6歳でもわかる「借金」親が教えるべきお金の事

「借金」は人生を壊すかもしれません。子どもには「借金」の怖さをしっかりと教えておくべきでしょう。そのためには、まずあなたが借金の怖さを知っておくべきです。

新型コロナ禍で働けない人の収入減につけ込む詐欺が増えています。例えば、いま急増している「ツケ払い・後払い現金化」という手法。

「ツケ払い・後払い現金化」とは、二束三文にしかならないような価値のないネットのアプリケーションなどを購入させ、その際に、利用者に代金の一部を「キャッシュバック」というかたちで振り込みます。アプリケーションの代金は「ツケ払い」になっていて、次の給料日に給料の中から全額を支払います。

例えば、6万円の商品を給料日に払う「ツケ払い」で買って、キャッシュバックを3万円受け取ります。そして給料日には、代金の6万円を支払うのです。一見すると、商品を買ってその代金を支払い、キャッシュバックももらうという普通の商取引に見えますが、買う商品が二束三文にしかならないアプリケーションですから、これは商取引を"隠れ蓑"に使った悪徳金融にすぎません。

キャッシュバックで3万円をもらって、給料日に6万円を支払うのですから、3万円の借金に対する1カ月の利子が3万円ということで、これを年利に換算すると、なんと1200%の不当な貸付ということになります。

法令を遵守した「悪徳」ではない借金でも、生活苦の中でお金を借りて返せずに、破綻に追い込まれていく人は増えています。今はカードで手軽にお金を借りることができるので、少し困っても「キャッシングすればいいや」と思いがち。けれど、これも場合によっては、とんでもなく高い利息を払うことになります。

例えば、キャッシング枠が30万円の人が、金利18%で枠いっぱいに30万円のお金を借りたとします。リボ払いで元金を毎月1万円ずつ返していくと30回で返済は終わりますが、この間支払う金利は6万8778円。30万円借りただけなのに、払い終えるまでになんと約7万円の利息を支払わなくてはならないのです。

しかも、借り入れが1回で終わらない人も多い。リボ払いだと、返済しながらでも常に枠いっぱいのお金が借りられるからです。前述の30万円を元金1万円ずつ1年返済すれば元金は12万円減ります。すると、返済したぶんの12万円分までは新たに借金ができますから、ここで12万円借りると、返済までの利息はさらに増え、返済し終わるまでに最終的に利息だけで11万2266円を返さなくてはならなくなります。

これだけで終わればいいですが、さらに返済中にお金を借りると、利息もますます増えていくことになり、どんなに払ってもお金を払い終えない「万年借金」に陥ることになります。

お金を借りたら返さなくてはいけない。返せないと、恐ろしい結果になる可能性があることに変わりはありません。そのことを、子どもにもしっかり教えておかなくてはいけません。ではどのように教えればいいのでしょうか? ケーススタディを見ていきましょう。

6歳の直也くんは、チョコレートが大好物。幼稚園から帰ってくると、必ずお母さんに「チョコちょうだい」と一口大のチョコをもらいます。チョコは1日5個ずつもらえることになっているからです。

ある日直也くんは、チョコが5個ではちょっと物足りないらしく、「あと1個ちょうだい」とお母さんにねだりました。そんな時にはお母さんは、「今日の分はもうあげたでしょう。だからまた明日」と言うようにしています。決まった数だけしかもらえないということを教えたかったからです。

そんなある日、その日に限ってよっぽどチョコが欲しかったのか、直也くんがこんなことを言いました。

「明日の分を1個、今日ちょうだい。明日は4個でいいから」

そう言うのでお母さんは、チョコを1個余計にあげた次の日は、1個減らすことにしました。ところが次の日に4個あげると、昨日1個増やしたのを忘れてしまったのか、また5個欲しがります。

そこでお母さんはカレンダーに、その日にあげたチョコの数を●印で書くことにしました。そのカレンダーを見せながら、「ほら、昨日1個多くあげたから、今日は1個減らすよ」と説明しました。

それを見せられて納得したのか、直也くんは4個で我慢しました。カレンダーに●印をつけていくのはいいのですが、しばらくすると、チョコが6個の日が何度か続きました。

「ナオちゃん、これだとチョコを1個も食べられない日がでてくるよ」お母さんが言うと、「いいよ、その時は我慢するから」と、直也くん。

お母さんはちょっと悩みました。この子には、どんどん「前借り」をしてしまう悪い習慣がついてしまったのではないかと。そこで、ルールを変えました。チョコレートを「前借り」したら、そのぶんに利子をつけようと考えたのです。

「ナオちゃん、今日からお母さんも、チョコを5個ずつ食べることにしたの。5個ずつだから、2人で10個だね。もし、ナオちゃんが6個食べたら、お母さんは4個で我慢しなくちゃならない。だから、お母さんが我慢するぶん、次の日はお母さんがたくさん食べるよ。我慢したぶん、お母さんに1個多く返してね」

小学校に上がる前ですが、実際に目の前にチョコを置いて説明すると、直也くんも仕組みがわかったようでした。

10個のチョコを、直也くんが6個、お母さんが4個だと、次の日は、これまでのルールだと、お母さんが6個、直也くんが4個になります。

ただ、新しいルールでは、お母さんが我慢したのでそのぶんお母さんのチョコが1個増えて、お母さんが7個、直也くんが3個になります。ルールがわかっていたはずの直也くんですが、これには大いに不満のようでした。

「今まで、6個の次の日は4個だったのに、なんで3個になっちゃうの?」

「お母さんだって5個食べたいのに、4個になっちゃうでしょう。だから、我慢するぶん次の日は1個多くもらえるから、6個ではなく7個になるの。10個のうち7個をお母さんがもらったら、直也は3個でしょう」

「えっ、なんで? よくわかんない」

お母さんは、紙に書いて説明しました。

「今日、お母さんが1個ナオちゃんにあげるでしょう。それで、次の日に1個返してもらうから、これで6個になるけれど、ここでもう1つ『昨日は我慢してくれてありがとう』というお礼の1個をナオちゃんがお母さんにくれなくてはいけないから、それでお母さんは7個になるのよ」

なんとなく釈然としない面持ちの直也くんを見て、お母さんは言いました。

「今日5個にしておけば、明日も5個食べられるよ。どうする?」

「でも、やっぱり6個食べたい。だから、明日は3個でいい」

「じゃあ、明日はお母さんに2個返してね」

次の日、直也くんはしょんぼりしていました。好きなチョコレートが3個しかもらえないからです。そこでお母さんが聞きました。

「昨日と今日で、ナオちゃんとお母さんのチョコがいくつずつになったか見てみようか」

紙に書いてみると、直也くんは昨日が6個で今日が3個なので合計9個。おかあさんは、昨日が4個で今日が7個なので合計11個。

「あれっ、お母さんの方が多い。ずるいよ!」

「ずるくないよ。お母さんは我慢して、ナオちゃんに自分のチョコを貸してあげたんだから、そのお礼に返してもらう時にチョコの数が多くなるんだよ。大人になったら、チョコじゃなくて他人からお金を借りることもあるけれど、そういう時には必ず利息をつけて返さなければいけないの。

そのぶん、自分のお金は減ってしまう。このチョコは、それと同じ。人から借りると、増えた気がして得した気持ちになるけど、実は自分の分は減ってるんだよ」

「わかんないよ、僕は子どもなんだから」

「わからないかもしれないけど、これだけは覚えておいた方がいい。人から借りたものには、返す時にお礼をつけなくてはいけないの」

次の日のことでした。直也くんがお母さんに言いました。

「今日は、僕が母さんに、チョコを貸してあげる。僕が4個で、お母さんが6個ね。そのかわり、明日は僕に7個ちょうだい。これでいいんだよね」

直也くんは、貸して増やすということを覚えたようです。幼い子どもに「利息」ということを教えるのは、かなり大変です。けれど、なんらかの方法で、人から借りたものは必ず返さなくてはいけないということと、借りたらお礼をつけて返さなくてはいけないということは、大人になる前にしっかりと教えておいた方がいいでしょう。

そうしたことが身についていないと、欲望のままにお金を借りる、我慢ができない大人になってしまうかもしれません。そして、借りたお金が返せずに借金だらけの人生になると、子どもは不幸になります。

子どもがもう少し大きくなって、実際に「お金を貸して」と言ってきたら、返済利息を書き込んだ借用書を用意してサインさせ、借りたお金よりもたくさんのお金を返させることをしてみましょう。

その場合、返済は月々にもらえるお小遣いの中から、もらえる額を減らすという方法で行うといいでしょう。それが頻繁に続くようなら、小遣いが借金で消えてしまうこともある。

もらえるはずだった小遣いが、予想した以上に減ってしまったり、もらえなくなったりしたら、子どもはお金を借りるということがどんなに損なのかがわかるし、安易に借りることの恐ろしさも理解するはずです。

たぶん大人になれば、誰もがさまざまなお金のトラブルに悩まされることでしょう。それは避けては通れないことかもしれません。

ただ、自分の手元にあるもので何とか我慢してやりくりするという習慣が身についていれば、トラブルに遭ってもそれほど被害も大きくなく、乗り越えていくことができるのではないでしょうか。

子どもには、お金を借りなくては生活できないような大人ではなく、できれば、人に貸せるくらいの余裕を持てる大人になってほしいものです。

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