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都道府県別ジェンダーギャップ指数と幸福度


※この記事は特定の県を貶めるものではありません。

背景

先の衆院選において、ハフポストは「若い世代の声を可視化し、政治に届けることを目指した」として、30歳未満にアンケートをとっています [1]。その結果、若い世代はジェンダー平等に関心が高いとしました。

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しかし、NNNが行った出口調査によると、ハフポストの調査とは異なり、30歳未満が重視した政策は新型コロナ対応、景気対策、子育て・教育などでした [2]

図1


政策で比較すると、ジェンダーに関するテーマは優先順位が低いようですが、実際の意識としてはどうでしょうか。

内閣府政府広報室が2019年に「男女共同参画社会に関する世論調査」というアンケートを行っています [3]。これによると、「社会全体の男女の地位の平等感」として次のような結果が出ています。

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(出典の図に筆者が色を加えたもの)

・この結果によると、どの世代でも「男性の方が優遇されている」と感じている割合が高いことがわかります。

・世代別に見ると、基本的に若い世代ほど「男女平等」と感じている割合が高く、18~29歳の約30%が男女は平等だと感じているようです。

・一方で、「女性の方が優遇されている」と感じる人は、男女問わず、どの世代でも少ないことがわかります。


このような「男女の平等感」は、日本でも地域差があり、男女平等の進んでいる/いない県があるのではないでしょうか。

このような疑問から、統計による地域差を調べてみました。


用いた統計

上記にある「社会全体の男女の地位の平等感」の県別の回答結果があれば理想でしたが、見当たりませんでした。そこで、ジェンダーギャップ指数( Gender Gap Index:GGI)を参考に、以下の項目に絞って都道府県の成績を出しました。GGIについては後述します。

地方政治
・都道府県議会議員に占める女性議員比率
・市区町村議会議員に占める女性議員比率
出典:令和2年地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等(総務省) [4]

教育
・女性進学率(高校からの進学者に占める女性比率)
出典:令和2年学校基本調査(文部科学省) [5]

民間企業
・管理的職業従事者の女性比率
・雇用者(会社などの役員を除く)に占める正規の職員・従業員の比率
出典:「平成29年就業構造基本調査結果」(総務省統計局)[6]


可視化

データは可視化する前に平均0、分散1に標準化しています。

地方政治
都道府県議会議員に占める女性議員比率(左)と市区町村議会議員に占める女性議員比率(右)はこのようになっています。

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教育
女性の進学率はこのようになっています。

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民間企業
管理的職業従事者の女性比率(左)と雇用者(会社などの役員を除く)に占める正規の職員・従業員の比率(右)はこのようになっています。

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これらの得点を平均することで、県別のGGIとしました(左図)。色が濃い県ほど「他県と比較して女性が優遇されている」という指標です。

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右図はブランド総合研究所が「都道府県 幸福度 ランキング2020」による、県ごとの幸福度です [7]。(リンク先はダイヤモンドonline)

ただし、アンケートは次のように行っていて、男女別ではないことに注意してください。

アンケートはインターネットにて実施。1万6000人から回答を得た(各都道府県から約350人)。調査期間は2020年6月12日~29日。住民に対し「あなたは幸せですか」という問いを投げかけ、「とても幸せ」「少し幸せ」「どちらでもない」「あまり幸せではない」「全く幸せではない」の5段階から1つ選んでもらった。回答はそれぞれ100点、75点、50点、25点、0点として全回答の平均を「幸福度」とした。

(県別、男女別に幸福度を集計しているデータを他にあればそちらに差し替えます。)

一見して、GGIが高い県ほど幸福度が高いという傾向は見えませんが、念のため、グラフにプロットして確認してみます。

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相関係数は0.079と低く、県別GGIと幸福度にはほとんど相関が見られません。他の変数も同様で、都道府県議会議員と管理的職業従事者の女性比率は相関係数が負になっています。

唯一、進学者に占める女性比率は相関係数が0.347とやや相関が見られています。その他の統計と合わせて評価しないとなんとも言えませんが、幸福度を上げるには教育に力を入れるのが(ひとまず現状の統計では)一番良さそうです。

GGIとは

県別GGIを評価するにあたり、GGIにある項目を参考にしました。なお、GGIについてはRadertさんが以下の記事に非常にわかりやすくまとめてくれています。

GGIは、教育や政治に関する項目からなる指標で各国が順位付けされているもので、今回はこれを参考にしています。

しかし、Radertさんの記事にもあるように、GGIは女性の幸福度と直結しませんし、この指標をもって日本が女性不遇とは呼べないことに留意してください。

GGGRの順位に一喜一憂したり、順位の低さを理由に日本の男女差を論う行為は最早不当です。同様にGGGRでランキング上位を狙う事も無意味ですし、このレポートを以って日本は女性不遇の国であるとは認定もされません。

今回の記事においても、県別GGIによって、「特定の県で女性が不遇である」と主張するわけではありません。


引用

[1] https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_617a2f74e4b065735744874
[2] https://news.yahoo.co.jp/articles/7dd99a039242a6258c285c32cd239f2bc2640486
[3] https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-danjo/gairyaku.pdf
[4] https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/ninki/touhabetsu.html
[5] https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001148386&tclass2=000001148404&tclass3=000001148419&tclass4=000001148423&tclass5=000001148424
[6] https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200532&tstat=000001107875&cycle=0&tclass1=000001116995&tclass2val=0
[7] https://diamond.jp/articles/-/248523


読んでいただきありがとうございました。
もし何か分析したいテーマがあったらDMまでどうぞ。

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