ウポポイのアイヌ舞踊を「嘘」「偽物」と認定する人々の呆れた主張
2020年7月12日、北海道白老郡白老町に「民族共生象徴空間(ウポポイ)」がオープンしました。
北海道の先住民族であるアイヌ民族に関する施設で、特徴的な「ウポポイ」という名前もアイヌ語に由来します。
ウポポイ設立の経緯や施設の詳細については各自でググって頂くとして、今回取り上げるのは当施設の開業記念式典で披露された「アイヌ舞踊」とそれに対するTwitterの一部界隈の反応です。
ウポポイ開業の翌日、このようなツイートが投稿されて話題になりました。
ツイートの内容はアイヌの輪踊りの映像を引き合いに出し、ウポポイの開業式典で披露されたアイヌ舞踊「病気の神よ 近づかないで」を偽物だと断じるもの。
このツイートはTwitterの政治界隈を中心に拡散され、1.8万件ものRTと2.5万件ものいいねを集めています。
さらに、度々悪質なフェイクニュースを流すことで知られるまとめサイト「アノニマスポスト」や「ツイッター速報」といった右派系サイトもこのツイートを取り上げ、これらの記事も大きく拡散されました。
こういった情報を目にしたユーザーの中には本気で「ウポポイのアイヌ舞踊は偽物」と信じてしまった人も少なくないかもしれませんが……一旦冷静になって考えてください。
コイツらの主張、よく考えてみたらめちゃくちゃ過ぎませんか?
彼らによれば「本物のアイヌ舞踊は輪踊りであり、ウポポイの開業式典で披露された楽器を使った踊りは偽物」とのことですが、控えめに言って暴論にも程があります。
「アイヌ舞踊」と一言で言っても当然その内容は様々です。
例えば、自動車に「セダン」「ワゴン」「スポーツカー」等々用途によって様々な種類があるのと同じで、アイヌ舞踊にも楽器を使ったものが存在していたとしても何ら不思議ではありません。
しかし彼らはまるで「輪踊り」のみがアイヌ舞踊であるかのように扱い、それ以外は全て偽物とでもいわんばかりの姿勢をとっているわけです。
これを自動車で例えるならば
「ご覧下さい、これが2020年に撮影されたプリウスの走行シーンです。燃費が良く、エンジン音がとても静かなのが分かりますよね?」
「ですから燃費が悪い車、もしくはエンジン音がうるさい車はトヨタのエンブレムを着けていたとしても、実は全て『偽トヨタ』です。プリウスだけが本物のトヨタ車だと思う人は拡散してください。」
このレベルの暴論になります。
皆さんご存知の通り、トヨタはプリウスだけを生産しているわけではありませんからプリウスに比べて燃費が悪い車やエンジン音がうるさい車もラインナップには存在します。
同じようにアイヌ舞踊にも様々な種類があるはずで、共同通信が撮影したウポポイの踊りもまた「アイヌ舞踊」の一つというわけです。
自分は自動車で例えてしまいましたが、フォロワーの方がツイートした標準語と方言の例えが分かり易かったので紹介しておきます。
「こちらが日本の首都東京に住む人の喋り方です。しかし、関西人の喋り方は東京人と全く違うので関西人は全員偽日本人です。」
これを聞いて「その通り!正しい日本語は標準語のみ!関西弁は偽物の日本語だ!」などと言い出す人はいないですよね。
いるなら異常者です。
しかし、Twitterでウポポイのアイヌ舞踊を叩いている層やアノニマスポスト、ツイッター速報の読者層はこのレベルの暴論を「正論」と信じ切っているわけで……。
Twitterの政治界隈とそれに乗せられるライト層のアホさ加減にはつくづくうんざりさせられますが、彼らがまともな情報リテラシーを獲得するのは一体いつになるやら。
こんな場末のnote記事で反論したところで彼らには届かないことは分かっているんですが、それでも彼らの中から1人でもまともな情報リテラシーを獲得するユーザーが増えてくれることを願って、こういったデマや暴論にはその都度指摘していくつもりです。