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㎜冒険


 

 七年と半分ほど日本国総理大臣を務めた安部さんが辞任すると発表した頃。

どこかのアホウが蒸し風呂のドアーを開いた夕暮れに僕は我慢ならずハードオフに駆け込んだ。目当てのアイホーン純正イヤホンを三百円で、ついでに純正の充電器も百円で購入して店を出てすぐ装着して流すはダーティプロジェクターズ。耳元に垂れたボタンで音量をあげた。もうそれで満足だ。この狂わしい空が変わる前にダンスフォーユーの間奏に浸る。どろっと溶けたなにかの中心に幸福感がプチプチを潰すように弾けた。

 科学のことはわからないけれど自分の身体がどうなのかもわからないけども誤魔化し生きてきた。汗だくの夕暮れの中、ハードオフの店先で安倍さんにおつかれのあいさつをして白すぎて汚れたチャリを漕ぎだした。

 どこまで漕げばいいか。どこへ行けばいいのか悩みながら少しだけ遠回りして帰った。それくらい。





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