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「冷やし中華」は中国を冷やしているのか?

冷やし中華を前にすると、泣きたくなる。


(photoAC)


だっておいしいんだもの😄


「暑い夏、冷たいものを食べて乗り切ろう!!」


という作り手の心意気が実によい。

ルンルンしながら冷やし中華を食べていると、スマホで再生していたニュースで「中国」という言葉が聞こえた。

そこで私は思う。

「『冷やし中華』って名前、よく考えるとヘンだよな・・・・・・」

冷やし中華の”中華”は、『中華人民共和国』のことだろう。

冷やし中華は『中華人民共和国』を冷やしているのだろうか?


そんなわけはない。
では――。


というわけで、今回のお題。



この記事について⬇️⬇️



❶国名がつく名前の食べ物は?


国名がつく食べ物は、いくつかある。

列挙してみよう。

◆フランスパン
◆韓国海苔のり
◆インドカレー
◆トルコアイス
◆台湾まぜそば

◆チリソース
「※チリソースは🇨🇱国ではなく、🌶️のソース」とのご指摘をいただきました。1inhale4savasanaさん、ありがとうございます!


これらはみな、

「国名+食べ物名」

という構造である。




では、「冷やし中華」と比べると、どうか?


「冷やし中華」はどう見ても異端児である。

「中華」というのは「中華人民共和国」のことで間違いない。
それが「中華」と略されているのは、わかる。文字数が多いからだ。


しかし、中華=中国という国を冷やしていったいどうしようというのだろうか。


食べ物名が一切入ってないではないか。


❷他の「冷やし」は?


では、他に「冷やし」がつく食べ物は、どうだろうか。

◆冷やしぜんざい
◆冷やしうどん
◆冷やしラーメン

などがある。


どれも、

「冷やし」+「食べ物名」

という構造である。


これらも、冷やし中華と比べてみよう。


やはり、「冷やし中華」は不自然だ。


「冷やし」系の食べ物の中でも、冷やし中華は異例の存在なのである。


❸「中華」がつく食べ物


「冷やし中華」以外に、「中華」がつく食べ物を挙げてみよう。


◆中華まん
◆中華そば
◆中華ちまき

これらの食べ物は、すべて「中華」+「食べ物」である。


中華そば(≒しょうゆラーメン)
(photoAC)


ということは、「中華」がつくからおかしい、というワケではない。
「中華」がつく食べ物はいくつかあるが、「冷やし中華」だけが不自然なのだ。




❹「冷やす」と「冷える」


ここで、日本語の側面で考えたい。

「冷やし」の基本形(辞書に載っている形)は、「冷やす」である。
「冷やす」と似た言葉に「冷える」がある。


これらの違いを考えよう。

◆飲み物を冷やす
◆飲み物が冷える

◆エアコンで部屋を冷やす
◆エアコンで部屋が冷える


これらを比べてみると、

「冷やす」の方は、意図的におこなっている


感じがする。

◆飲み物を冷やす(意図的)
予想される状況例:自分で冷蔵庫に飲み物を入れて冷やす。


◆飲み物が冷える(非意図的)
予想される状況例:缶コーヒーを真冬の屋外に出していたら、冷えた。


◆エアコンで部屋を冷やす(意図的)
予想される状況例:来客があるので、事前にエアコンをつけておく。


◆エアコンで部屋が冷える(非意図的)
予想される状況例:エアコンをつけっぱなしにしてしまい、部屋が冷える。


たとえば、熱い夏に仕事を終えて帰宅し、家族に、

「ビール、冷やしてある・・・・・・よっ!」

なんて言われたら、嬉しいはずだろう。


この文は、

「ビール、冷えてる・・・・よっ!」

に比べ、

「(あなたは冷たいビールが好きだから、わざわざ冷蔵庫に入れて意図的に)冷やしてあるよっ!」

というありがたみを感じられるからだ。


↓ツイッターの例


つまり、「冷やす」には「意図的に・・・・冷やしました」という意味が込められていると言えるのだ。



❺意図的に「冷やされた」食べ物


「冷やす」には、「意図的に冷やしました」という意味が込められている。

このことを踏まえ、もう一度「冷やし〇〇」の食べ物を見てみたい。

◆冷やしぜんざい
◆冷やしうどん
◆冷やしラーメン

これらは、本来なら熱い・・・・・・食べ物である。


湯気が立ちのぼるうどん
(photoAC)



「本来は熱いうどん」を「わざわざ意図的に冷やしておきましたよ」という気持ちを込めて作られたのが「冷やしうどん」なのである。


冷やしうどん(ざるうどん)
(photoAC)


しかし、「冷やし中華」は、どうか。


「冷やし」の対極に位置する、

「熱い中華」なんて料理は存在しない。





謎が解けそうで解けない・・・・・・。



❻新勢力「冷やし〇〇」が答えを導く


とある休日。
遠出した帰り、子どもたちが、


「夜のご飯は、うどんがいい!」


と言った。
帰路で「ちょっといいうどん屋」を見つけたので寄ってみた。


岐阜県の各務原市にある「手打ちうどん 恵那えな」という店である。


↓「恵那」についてツイートしている方



早速メニューを開くと、衝撃的な名前を発見する。





冷やしたぬき!!





無論、動物のタヌキを冷やしたわけではない。

熱いたぬきそばを冷やしたものである。

【※たぬきそば】
地方によって、具材が変わるそうです。

東日本では、「天かす」を乗せます。
大阪では、「油揚げ」を乗せます。
(かなり大雑把にまとめています。ご了承ください)

つまり、「冷やしたぬき」とは「冷やしたぬきそば」の略である。


岐阜県(特に岐阜市)では、「冷やしたぬきそば」がソウルフードとして扱われている。



↓冷やしたぬきを食べている人




そのため、「そば」を省略して「冷やしたぬき」と表現しても、通じるのだ。


「手打ちうどん 恵那」で実際に注文。
おいしくいただきました。





同じことが「冷やし中華」にも言える。

本当は、

冷やし中華


なのだ。
(あくまで私の考えです)


「中華麺」とは、下記のような麺のことです⬇️

名城食品の『中華ろう』という商品です




冷やし中華という料理は夏の風物詩であり、日本人に親しみのある存在である。

「麺」を省略して「冷やし中華」と表現しても通じるのだろう。




「おいおい、肝心の『そば』や『麺』を略してしまったら、ダメなんじゃないのかー?

『冷やしたぬき』は、そば料理の一種だから『そば』が主役。『冷やし中華』も、麵料理だから『麺』が主役だ。主役を略したらアカンだろうが!」

と思った方もいるかもしれない。


たしかに、言葉の構成から考えると、「主役」というものがある。


「冷やしたぬき」や「冷やし中華」は、主役が略された欠陥の言葉なのだろうか?





突然だが、ここで、尋ねよう。
あなたは、日々の”食料品を買う店”を普段はなんと呼んでいるだろうか?


(photoAC)



「スーパー」


と呼んでいますね?


↓スーパーと呼んでいる人の例


本来は「スーパーマーケット」という言葉であり、中心的な言葉は「マーケット」のはずである。


しかし、人々は「マーケット」の方を略し「スーパー」と呼ぶ。
だから『そば』や『麺』といった主役を略してもいいのである。



というわけで答え。


【注意】
あくまで、私の考えです。
別のご意見あれば、コメント欄でぜひ教えてください😊

あ~冷やし中華が食べたくなってきた♪


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