【R3 知財:著作権法 司法試験】
設問1 標準
設問2 (1) やや易, (2) やや難
設問3 やや難
といったところかと思います。誤字脱字はご容赦ください。
第1 設問1
事案が複雑ですが,要はあるゲーム会社がありゲーム関連の著作権事例の総合問題です。
まず第1問は,写真データを退職後勝手に持ち出されてしまったパターンです。
ここで問題となるのは写真の著作物性,写真の著作者性,支分権該当性 です。
写真の著作物性は一般的に問題になりますが,本件ではデジタルカメラで,写真の構図等を撮影しているので,著作物性はあるという認定となります(他方,証明写真のようなものは否定されます)
次に著作者は誰かという検討となります。この点あまり論じている人は少ないと思いますが,アイドル甲と撮影者丙のいずれか,又は共同の著作者という論点になりますが,あんまり実益もなさそうなので,著作物性を肯定している趣旨を拡張し,撮影者丙という整理とします(というのもアイドル甲がA以外だと問題になりますが,共に職務著作となるので,問題の実益が低いからです)。
さらに職務著作が成立するか?
職務著作の要件を検討してもらい,
① 著作物の作成が法人等の発意に基づくこと,→企画
② 法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物であること→Aの社内撮影会
③ 当該著作物が法人等の著作名義の下に公表されること
この点未公表写真の論点がありますね。もっとも,本件ではスタッフロールのαで出てくること,内部規則で持ち出し厳禁,データ廃棄を求めていたこと,から肯定されるでしょう。
④ 作成時における契約,勤務規則その他に別段の定めがないこと
職務著作は成立し,Aが著作者となります。
支分権該当性
「印刷」は定義をひいて複製権侵害
「売却」は譲渡権侵害(又はみなし譲渡権侵害)※公衆の定義,あてはめ
「データの保有」は必要性が肯定(印刷して売却する旨)されるのでOKと端的に指摘すればOKです。
第2 設問2
(1) 中後ゲームソフトαの差止めですが,まずは軽く「映画の著作物」であること,「プログラムの著作物」であることを認定し(といっても映画の方が重要です。),職務著作,頒布権侵害の認定を行ってください
次に消尽の認定です。頒布権に消尽は認められるかを判例に即して記載してください。
(2) これは結構応用なのですが,これ利用者の立場から考えてみると結構裏技だと思い,著作権者を保護しないと思いますね。先に「映画」と「プログラム」という点を指摘しましたが,そうです,デットコピーし放題なんですよね。1週間で頭金だけ払って,コピーして,返せば頭金だけなので・・・これどこかでこのサービス見かけません?今はあれですが,いろいろな中古貸与ソフト屋さんありましたよね(今はサブスクが多いと思いますが)
ここに思いをはせれば,貸与権の話が浮かび,頒布に譲渡と貸与が含まれていること,貸与は消尽しないこと。
当該サービスは成り立たないと思います。割賦販売しなければ大丈夫なので,なんかおかしい気もしますが,免除がなければOKなんですよね。なので当該サービスの差止めという問の設定です。
第3 設問3
βには著作権はありませんが,著作者人格権は残存し,同一性保持権侵害を主張しています。
まずは黙示の不行使特約が反論できるでしょう。
もっとも丁はこれを援用できる立場かというと少々苦しいようにも思います。とはいえこの事情は同一性保持権の「やむをえない事由」あたりで主張できるでしょう。
想起される元の著作物に沿って改変する,新・梅田シティ事件です。
著作物の性質→ゲームの気風,内容,雰囲気に即して編曲することは当然,特にエンターテイメント事業A作成ということは乙も当然続編が出来上がることを業務の性質から予測でき,ゲームの性質からして予測可能。
利用の目的→今回元の著作物の続編に伴い,「編曲」することになったこと,ゲームの気風,内容に合わせることは当然。
利用態様 落ち着いた→テンポの速い,ゲームBGMに使用,名誉も害さない,
といった事情を併せて評価するとうまくいくかと思います。(建築物の外装と内装を併せて改変するときに,利益状況に内装に制約が若干来るとは思います。
(もちろんいや制約はないという反論もできますが,要はそのあたりの感覚をもちいて,評価しつくしてください。そういうところを見ていると思います。似たものを,過去のものを,法や条文との距離感を意識して比較すると評価の手法のストックがたまるとは思います)
そして,そのゲーム会社Aと乙は黙示の著作者人格権不行使特約ともいえるものを内在していること,(先ほどの利益考量をこの総合考慮で使用します)
といった点を指摘し,反論が可能かと思います。