【プロジェクト事例】アジャイルのプロジェクトって実際どうなの?関係者に聞いてみました!
ここ数年、当社が提供するシステム開発においてアジャイルのプロジェクトが増えてきています。今回はとあるプロジェクト開発に携わったメンバーに色々聞いてみました!
まずは本プロジェクトのオーナーであり責任者を務めた、公共法人システム事業本部 河口聡さんにお話を伺いました。
アジャイルでしか実現できない案件だった
▼お話を聞いた方
プロジェクトオーナー兼責任者:公共法人システム事業本部
統括部長(取材時)河口聡
ーどういった経緯でアジャイルのプロジェクトに取組むことになったのでしょうか?
河口:この案件は顧客からの要望が、新しいサービスの会員システム立上げでした。そして、3カ月以内のサービス開始を希望されていたこと、また、顧客もシステムの専門家でなかったことから、話を聞きながら随時システムに反映していくようなスタイルを望まれていたことから、アジャイルでしかできない案件であると判断しました。
ーアジャイルの案件は最近増えてきていますか?
河口:近年、顧客側から”アジャイルで”と言われることが多くなりましたね。アジャイルの案件は毎月発生しています。特にユーザーに近い所はスピーディーに開発したいという要望が多いですし、”アジャイル”のワードは世間に浸透してきていると実感しています。
顧客の事業の成長度合いに応じたシステムを提案
ー今回、AWSの導入とモダンアーキテクチャーを提案されていますが、なぜこの形を提案されたのでしょうか?
河口:顧客の要望は、新規の事業立ち上げの会員サイトなので、会員数が少ないうちから運用費が高くつくWebシステムは顧客にとってリスクがあることでした。そこで、事業の収益に応じてシステムの運用費も上がる、ビジネスのスケールにあったモダンアーキテクチャーを提案しました。お客様の既存のシステム会社とのコンペとなりましたが、お客様が望まれている運用の形と感じていただいて当社を採用いただきました。AWSとモダンアーキテクチャーの組み合わせは最近採用する企業が増えています。これから主流の形になっていくと思いますよ。
メンバーの成長は目を見張るものだった
Q:実際に取組まれてどうでした?
河口:今回は比較的経験が浅い若手のメンバーだったので3カ月で終わらせられるか少し心配していましたが、実際やってみて、メンバーの成長は目を見張るもので本当に驚きました。特にアジャイルとしてのコミュニケーションは上手くいったと思います。プロジェクトが終わる頃には、アジリティ(※)の高いチームに仕上がっていて、解散するのが惜しいほどでした。
公共法人システム事業本部では、アジャイル学習者を100名目指しています。今後はもっとアジャイルの案件を増やして、アジリティの高いチームを社内に沢山作っていけたら理想ですね。
※「アジリティ」(Agility)とは、機敏さ、素早さ、敏しょう性といった意味、ビジネス用語としては、目まぐるしい環境変化に即応するために欠かせない、経営や組織運営のあり方における機敏性を表す。
ここからは、スクラムマスターを務めた高橋知七さんと、アジャイルのノウハウをチームにコーチングするために参画した伊藤貴洋さんに、メンバーとしてのリアルな感想を伺いました。
▼お話を聞いた方
・スクラムコーチ 伊藤貴洋
・(本プロジェクト)スクラムマスター 高橋知七
プロジェクトの立ち上がり、不安との戦い
ープロジェクトの立ち上がりではどんなことをされたのでしょうか?
伊藤:本プロジェクトは要件が固まりきっていない中、短い先行期間の中でスクラム開発に必要なプロダクトバックログ(作るものリスト)を用意する必要がありました。お客様がやりたいことがたくさんある中、それを整理しながらプロダクトの全体像を掴むためにUXデザインの手法であるペルソナとカスタマージャーニーを組み合わせを使いました。会議室を借りてワイワイしながら進めたので両社のメンバーのチームビルディングにも役立ちました。
チームが合流し、まず感じたのが ”慣れないスクラムや技術に対してどのように不安を解消しコミュニケーションを図っていくのか ”という思いでした。
私が最初に与えられたのが0.2工数でスクラムコーチとしての支援を主に期待されていましたが、その限られた時間の中でチームの不安を解消することは難しいです。そこでまず支援中はチームとできるだけ一緒にいられるように試みました。具体的には、作業工数の調整をプロジェクトオーナーの河口さんと上司に図り、別の社内作業をする時もチームと同じ部屋で作業するような支援体制の強化です。同じ時間と空間を共有することで、お互いに声を掛けやすくし初挑戦に対する不安や悩みもその場で共有できるチームを目指しました。
スクラム開始!
Q:スクラムを開始されてチームはどう変わりましたか?
高橋:アジャイルはコミュニケーションが大事とは聞いていましたが、若いメンバーがよく喋るのでチームの雰囲気が良かったです。その点における不安はすぐになくなっていきました
伊藤:これは私も強く実感したところで、メンバー全員が普段から雑談もでき良い雰囲気が保たれていたのが良かったと思っています。
高橋:技術力も最初は不安があったものの、モダンWebなどの新しい技術はチームに思ってた以上に早く浸透しました。NuxtやAWS Amplifyなどのフレームワークがなかったらここまでの生産性は出せなかったと思いますね。動くモノがすぐに出来上がっていく様子を見てチームも徐々に自信をつけていきました。スクラムも、概念を説明されてもやってみないとわからないと感じました。やっていく中で徐々に毎スプリント(※)あるふりかえりでチームがカイゼンしていくのを見て、理論を理解していきました。
伊藤:これはまさしくスクラム開発の短いスプリントの利点をしっかりと体感して頂けたポイントだと思います。今回は1スプリント1週間で機能を作っていきました。それが実現可能であることや、そのスプリントをどんどん良くしていくことのパワーは実際に体感することで強く理解ができることを私も改めて実感しました。
※「スプリント」(Sprint)とはスクラムにおける開発の1サイクルです。1スプリントごとに機能を完成させてプロダクトに統合していきます。
全体を振り返って
Q:スクラムマスターを経験されていかがでした?ウォーターフォールタイプのプロジェクトとの違いなど感じた点がありましたら教えてください
高橋:短期間で、チームとして開発する力とそれに対する責任というものが皆の中で大きく成長したと思います。今回は課題があるとすぐモブプログラミングで開発をし知識の横展開も効果的にできました。これはウォーターフォールの一人作業が中心の開発では得られなかった感覚です。
プロジェクトマネージャーをやっていた時はプロジェクトの状況を中心に見ていました。今回はスクラムマスターとして人をよく見ていたと思います。
何に困っているんだろう、どうしたらもっと良いチームにできるだろうと毎スプリント考えていました。
伊藤:これがアジャイルの本質だと思います。この一言が聞けてとても嬉しいです。スクラムコーチをやった甲斐がありました(笑)
次への課題
Q:今回のプロジェクトから次の課題はありましたか?
伊藤:今回のプロジェクトでは色々な学びもありつつ、課題もいくつかありました。まず、チームの力が3ヶ月でかなり高まった中で、次のプロジェクトへ離散してしまうという点です。当然、各メンバーがそれぞれの場で今回得た力を発揮してくれることも期待できますが、やはり徐々にその進め方だったりを忘れていくこともあると思います。
また、お客様であるプロダクトオーナーとのやり取りがチャットとQA表ベースだったのでスクラムに求められるスピード感が時に出せずチームが苦労してしまったことも課題です。あらかじめコミュニケーションルールとその重要性をスクラムチームとステークホルダー全員で合意しておくことが大切に感じました。
また、色々な条件がスクラムのあるべき論からは外れていたものの、その制限の中でチームは最大限の動きを見せてくれました。これを足がかりにお客様とともに「ユーザーへのより良い価値提供をどう実現していこう?」という問いに答えて行きたいと思っています。
ー皆さんのお話を聞いて、アジャイルは単なるノウハウというわけではなく、マインドセットとプロセスと技術、全てが大事なんだと改めて考えさせられました。スクラムマスター、開発メンバー、プロダクトオーナーそれぞれの関係者がより良いスクラムチームになるためにコミュニケーションを図り、カイゼンを繰り返していく。そういったマインドセットがこれからもっともっと広まって欲しいと切に感じました。お話をありがとうございました!
最後に
TDCソフトはアジャイルの事業に力を入れています。今回の事例でスクラムコーチをされた伊藤さんが分かりやすく解説したアジャイルの基礎についての動画がありますのでご参考にしてください。
アジャイルを始めることになったらまずおさえておきたいポイントを解説しています
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