映画をみる その1 ファンタスティック・プラネット ルネ・ラルー監督
アニメーションで、丁寧に細部まで行き届いていて細やかな画。不気味で気持ち悪いという感じと不思議な感じの間くらい。スモーキーなカラフルさで、しゃれた色彩感覚。つやつやしていないダリみたいな生々しい質感。リアルな感じでとにかく絵がうまい。
色彩感覚にみとれて最後まで見られたけど、好きな絵や質感ではない。生々しさや不透明な感じは私は苦手。にょろにょろした感じ。またこういう感じは男性に好かれやすいと思う。
ファンタスティックというとおり、非現実的なイメージのSFで、神話的でもある。『ガロ』系のマンガのよう。70年代のサイケデリックな感じにも通じる。
それにしてもよくこんなイメージを、70分ほどの長さの細やかなアニメーションとして、テンションと質を保って作り上げたものだと思う。ものすごく手間がかかっている。
音楽は全編ずっと素晴らしかった。60年代後半から70年代のサイケデリックなロックという感じで、「電子音楽」「電子楽器」と言われた時期のシンセサイザーの音が、効果的に面白く使われている。ハイセンスで知的だと思う。
画も音楽も、感情を煽らない感じがする。感覚は刺激される。しかし激しくはない。絵の不気味で生々しくぞわぞわする感じを、私には音楽の心地よさが、ある程度中和してくれた。
とくに画は、見たものをそのまま感情をいれないで客観的に描いたという雰囲気もあって、シュルレアリスムに通じると思う。
そこまで書きなぐってから公式情報を確認した。だいたい合っていた。
フランスのルネ・ラルー監督による、ステファン・ウルによるSF小説「オム族がいっぱい」の映画化。
1973年カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ受賞。2016年にはローリング・ストーン誌によって史上36番目に偉大なアニメーション映画とされた。
1973年12月公開だそうで、いかにもその時代の絵と音。
動画はプラハのイジー・トルンカ・スタジオが制作。フランス・チェコスロバキア合作。
公式サイト
https://www.zaziefilms.com/fantastic/
ウィキペディア
1月24日まで2週間、you tubeで限定無料配信。https://youtu.be/Vgvl3Ym6zXU?feature=shared
音楽は、アラン・ゴラゲール。初めてきいた名前。1931-2023。長生きした人なんだ。この映画の音楽は42歳の時で、あぶらののっている時期だろう。ジャズピアニストだって。なるほど、途中のサキソフォンのところはジャズだったな。
ボリス・ヴィアンやセルジュ・ゲンズブールのサイドマンとして活躍したジャズ・ピアニスト/アレンジャー/コンポーザーとのこと。そりゃカッコいい音楽のはずだ。
ウィキペディアは日本語版がなく、フランス語
こちらはアルバムの案内。
https://www.ahora-tyo.com/detail/item.php?iid=18805