『これ1つで大丈夫 はじめての竹弓』
はじめに
本記事は以下のマガジンの内容を1つにまとめたものになります。
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竹弓とは?
竹弓とは、竹と木を組合せて接着剤で張り合わせた和弓になります。
昨今では多くの竹弓に合成接着剤が使われています。
合成接着剤の竹弓にはカーボンシートが内蔵されたものもあります。
伝統的にニベ(=鹿の皮から作った接着剤)を使って作った弓はニベ弓と呼ばれます。
どの竹弓も良い点・悪い点があります。
長さは7尺3寸(221cm)が基準になります。
上下に1寸ずつ伸ばしたり、短くしたりします。
竹弓の構造
竹弓は内竹(うちだけ)・芯材・外竹(とだけ)の3層構造になります。
芯材を外竹と内竹で挟むことで竹弓ができています。
内竹・・・・弦側に近い竹です
外竹・・・・弦側から一番遠い竹です。
芯材・・・内竹と外竹の間に挟まれています。
関板、弭、接着剤も竹弓を構成する要素になります。
3枚打ちの弓はどんなもの?
分かりやすいように簡単な構造から紹介します。外竹と内竹の間にある芯材は1枚の木だけです。3枚しかありませんので、3枚打ちの弓といいます。
駆け出しの頃は簡単な構造の弓から打ち始めます。
竹弓は芯材の作りを工夫することで反発力を高めています。
1枚の木材・竹を使う時点で、反発力が劣っています。弓を厚くすれば解決するかと思いきや、弱い弓しかできません。厚い木材は思ったよりも曲がりません。折れます。中打ちを2枚にして4枚打ちにすれば、強い弓もできます。安価に打てますが、構造が簡単な分、成りが変わりやすい(=矯正しやすい)、弓力が落ちやすい、などのデメリットがあります。
芯材とヒゴの組み合わせ方
側木とヒゴを用いて芯材を作って、それを使うと反発力のある弓になります。
ヒゴは短冊状の焦がした竹と木材を並べて組み合わせて作ります。
★組み合わせ方の一例
このヒゴを側木が見えるように、内竹と外竹で挟みます。
これが竹弓の基本的な構造になります。
ヒゴの組み合わせ方やカーボン素材の使用によって構成は若干変化しますが、基本は変わりません。
ヒゴ
側木に挟まれた弓の芯をヒゴといいます。側木を除いた中の3枚を三本芯や三本ヒゴといいます。数に決まりはなく、2本の弓もあれば、5本の弓もあります。普通の弓では竹をそのまま使用しますが、上等の弓はヒゴ竹を1枚1枚片面から火で焼きます。両面から焼く火度を「両火焦がし」といい、最上等のヒゴになります。火をいれるほど水分が抜けて軽くなります。火入れされたヒゴが炭化して黒く見えます。炭化したヒゴほど反発力がでます。
火入れ具合の判断基準の1つとして、弭側から重なりを見ます。
何本の芯なのか、どれくらい火入れされているのか、がわかります。
また、ヒゴは全て竹であったり、竹と木を組み合わせたり、工夫がされています。
側木
側木に適した木材は”黄櫨”とされています。
堅くて弾性に優れており、古くから使用されています。
黄櫨には稀に木肌に杢(もく)が出ることがあります。縄目杢・縮み杢・鳥眼杢・鶉杢等ありますが、模様をイメージしてください。
杢があると値段があがる弓もあります。
黄櫨が減少しており、入手が難しくなってきているという話を聞きます。
また、黃櫨以外には黒檀・紫檀・鉄刀木といった唐木や、カエデ・桜・ウルシなども木材が使用されることがあります。
外竹
弓の外側を構成している竹になります。弓の全長=外竹の長さになります。
外竹には真竹が使われることが多いです。
反発力を高めるために火をいれて水分を飛ばします。
しかし、焦がしすぎると外竹の繊維が切れてしまい、笄のリスクが高くなります。
内竹
弓の内側を構成している竹になります。
内竹には反発力のある真竹を使用します。内竹は弓の反発力に大きく影響します。様々な加工方法があり、弓に使われます。
・白竹のままのもの
・内側に火を入れて焦がしたもの
・室で燻した煤竹にしたもの
・紋竹・胡麻竹等(鑑賞目的)
竹弓の節
竹弓には13個の節があります。加工前の芽が出ている部分になります。
内竹側に6個、外竹側に7個の節があります。ボコッとしてるので触ってみればわかります。
節の名前
13箇所全てに名前がついています。
全部は紹介しませんが、これだけは覚えてほしい、という節をピックアップします。
姫反り節・・内竹の上から1番目の節
上成り節・・内竹の上から2番目の節
目付け節・・内竹の上から3番目の節
握り節・・・内竹の上から4番目の節
下成り節・・内竹の上から5番目の節
小反り節・・内竹の上から6番目の節
つまり内竹の節は全部覚えてましょう、ということです。
これらは張り方や矯正の仕方の部分でよく出てくるワードになります。
関板
内竹が弓から外れないないためのストッパーの役割をしています。
弓は引いた時に内竹が縮みます。縮んだ竹は復元する力が強くため、その時に内竹が外れる可能性があるためです。
弦音にも影響をするようで、弦と関板が近い・離れていること、大きい・小さい、など要因があります。
弓弭
弦をかける役割はあります。
末弭(上側)はカラスの嘴、本弭(下側)はウサギの鼻を模してると言われています。
また、烏帽子弭と呼ばれる形もあります。
接着剤
これらを接着するため接着剤が使われています。
竹弓の素材の中で、張り合わせに使う接着剤も弓の性格を決める重要な要因です。現在の主流は合成接着剤でありますが、伝統的には弓独自に使われる膠(ニカワ)と呼ばれる鹿皮原料が使われておりニベといいます。ニベを使用しているものをニベ弓といいます。ニベ弓は非常にデリケートで、温度や湿度に影響されやすいため、梅雨から夏にかけての時期にはあまり適していません。
合成接着剤を使用した弓よりも手入れは難しいが引き味が柔らかい・寿命が長い、冴えが良いとされています。
竹弓の成り
成りと反り
どんな弓にも5つの成り場があります。
反ってるか、膨らんでる(成り)か、くらいのイメージをもってもらえればいいです。
上から"姫反り"、”上成り”、”胴”、”下成り”、”小反り”になります。
弓によって反りと成りの位置が変わります。
5カ所のそれぞれの反発力の強弱とバランスによってなりたち、
それぞれが弓の性能を引き出しています。
胴が長い、胴が強い、姫反りが深い、下成りが立っている、など特徴を捉えた表現をします。
各地の成り
江戸成り・尾州成り・紀州成り・京成り・薩摩成り等と呼ばれる産地ごとの特徴があります。(弓師によっても特徴があります。)
京弓(京都)
上成節と下成節を中心として湾曲しています。
京弓は引いて肩味を造る為に、ニベ調子といって、ちょうど最中のあんこの様に、ニベを入れてあります。
尾州弓(愛知)
京弓を標準として上成は五~六寸くらい下がり大成りといい、下成りは三寸くらい下に、上の姫反りが少なく、下の小反りが少ないことが目立っています。手下が強いです。
紀州弓(和歌山)
上成は京弓と同じで下成りは下に下がり、下の小反りは少なく目立っています。
加賀弓(石川)
上成は京弓より上にあり、下成りは紀州弓と同じで、つまり胴が長く目立っています。
薩摩弓(鹿児島)
上成下成が多く湾曲し、胴は特に強く姫反り下の小反りは特に目立っています。
小反りがキツいと弓は早く返ります。遠的には小反りがある方がいいですが、手の内が乱れやすくなります。
薩摩弓にはニベもちがありません。中ヒゴの作り方が違います。夏も冬を使えて、丈夫さが売り物の代わりに、調子が悪くて肩味が堅いです。
江戸弓(東京)
京弓を基準として、胴が長くなっています。胴が長い分、上成りと下成りが小さくなっています。
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