八月三十一日の夜に
流星群が流れヒップホップにグルーブした騒がしい夜はあっけなく終わり。友達やそのまた友達は自分の戻る場所へと散って行った。最後までそれを見届けたのは私だった。日が経つにつれて静かさを増す夜を過ごすと蜃気楼ように掴み所のない不安も増していった。
ムラセは安全に交通するための白やオレンジのラインを灼熱のアスファルトの上で引いているだろうし、アカザキは嫁の実家に帰省して気を使っているだろう。遊び続ける奴や学校へ行くやつもいる。今年の夏もみんなの前で人ってのはなにかの拍子にバランスを崩すとなにもできなくなる生き物だということを力説してやった。自分の言った言葉がそのまま静まり返った熱帯夜の空気に混じるのを嫌い冷房のスイッチを押して窓を閉めかけて声が聞こえ思わず身体が静止した。耳に集中して次の声を待つ。呼吸がうるさく息も止めた。周りはまだ暗く空気は熱い。目の前の土手脇に生える背の高い草と細長い木が視界を遮りその先にあるはずの東屋の屋根まですっかり隠している。室外機がうねりをあげて回り始めてから窓を閉めた。年中電源がついているパソコンは深夜四時前を告げている。私はジーンズを履き襟のヨレたテイシャツをかぶり玄関を出た。無音が耳に鳴り熱が頭を鈍らせて恐怖も不安も感じなかった。見えない東屋だけを意識してわざと足音立てて行ったが誰もいなかった。東屋を一周して確認したが誰もいないし声も聞こえなかった。
待ってみようと思った。誰でも出てこい、むしろ来てくれそして私の話しを聞いてくれと切実に思うと同時にクソくだらないととも思うと同時に声に出せば来るかもしれないとも思うがそんな考えがをした自分がクソ恥ずかしくなり立ち上がると空気がひんやりしていた。季節が変わったのだと思った。季節の変わる瞬間を感じたのかもしれないと思えた。土手まで出ると空が青く光はじめてひんやりしたそよ風が肌を撫でた。
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