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とある眼科医の試験回顧録
Life is like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.
はじめまして,眼科医のiGar(アイガー)と申します.2024年6月に第36回 眼科専門医試験を受験しました.自己採点では一般94%,臨床90〜92%,全体で92%程度の得点率でした.これは試験に辿り着くまでの回顧録で,受験日をXとしています.
普段はなるべく長話はしないよう心がけていますが,色んな苦労を思い出しながら徐ろに書き綴っていたら,冗長な文章となってしまいました.お急ぎの方は読み飛ばしつつ,要点は「★印」をお読みください.
試験対策として最短コースを進むことはできなかったため,時間のある受験生向けの内容となっております.ご寛恕頂ければ幸いです.
挫折
初期状態(対策を開始する前):苦手意識が少なかった分野は,ぶどう膜炎,神経眼科,メディカルレチナ.大学の専門外来についており,少し勉強済み.逆に不得意だったのは,角膜(常勤の専門家が少数),小児(外勤先でたまに診る程度),手術全般(症例数が比較的少なめ).
勉強のスタイル:試験勉強に関しては,昔から細かい理屈で覚えられない類の人間(国家試験でもTECOMではなく,MEC or medu4派)なので,ゴロをたくさん作って,最終的に高速周回して学習を進めるタイプ.
高校時代の文理選択:もちろん理系コースだったが,理系科目は苦手(計算が遅い.小学生の頃に通っていた算盤教室では何度も拳骨を喰らった).英語や国語,世界史などの文系科目が好き.
ぐちょぽいさん ライングループへの加入時期:
2020年2月(初期研修医2年目の終わり)X−4年4ヶ月
初期の勉強会ラインでは,総論,各論の解説が定期的に投稿されていた.初めは予備知識が全くなくROMり続けるだけで大変だったが,好奇心を絶やさぬよう,定期的に投稿を読むよう心がけた.
専門医試験の対策開始時期:
2022年1月頃 X−2年5ヶ月(眼科入局2年目の冬)
入局後の2年は怒涛のように過ぎ,日々の業務をこなすのがやっと.2022年春から新たな職場に異動,秋口には第一子誕生予定だったので,早めに勉強開始.2022年6月には先輩が専門医試験を受ける予定だったので,力試しとして自分も勉強してみることに.この時点で,眼科学やクォリファイシリーズについては(いずれも間違いなく良書ではありますが)自分のキャパシティでは通読困難と判断.某大学の過去問アプリを始めるも,1週目は4割程度しか取れず絶望.ベースの経験や知識が不足しており,定着せず.正答以外の選択肢を吟味していなかったので,理解も深まらず.
歓喜と怠慢
2022年4月,新たな職場に異動.幸いなことに素晴らしい先輩方に恵まれ,執刀件数も増加.小児患者さんの比率がそこそこある病院で,斜弱の勉強が進む.受験生になった気分で ぐちょぽい先生の直前講座を視聴.出退勤の電車の中で過去問アプリを何とかこなす.
2022年仲秋,第一子が無事誕生.ここから暫く家庭ではまとまった勉強時間は取れない状態に.就眠前のミルクと寝付かせ担当になったので,ミルクを上げながら片手でこっそりオペ動画を視る技を習得.その後,第24〜32回の回数別の1週目が取り敢えず終了.全然理解できていないのに,妙な達成感を得てしまう.(後から振り返れば怠慢だが)ここで一旦勉強ストップ.
模索
2023年の年始(X−1年5ヶ月),「そういえば最近,全然過去問解いていないな」とふと思い出す.日々の診療のクォリティも自分の中で頭打ちになってきており,「せっかく専門医試験の対策をするならば,診療に役立てられるような知識の付け方をしたい」と思う.
ここから分野別対策を開始,診療経験の乏しい分野は症例や画像ベースで擬似的に経験を積み,インパクト重視で頭の中に植え付けることを目標に.
★各分野の対策
具体的には以下の通り(時期的には後から購入したものも含む).
腫瘍,病理:眼病理アトラス,眼内腫瘍アトラス,眼瞼・結膜腫瘍アトラス(自分なりの活用方法は後述),眼病理組織スライドセミナー(コロナ窩の影響でWeb開催)
角膜:前眼部アトラス,眼と全身病アトラス,角結膜診療のストラテジー
解剖生理,発生,生理,色覚:眼科レジデントのためのベーシック手術,先天赤緑色覚異常の診療ガイダンス,Webで偶然発見した他大のシケプリ
網膜硝子体:後眼部アトラス,レトロゲームLOVE先生 @segazukiman をはじめとしたvitサージャンの投稿,アイセミナーなどの動画視聴
ぶどう膜:ぶどう膜炎診療のストラテジー,臨床経過で診るぶどう膜炎・網膜炎・強膜炎アトラス
神経眼科:フローチャートでみる神経眼科診断,ビジュアル神経眼科,神経眼科診療のてびき
斜弱:斜視治療のストラテジー,プリズムクラブを毎月視聴,ぐちょぽいさんの斜視講座
眼光学,検査学:
Group A(比較的読みやすい)眼科検査Note,眼科検査LvUPエッセンス,視能訓練士国家試験合格ノート,眼科検査 黄金マニュアル
Group B(高度な内容も含まれる)パンダの視能訓練士検査フローチャートマニュアル,眼科検査ガイド,眼鏡処方おたすけ帖,できる!斜視検査 ※徐々に難しい内容にチャレンジしました
ロービジョン:ポイントマスター!ロービジョンケア外来ノート,障害年金専門社労士さんのアカウントフォロー,補装具適合判定医師研修会
某大学アプリ以外の過去問:眼科専門医セルフアセスメントで第1〜22回の解剖,発生,生理,色覚,斜視の分野を演習.
苦悩と克服
2023年春(X−1年3ヶ月),環境の変化などもあり,持病が急に悪化し,他疾患も合併したため治療強化の方針に.内服追加で加療を試みるも改善せず,注射導入となる.後輩(入局1年目)ができたにも関わらず情けない状態となり,就業継続できるか,人生の岐路に立たされる.しばらく勉強どころではなくなる.
2023年6月(X−1年),ようやく持病を寛解状態に持ち込むことに成功.分野別対策を再開.悩んだ症例はカンファで相談しつつ,上述の書籍メインで自分にフィードバックをかける.同年冬頃から外来中も必要な検査や鑑別疾患がスムーズに浮かぶようになり,勉強の効果を徐々に実感できるように.手応えを感じ始める.元々優秀な後輩が更にめきめきと頭角を現し始めたので,疑問があれば遠慮なく質問をぶつけてもらい,気づけば口頭試問対策に(ありがとう,F先生).
転機
2024年1月(X−5ヶ月),某大学の過去問アプリにカムバック.周りでも対策を始める人が増えてきた,という印象を受ける.
★新たな勉強スタイルの確立
Evernoteの使い勝手が悪くなっていたので,UpNote(有料)に切り替え.何をどこまで勉強したのか分からなくなっていたので,下図のように日記をつけ始める.自分の苦手な分野が浮き彫りになり,復習の効率がどんどん上がる.母校の同期からアドバイスをもらい,ANKIを導入.通勤中に無心で解き続ける.
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再び,苦悩
2024年3月(X−3ヶ月),前年とは別の持病が悪化.諸事情により机に向かう事が困難に.周囲の助けを得つつ,対症療法にて1ヶ月ほどかけて何とか小康状態に持ち込む.過去問についてはある程度の正答率(概ね8−9割程度)になっていたが停滞した印象があり,状況打破の必要性を自覚.日本眼科学会ホームページに掲載されているガイドライン(https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/)を全て読み直すことを決意.暗記マーカーというアプリを使い,特に大事そうなところを穴埋め形式にして自分だけの問題集を作成.
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挑戦
★直前期(2024年4〜5月)の勉強方法
某大学の過去問アプリ(印をつけた問題を重点的に)+ 直近3年分の爆速演習
ANKIアプリ(ぐちょぽいさんノート,ガイドライン,職場の先輩のノート,他大学シケプリ,自分のまとめノート)
画像クイズ(アトラスシリーズの画像をスクショし,臨床像や病理画像のみで鑑別疾患が思いつくようトレーニング)
視能訓練士(CO)国家試験の過去問 直近数年分の演習(計算問題,検査の対策のため.ぐちょぽいさんの解説講座も購入.公式解答あり)
Xで情報収集,各種勉強会グループ参加
毎日,1〜4のうち何かしらをこなすルーチンを取り入れる.過去問で扱われた範囲の,似たような単語,疾患を区別できるように努める.
例.ABCA4,ABCC6,ABCA1遺伝子
特に専門医試験 過去5年分については,正答以外の選択肢についても,なぜ間違っているか理由をつけて他人に説明できる状態に持って行く.絶妙なタイミングでエスロト先生 @gKVfufVGag98277 の試験対策動画が公開され,直前期の詰め込みや復習が更に充実.
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★当日の持ち物,服装
会場では電子機器の使用に制限がある(スマートウォッチも当然不可),と聞いていたので,全て紙ベースで持参.自分はPCでの学習メインだったので,頑張って印刷.
自分のまとめノート
願書のコピー(出願の時点でスキャンして保管)
直近の過去問 3年分
ぐちょぽいさんノート,眼科検査Note,できる!斜視検査,眼科検査 黄金マニュアル などの書籍
筆記試験は私服(Yシャツ),面接はスーツで受験.HBの鉛筆,無地の消しゴム,通信機能の無いシンプルな時計を持参.徒歩数分圏内の近隣のホテルを確保(昨今のインバウンド需要拡大による宿泊費高騰を見込み,半年近く前に予約.結果かなりお得に予約できました).近隣のコンビニは混雑が予想されたので,試験前日に昼食ないし軽食を前もって購入.
★雑感,反省点
本番では,試験時間は予想以上に短く感じました.一般100問,臨床50問でそれぞれ2時間ずつでしたが,2周見直しするには少し時間が足りない,という結果でした.結果として凡ミスが発生.もう少し速度を上げて解いても良かったかなと思いました.
マークシートは小さめで,輻輳が弱い自分にとっては辛かったです.シートの大きさは,サイゼリヤの注文用紙くらいかな,と思いました.
![](https://assets.st-note.com/img/1719045867664-bHzDKPzzHU.jpg?width=1200)
左から順にメニュー、注文用紙、ぐちょぽい先生ノート
ガイドラインの読み込みが不十分でした.特に各デバイス,薬剤の禁忌やリスク因子について,もっと確実にしておくべきでした.
計算問題はテンパって一部間違えてしまいました.また,二択で迷う問題も多かった印象で,自分の中でベストな選択肢が選べない場合,ベターな回答を探す努力が足りませんでした.
直前期は,視能訓練士(CO)さんに非侵襲的な検査は全て受けさせてもらう or 見学しました.折しも佐々木先生のCOメジャー(https://www.square-wheel.co.jp/CO_measure.pdf)が発売されたタイミングでしたので,実際に診療でバゴリーニやサイクロフォロメーターを使用し,苦手意識を減らすことができました.
※面接試験については,各部屋で状況が異なると思うので省略します.
まとめ
★必須事項
ぐちょぽい先生 @guchopoi のライングループへの加入&ねむた医先生 @not_sleepy_ のノート通読(https://note.com/not_sleepy_/n/nfef12e993438)は,受験対策としてまず最初にマストでやりましょう(利益相反なし).置かれている環境次第で得意不得意があると思うので,早めに苦手分野を炙り出すことが大事です.
試験対策が充実すると平均点が上がり問題が難化するじゃないか,というご批判も当然あると思いますが…未だ診ぬ患者さんの為にも,臨床力の向上に努め,知識のアップデートを行う姿勢は大切にしたいな,と考えています.また,Self-Handicappingするよりも,Pure Mindで頑張るほうが充実感があるのではないでしょうか.
振り返って,総じて大変なことも多かったですが(主に健康面で…),学びの多い期間を過ごすことができました.周囲にも支えて頂き,とても幸せな受験生ライフでした.
以上,一受験生の回顧録でした.
今後も一生努力します.
ご高覧頂き,ありがとうございました.
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