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カスタムインイヤーモニター、そのこだわり
オンキヨー開発部 河村です。
今回は当社の製品紹介です。その製品は
カスタムインイヤーモニター!
通称カスタムIEMと呼んでおりますが、これ何でしょう?きっと皆さんも一度はテレビや音楽ライブで見ている方がほとんどだと思います。よく、ボーカルの方が耳につけていらっしゃるイヤフォンみたいなやつ、それです。
これ、何かというと、その人の耳型を取得し、耳にすっぽりハマる、オリジナルのイヤフォンです。これはアーティストさんが使うだけでなく、一般の方の利用が増えてきました。こちらを当社では販売しています。
耳型を取ってから作成しますので、ピタッとはまって遮音性抜群、唯一無二のあなただけのイヤフォンになります。いいでしょ。
当社のカスタムIEMは、ノーマルのモデルだけでなく、アニメコラボモデルとして、
- THE IDOLM@STER SERIES コラボモデル
- ぼっち・ざ・ろっく! コラボモデル
という人気のモデルも発売しています。(当社のアニメコラボ事業をご存じの方は、そんなん知ってるわい、ですね)
上記2モデルについては、実際にライブで声優さんたちが使っていただいていることもあり、ファンの方たちに好評です。今年のアイドルマスターのライブでは、ONKYOブースを作って、当社社員がグッズ販売と同時に、現場で耳型採取も行いましたので、現地に行かれた方は見られたかもしれません。
アイドルマスターで出演されている声優の小岩井ことりさんに、カスタムIEMの上記アイドルマスターコラボモデルを紹介いただきました。ぜひ、Youtube動画をご覧ください。
このカスタムIEMですが、カスタムIEM業界ではチョー有名なFitEarさんと一緒に作っており、品質も安心なモデルです。当社の秋葉原のショップである、「音アニ」で展示していますので、行く機会がある方はぜひ手に取ってご覧ください。
では、また次回、、、
ん、エンジニアの記事なのに、技術内容が全くない、ちゃんと技術の記事を書け、、、
、、、はい、ごめんなさい。怒られました。
では気を取り直して、そのカスタムIEMで使用している当社独自のドライバを紹介いたします。
マグネシウム
みなさんはマグネシウム、という金属はご存じでしょうか。中学校でMgという元素記号で覚えているかと思います。このマグネシウムですが、皆さんの生活の中でマグネシウム合金としてちょこちょこ活躍しています。(パソコンの筐体や車のホイール、ロードバイクのフレーム等など)
特徴としては、
・ 軽量で強度に優れている
・ 振動吸収性が高い
・ 入手しやすい
など優れた特性を持つ材料です。
このマグネシウム合金を、過去のオンキヨー株式会社で1980年代初めくらいには、振動板として活用したスピーカーの開発、販売を行っていました(当社が世界初と記録には残っています。当社調べ)。
40年以上もたちましたが、今でもマグネシウム振動板を作っていました。それをイヤフォンに適用できるくらいのサイズにしたのが、今回のカスタムIEMで使用している
マグネシウム振動板バランスドアーマチュア型ドライバ
です。長いです。
長いので、略してMg-BAドライバとして以下説明します。
なぜマグネシウムに着目して振動板を作ったのか、その特性を解説します。
スピーカー振動板の材料の特性
スピーカーの振動板の材料ってそもそもどういう特性がいい、とされるかご存じでしょうか。
キーワードは
比弾性率
内部損失
軽量
です。うーむ、軽量はともかく、他の二つは馴染みのない言葉ですね。日常生活では出てこない単語です。できるだけ分かりやすく説明します。
比弾性率、というのは材料の弾性率を比重で割った数値、と表現されます。まだ分かりにくいです。。。
これをざっくりいうと、比弾性率が高いと、早く振動が伝わる、ということです。スピーカー振動板はアンプからの電気信号に対し、すぐに反応できるのが理想的ですので、振動の伝達が早いことが重要です。そのため振動板の材料はこの比弾性率が高いことが求められます。
次に内部損失です。内部損失が高いことが求められます。損失が高い、ってなんか欠点のように感じますよね。でも、振動板としては逆なのです。長いゴムをはじいたイメージをしてください。指ではじくとしばらく振動していますよね。これがスピーカー振動板で発生したらどうでしょう。振動がずっと続いていると、次の振動(音)と被ってしまいます。それはスピーカーとしてはよろしくない特性です。なので、初めの信号だけ反応してあとは少しでも早く振動が減衰することが重要です。そのためには、この内部損失が高い、ことが材料として求められます。
最後に、軽量ですが、振動板が簡単に振動しやすくなるのはイメージがつきやすいかと思います。軽量になることにより、より高域まで振動がしやすくなるので、ハイレゾ再生などにはさらに重要になります。
この3つのキーワードですが、それぞれ相反するパラメータです。あっちを立てればこっちが立たず、ですね。その中で、マグネシウムという振動板の材料はどのような位置づけか、説明していきます。
マグネシウム振動板の特性
まず、紙や樹脂の振動板と、金属の振動板の比弾性率を見てみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1693901311982-myzsTVJ1f9.png?width=1200)
これを見ると金属振動板の方が比弾性率が高いことが分かります。じゃ、その金属振動板の中での比較をしてみると
![](https://assets.st-note.com/img/1693901392890-Ab5MphQbmg.png?width=1200)
金属振動板の中では、マグネシウムが内部損失が高いことが分かります。振動板としては最適であることが分かりますね。
じゃ軽量は?
![](https://assets.st-note.com/img/1693901747066-lBZoaZzwKw.png?width=1200)
軽量としてよく使われるアルミと比較しても軽量であることが分かります。
このような特性から振動板として最適、と考え、マグネシウムを振動板として採用しています。
また、高音域まで再生できるように、マグネシウム振動板としては45ナノメートル、という薄さまで作り上げています。さらに特殊な表面処理を施し、セラミックをマグネシウム素材内部まで浸透させることで剛性を高め、雑音成分を排除するところまでこだわり実現した、マグネシウム振動板が実現できました。これをバランスドアーマチュア型にして実現したのが今回のMgBAドライバです。
![](https://assets.st-note.com/img/1693902266875-0rmc2mrsVs.png)
マグネシウム振動板の音の特徴としては、聞き疲れしない、ということがよく言われます。自然な、素直な音として表現されるので、そのように言われると感じています。
MgBAドライバを当社が供給し、FiEarさんで組み込みを実現し、できあがった、カスタムIEM K1シリーズ、機会があれば一度堪能してみてください。
こんどこそ、ではまた次回に。(怒られないよな、、、きょろきょろ)