知人
知人の母親は無職で宗教に献金しているため、いつも金欠らしく子供のバイト代と年金で、貧しい暮らしをしている。
にもかかわらず、子供の名前でローンを組み、キッチンをリフォームしたというから、やば。
久しぶりに会った知人は、そのことに腹を立てていたし、切実に困っていた。
「お母さんは相談なしでなんでも決めるから嫌になっちゃう」
「それは嫌だよね、帰り道にそのキッチン見せてよ」と提案し、寄ることになった。
知人の家は、トタンの外壁は白っぽく錆びていて、面格子も数本折れ、薄いガラスが付いた窓枠は腐ってる。
そのくせ、ドアには暗証番号を入力する補助鍵を取付けていて、またそのパスワードが長い。知人は慣れた手つきでボタンをカチカチ押してる。補助鍵がくっついた玄関のドアは、傷んでベニアイタがめくれ上がってる。もしドロボウが間違えてこの家を選んだなら、ピッキングするより、外付けの鍵ごとドアを壊して入るほうが早いことに、すぐ気がつくだろうと思った。
玄関も狭くて、靴を外の洗濯機の横に置くしかなく、その洗濯機の側面に両面テープで固定されてる防犯カメラのダミー品が、私に反応してヨボヨボ光ってる。安っぽいダミーカメラも鍵も、知人の母親が勝手に付けたらしい。
リフォームされたキッチンを見たけど、リフォームというより水回りの修理をした感じたった。でも知人のバイト代が溶けるわけだから、大袈裟に言いたい気持ちはわかる。
知人は、ビールを持っていくから先に2階の部屋に行くよう私を促したので、狭くて急な階段、階段というよりはハシゴを上がり、ドアの無い狭くて天井の低い部屋でしばらく待ってたら、両手にビールとツマミ持ってハシゴを上がってきたから、急いで受け取った。
しばらく愚痴を聞きながら飲んでいたらビールが切れたので、私が買いに行った。1ケース買って戻ると、親子喧嘩が聞こえたので、洗濯機の横にビールを置いて帰ることにした。ビールの箱に、ダミーカメラが反応してヨボヨボ光ってた。