29:手作りのケーキ
※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。
その後もヨシノさんは本当に色々な話をしてくれた。
エミちゃんは本当に秘密主義な子で、ヨシノさんでも知らない事が多かった事。
ヨシノさんが病気になった時にわざわざ家まで来て色々とお世話をしてくれた事。
なのに、エミちゃんが病気になった時は、お礼にと思ってお世話に行ったのに、家に入れてくれなかった事。
職場に安否確認に行った時に、在籍無しって言われた理由。
エミちゃんが亡くなって、エミちゃんの元彼が頭を丸めてご両親に謝罪をしにいった事。
でもそれは、ヨシノさんがご実家の住所を間違えて伝えてしまっていた為、未遂に終わった事。
この期に及んで、誰一人お別れをさせて貰えてないのは、きっとお父さんが関係しているんだと思う、という事。
本当に色々と聞かせてくれた。
バーベキューがいつの間にか流れ解散になっていて、もう半分くらい人がいなくなってた事にすら気付かなかった。残る人は残って飲んでもいいよって事でシメをしなかった事も原因としてあるのかもしれない。
話が一息ついた時に、オレはヨシノさんに、自分とエミちゃんは同い年で誕生日が僅か3日違いで有る事、そして去年の誕生日を一緒にお祝いした事を言った。
そしたら、ヨシノさんは「ケーキ作ってくれたでしょ?」と聞いてきた。
実は前に、コガくんにも言われた事がある。
「のあは、エミちゃんの手作りのケーキを貰ったんだろ?羨ましいよ」と。
ところがオレは、ケーキはエミちゃんが昔パティシエをしていたお店のケーキを買ってきてくれたんだと思っていた。
コガくんに言われるまで、それが手作りである可能性すら考えてなかった。
どうかわからない、とヨシノさんに伝えると、ヨシノさんは「その時の写真とかある?」と聞いてきた。
当日撮った写真を見せた。
オレはエミちゃんがくれたケーキを、エミちゃんはオレが用意したサプライズの品を持って、エミちゃんの自撮りで撮ったツーショット写真だ。
お互いに写真が好きだった事もあって、200枚以上もある一緒に撮った写真の中で5本の指に入るお気に入りの写真だ。
その写真に写るケーキの特徴を見たヨシノさんは、うん、これは彼女の手作りだよ、と断言した。
手作りのケーキを貰っていた事は嬉しかったが、同時に凄く申し訳ない気分になった。
その、たった一度きり一緒に祝えた誕生日から、来週でもう1年になる。
あと、ヨシノさんはこんなニュアンスの事も言っていた。
"私"の後が"あなた"なんだね、と。
ヨシノさんがエミちゃんと親友ではなくなった後に、エミちゃんと親友になったのが、オレという意味らしかった。
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