかし本来は仕事そのものの優位性で集まってもらい働きがいや成長実感を持ち長く勤める人が多い方がいい。

 パークホテル東京は、業界トップクラスで転職率が低い。
岐阜の歯科医「あいデンタルクリニック」も数少ない歯科衛生士とコンビニエンスストアより多い歯医者のバランスの中で、働きたいと応募してくる人が後を絶たない。両社ともに他社ほど、求人に労力をかけることなく自分たちのサービスを磨いていくことに注力している。

 両社に共通するのは仕事に対する面白味だ。自分たちの仕事の価値がお客さまとの間で認められることに対しての報酬があるから人は続くし集まるのだ。ホテルのフロント業務は一般的には宿泊客に対しての応対であるが、パークホテルではそうではない。歯科衛生士はサポート業務が一般的であるが、あいデンタルクリニックでは主役である。

 自分たちが目指す姿に対して仕事の領域が幅広く取れる環境が仕事をアグレシッブにし仕事そのものでの質差が働きたい人をひきつけている。
パークホテル東京では、訪れた人が日本の良さ、日本の美意識に気づけるのが一番の価値。

 価値をつくり出すための創意工夫はどのポジションからでも歓迎される。
あいデンタルクリニックは、お客さまが80歳になったとき20本の歯で健康な生活を送れるようにするのがゴール。
目指す上でドクターと歯科衛生士の役割の境界線は限りなく低く最低限度のものしかない。

 陸上選手に例えれば、ステイン・ボルトのように短距離、中距離、幅跳び、ハードル競争などいくつもの競技で活躍できる選手になれるような仕事がそこにある。

 100mだけを早く走るのが仕事ではないのだ。
競技を見に来てくれている人に1人でも多くに感動を与えるのがミッションだと言える。

 転職のきっかけはマンネリか人間関係のどちらかであるケースが多い。
これ以上成長できないと感じるとき、または居づらいと思うときに辞めていく。前者は仕事が限定的なゆえに起こる感情、後者は目指すものが共有されていないことと、互いの仕事が分からないから真に協力できないから起こる問題だ。

 人が集まらない問題は表面的な対処だけでは解決に至らない。
処遇や制度をよくしても、仕事のマンネリと人間関係という二つの課題がクリアにならなければ、部分で仕事をする人にとって好都合の制度になり、前を向こうとする人の後押しにはならないだろう。

 目指すものと現実を埋めるスペースが仕事を魅力的にする。一人一人の役割を大きく取る環境が面白味になる。
数値目標を掲げお互いに役割目標へまい進させ信賞必罰でモチベーションを維持させようとするのは、ひと昔前の組織原理である。


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岡村衡一郎

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