忘れられない夢のお話。
昔見た夢。
忘れられない夢。
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2人で螺旋階段を駆け下りていた。
出会ったばかりの女の子と一緒にいたんだ。
名前は分からないし、顔も思い出せない。
でも年齢も背丈もわたしと同じくらいで、
肩に傷があって、ベージュ色の服を着ていたってことは
ふわっと浮かんでくる。
出会うことが決まっていたような人。
やっと出逢えた、一生に一人の人。
そんなことを真剣に思えちゃう人。
一緒にいられることが嬉しくて、
幸せが込み上げてくる。
無機質な白い建物、
誰もいない場所、
地下へ続く螺旋階段。
外は見えないけど、夜っていう認識があった。
夢の中のわたしたちは
その日、地下のどこかで咲く
桜の存在を知っていて、ひたすら走っていた。
女子が学校の廊下できゃっきゃはしゃぐ様な感じ。
手を繋いで、声に出して笑っていた。
お願いだから間に合ってほしい!って
強く強く願ってた。
どうやらその桜が咲く時間は決まっているらしかった。
地下についてしばらく走り続けた頃、
吹き抜けの中庭の様な場所に辿り着いた。
立ち止まるわたし達。
そこで見つけた1本の大きな大きな桜の木。
満開の大きな大きな桜の木。
雪の様に散る桜の花びら。
雪の日の様にしんとした夜。
あまりの感動に堪えきれずに号泣していた。
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今でもずっと定期的に思い出す。
目覚めた時、ふわふわした余韻の中で
いつもの部屋の、いつものベッドの上にいる確かな現実。
どちらが夢なのか混乱した。
起きてからも涙が止まらなかった。
夢なのに、あまりにも現実すぎた。
彼女は一体誰で、
あの場所は何処で、
あの桜は何だったのか。
そして何よりも知りたいのは、
あの時、私が夢の中で泣きながら
彼女に聞いた質問の答え。
「夜桜の花言葉って、なに?」
彼女は何て言ったんだろう。
何も言わなかったのかもしれない。
そこだけが今もずっと思い出せない。