【コラム】弓師と弓具店の仕事
みなさん、弓具店には行くでしょうか?
竹弓のことを話す機会はあるでしょうか?
もしある場合には、こんなことを聞いたことがあるかもしれません。
「昔に比べて、竹弓を扱えるお店が少なくなってきたからね〜」
「○○さんは張り込みをちゃんとやってから、お店に送ってきてくれるから」
「この弓は裏反りが高い状態で送られてくるから、扱いが大変」
はい、どうしてこんなことになってるでしょうか?
我々はその理由を知らなければなりません。
読み解いていきましょう。
結論から書きます。
時代と共に弓師とお店の役割が変わってきたから、です。
以前の役割分担
極端にすると以下のようになります。
弓師・・・弓を打つ
村師・・・村を取って仕上げる
お店・・・弓を販売して、メンテナンスする
射手・・・射こんで、メンテナンスして、村仕上げをする
弓師・・・弓を打って、仕上げる人
お店・・・弓を販売して、メンテナンスする人
射手・・・射こむ
村師の不在
以前は弓師は弓を打って、籘放しのままお店に卸していました。
だいたいのお店には村師がいましたから、村師が荒村を取りました。
村師が籘放しの状態から販売できる形にして、お店で状態を管理していました。狂ってきたら矯正して、村を取って、それで収まってきたら、籘巻きをして、握り革を巻いて、それをお客さんに販売をします。
今はどうでしょうか?
弓師の元で裏反りが落ち着くまで張り込みを行います。
弓師の元で荒村まで取って、形を整えます。(場合によっては籐巻きまで行います。)
お店はというと、さすがに送られたばかりの弓はお客さんには販売できませんから、張り込みは行います。
その中で形がおかしくなれば矯正を行います。それを販売しているのです。
そう、お店に村師がいなくなった結果、形が変わる理由が分からずに竹弓を扱えるお店が少なくなっていったと推察するのです。
弓師の役割
前項では現代では弓師が荒村を取る、と記述しました。
弓師が村師の役割の一部を担っている形となっているのです。
それ自体は否定はしません。
我々は弓師は弓のことなら全部分かる、くらいのイメージを持ってますから、村を取ることはできる、と考えております。
時代とともに、弓を打つだけだった弓師が、弓を削って仕上げる村師を含んだ呼称になっていったのです。
残りの村師の仕事はどこにいった?
目にする機会が少ないのが正直なところだと思います。
弓師も荒村ができるので、どのように削れば弓の形が変わるのか、は把握しています。
分かってはいるのに、弓師のところで村取りで調整する、という機会が圧倒的に少ないのです。
竹弓を購入して、形がおかしいな、と感じました。
あなたはお店に持っていくか、先生に相談してアドバイスを貰うでしょう。
矯正器をここに掛けなさい、弦輪を逆にしなさい、といったものです。
それで形が良くなれば、そこで終わってしまいます。
矯正できなれければ、その弓を使わなくなることだってあるでしょう。
そう、、、弓師に見せるという選択肢が思い浮かばないまま。
お店でできるのが理想ですが、できません。
弓師に送ればやってもらえるのに、やりません。
結論、村師の担っていた仕事を見る機会は訪れません。
村師の役割、どうなるの?
お店で村取りをしない以上、弓師がやるしかありません。
弓師に村取りの仕事がない以上、技術を向上させる機会が増えません。
射手の引き方に応じて竹弓に生じる癖は変わってきます。それを村取りするのですから、やればやるほど技術が蓄積されます。
蓄積の機会がないということは衰退していく一方になります。
火入れはできるけど、、、
竹弓の矯正には火入れも効果的です。
曲がりを矯正するには火入れが一番です。
お店に卸される前に形を整えてきますから、お店での火入れの機会はあまりないでしょう。
引いてるうちに竹の癖が出てきて、お店で火入れしてもらうくらいしか機会はやってきません。
これも弓師の仕事が増えてきた弊害でしょうか。
なんでもやってから卸すから、お店が経験値を蓄積する機会が減っていくことになります。
お店が先か、職人が先か
合成弓の普及によって竹弓の需要が減ってしまい、扱う竹弓の数が減った結果としてお店の仕事が減っていった可能性はあります。
調整も少なくなり、村師も仕事がなくなります。
お店で扱えないので弓師のところである程度の調整が求められると、村取りと仕上げの仕事が増えます。竹弓の生産数が減ります。手間が増えて、生産数が減ると竹弓の価格も高騰します。お客さんは躊躇します。ループですね。
また、合成弓の普及だと竹弓を購入しなくても長い期間使えるので、「竹弓の購入はまだいいか」という思いになります。需要が減れば、供給が減っていくのは市場の流れですよね。職人が減ってるのは事実ですし。。。
竹弓の供給
弓右衛門の個人的な疑問です。
竹弓の需要と供給のバランスってどうなってるのでしょうか?
人気のある銘は需要が多いですが、需要がない銘もあるのは事実です。(市場としては当然です。)
在庫をたくさん抱えているお店、定期的に弓を仕入れているお店、即売会で弓を並べる弓師、、、売れる竹弓があれば、売れ残る竹弓もあるはずです。
腐るものではないので、10年経過しようが竹弓としての機能はあります。
それでも同じ強さの竹弓は仕入れますし、新しい弓ほど売れていく傾向もあると思います。
そうすると、在庫としては残っていきます。しかし、経年劣化で価格は安くなりません。
お店の在庫が増えるだけで弓師への注文は変わらないのか、
在庫が極力さばけてから注文をするのか、結論はでないままです。
竹弓の文化が続くためには射手が支えるしかないですね!頑張りましょう!
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