ちょっとした心遣いと提案でいっそう強くなるロイヤリティ:お肉屋さんからの一本の電話(CRMの話)
3年前に他のブログで書いてたエントリーを一部noteに移植します。
常連となっているお肉屋さんの対応に感激したので書いてみます。常連と言ってもお店があるのは四国・高松(私の実家がある街)。香川県内に3店舗ほど持っているのでまあまあ中堅といったお肉屋さんです。
知人に教えてもらって行き、クリスマス用のチキンとかチャーシューを買いにいったのがきっかけで、美味しかったのでその後も何度かリピート。
何度目かにしゃぶしゃぶ用にと豚肉を買いに行ったとき、おかみさんに「豚肉好き?」と聞かれ、「うん、美味しいのある?」と聞くと「薩摩美豚」という豚肉を教えてくれました。確かに美味しくて、以後、我が家では豚肉と言えばこの「薩摩美豚」。しゃぶしゃぶのみならずとんかつ用も生姜焼きも何でもこの豚肉。とにかくあっさりしていてるのに旨い。
あまりに気に入ったため、義理の父母や親戚にまで送ったりしていたほど。
それにお店に買いに行くと、おかみさんは親切にいろいろお肉のことを教えてくれて、いつも買うもの以外のお肉を見ていると「食べてみて気に入ったら今度買ってね♫」と、ほんの少し試食用を入れてくれたりするのです。
そんなお気に入りのお肉屋さんでしたが、一家は四国・高松を離れることになり、お店に買いに行けるのは年に1度か2度帰省時にお邪魔する程度。あとは電話でオーダーしたり、私の母親が買いに行ったときに、我が家の分まで送ってくれる、そんな付き合いが続いてました。が、最近は購入頻度(いわゆるフリークエンシー)も落ちています。そんな中、一昨日の夕方、高松のお肉屋さんの女将さんから電話がありました。
突然のお電話だったので何だろう?と構えてしまったのですが、内容はこういうものでした。
「今夏はお見かけしてないから自分が店番してないときにお越しいただいてたならごめんなさい」というご挨拶から始まり、「実は大西さんにずっと気に入っていただいていた薩摩美豚の仕入れをやめることになり、きちんとそのお詫びがしたかった」という。
「わざわざ、そんなのまた行ったときにお話してくれたらよかったのに」というと「いえいえ、あんなに気に入ってもらっていつも買っていただいてたのに申し訳なくて。」と。
まあ、ここまでの内容でも結構ありがとうございますって言いたいものですが、女将さんは「これまでも扱っていた鹿児島黒豚の六白に加え、オリーブ夢豚を扱う予定になりました。大西さんの好みならこのオリーブ夢豚が合うと思いますので、一度お試食用に送りたいのですがいかがでしょうか。お代は要りません。それで気に入ってもらえたら次からはそのお肉でいかせていただきたいと思ってます。本当にこのたびは申し訳ないことを…」ということでした。
いかがでしょう。私は実に気持ちがよかった。
接客のプロやカスタマーサービスのプロからすると、そういうの割と当たり前じゃないか、というご意見もあるかもしれません。
が、次に帰省した際、いつものようにお店に寄り、いつものように薩摩美豚を注文して「ああ、あれは仕入れるのやめたんですよ」と言われてがっかりする、あるいはそれがきっかけでそのお店と疎遠になる、そうして離反していくことを考えると、事前に常連に対して不利益になってしまうことを詫び、その上できちんと代替案を提案する。しかもそれがお味見(お試食)という形で無償で届く。悪い気はしませんよね。この一本の電話によって常連顧客は離反せず、もしかしたら落ちていたフリークエンシーも回復する可能性があります。最近はオンラインショップも始めてるみたいですが、このお店は女将さんがいる限り、直接行くか電話で注文を続ける気がします(実際そうしています)。女将さんはおそらくCRMなんて言葉は知らないでしょう。でも、私にかけてきた電話とその内容は極上のCRMだと私は思っています。次回、帰省時にあの女将さんに会うのが楽しみになりました。
※2016年8月29日の出来事をnoteに書いたものです。
※Cover Photo by Petr Sevcovic on Unsplash