「P」の記録_File4-6
File4:ケジメ
Pがまだ物心ついたばかりの頃、自宅でPの兄の誕生日会があった。楽しくてはしゃいだPは、ハサミを両手で開閉しながら踊り回った。危険極まりない。最初で最後の犠牲者となったのは、Pの兄だった。Pは兄の指をハサミで切ってしまった。不幸中の幸い、切れ味が悪い子供用のハサミであったため、兄の指は切り離されることなく、元通りに治った。ちなみに兄はPに対して一切怒らなかったという。
File5:破壊神
Pとその兄がまだ保育園児だった頃、クリスマスプレゼントのラジコンカーで兄が遊んでいた。その横にPは突然丸太を持って現れた。次の瞬間、丸太をラジコンカーに向かって思い切り振り下ろした。Pの狙いは見事に命中、ラジコンカーは見るも無惨な姿になった。のちに理由を聞くと、兄がラジコンカーで遊んでばかりで、自分と遊んでくれないから壊したのだという。当時の兄はそれをあっさり許して、Pと遊んでやったという。
File6:徘徊
これはまだ私が小学六年生の頃の話である。
私の小学校は、中庭を挟んで向かい合うように教室棟があり、二階建てで上級生が上の階を使っていた。三年生と六年生、四年生と五年生の教室がそれぞれ同じ棟の上下に位置しているため、六年生は廊下の窓から外を見下ろすと、反対側の一階にある四年生の教室内が見える。上の階の窓から雑巾なんかを投げて遊ぶ生徒が先生に叱られる光景は、幾度となく目にしてきた。
授業時間中に廊下に出る機会があったので、四年生の教室を眺めていた。授業をする先生と生徒。皆が座って授業を受けている中に、不審な輩を一名発見した。
ゴムの伸びきった赤白帽子をくるくると回しながら、教室の後ろを円を描くように徘徊している。その堂々たる行進は、サーカス団の曲芸師を思わせた。不思議なことに、ほかの生徒や先生は全く気に留めず、まるでそんな生き物はいないかのように授業は淡々と進められている。あれは幻だとでも言うのだろうか。
私の困惑をよそに、かの珍獣は行進を続けている。
これが私の初めて見たPの学校生活である。