公務員からの転職に思うこと
2012年春、私は某自治体の行政職として、社会人人人生をスタートさせました。
地元の国立大学の法学部を出て、地元で公務員として働く。王道の安定ルートに乗っていたはずのですが、10年後私はその職を離れ、転職の道を選びました。
公務員からの転職と私の経験について思うことを書きたいと思います。
公務員としての私
他の方がどう評価していたかはわかりませんが、自分がどういう公務員だったかと自分で思い返してみると、公務員ぽくない公務員だったと思います。
なにより「真面目」に働くということが苦手でした。
※ここでいう「真面目」とは1つ前の記事で書いた本来の「誠実であること」という意味とは違い、「しっかりと形式上のルールを守る」という意味での「真面目」です。
本来の事業目的や楽しく働くことを阻害するような無意味なルールにどうしても最後まで馴染めませんでした。
今でも覚えていますが、「業務用のメールはあくまで仕事用であるから、それを使って飲み会の調整をした場合は処分する」という話がでたときに、私はこの組織で生きていくことはできないと改めて悟り、転職を決意しました。
公務員からの転職は「危険」か
公務員から転職するという話を家族にしたとき、反対派と賛成派に分かれました。
賛成派は夫と妹。反対派は両親です。やはりこの辺りには年代の差というのが出ているのでしょうか。
きっと両親が現役世代であったころは、公務員こそが安定した職業であり、特に女性が長く働くにはそれが最適解だったのだとも思います。
私も公務員として働き始めた10年前にはそう信じていました。
ですが、それから10年。10年も経てば、時代も空気も変わります。今20~30代の私たちにとって、転職はもはやレアな話ではありません。
10年間公務員として働いていた間にも次々と同期は転職をし、次のフィールドに飛び立っていきました。民間で働いていた友人も、資格を取って転職したり、留学したり、みんな主体的に自身のキャリアと向き合っていました。
自分で自分の仕事をどうしていくか考えて取り組む人こそ生き生きとしてみえましたし、結果も伴っているように思います。
私は公務員として働き続けることにどうしても受け身の印象しか持てませんでした。「安定しているから」「クビにはならないから」という受け身の理由だけで定年までだらだらと働き続けてしまうのであれば、それこそがリスクだと感じました。
主体的に自分のキャリアを考えていくなら、自分の選べる選択肢が増える道を行きたいと思い公務員を辞めました。
もちろん、公務員で働き続ける方も素敵です。ただ、その選択をする人達がが、納得して自ら考え選んで、公務員として勤め上げる道を選んでくださっていることを切に願います。(残念ながら、現役時代にそのような意見を聞くことは、稀でしたが…)
公務員からの転職は「困難」か
次に、実際に公務員から転職ができるかという話ですが、自分自身の例を見るともちろん今民間企業に場所を移し、働けているので「できます」という答えになります。
ただし、やはり必要な条件はあるかと思います。
能力があること
当然ですが、能力が高い人は、どの場所で働いても結果が出せると思います。
個人的には、履歴書に書く「TOEIC○○点」といったスキルよりも、結局その人のそもそもの能力が重要だと思っています。
論理的に考えられるとか、人間関係を踏まえてうまく調整できる、とかそいういった類のことです。
経験があること
転職をしてみて思いましたが、やはり30歳を過ぎてからだと、全く今までと関係ない仕事を転職してやるのは難しいかもしれません。
少しでも公務員時代の経験が生かせる仕事を探すというのは重要かなと思います。
そして、これは公務員あるあるですが、どういう仕事を公務員として経験できるかは部署異動の「運」によるところが大きく、結局経験も「運次第」になってしまいます。
これが、公務員のキャリアの一番つらいところではないでしょうか。
公務員を辞める強い意志があること
最後に、「辞める意志」です。
なんだかんだ言って、公務員はやはり安定しています。仕事してもしなくても、給料は変わりません。部署ガチャに失敗してスーパー激務でも、日々暇で有給全消化でも、基本同じ給料です。
そういう環境が楽だと思う気持ちがあるとやはり転職活動、あるいは転職の妨げになるように思います。
「仕事面白くない」「辞めたい」と多くの元同僚が口にしていましたが、転職活動まで実際に行う人は多くありませんでした。また、実際に転職活動の結果、内定までもらっても最後踏ん切りがつかず、辞退し残ることに決めた人は、私の知り合いにもいます。
公務員じゃない世界で頑張る!と、怖いですが腹をくくることは意外と結構大事かなと思います。
私の場合
まず、悲しい事実でが「能力があること」という条件は満たしていませんでした。いたって普通の人間です。
ただ、2つ目の「経験があること」については、今の会社の求める経験とぴったりフィットしたのだと思われます。つまり、「運がよかった」んですね。
一応、自分の微かなプライドのために書くと、公務員時代、与えられた場所(部署、業務)では精一杯仕事をしてきたつもりです。場所がどこになるかは運要素がすべてですが、そこで得た経験については、私の努力によって少しは質が向上したと信じたいところです。
3つ目の「公務員を辞める強い意志があること」に関しては、20代後半から徐々に考え始め、転職活動を本格的にしている際には、絶対転職する!と思っていました。
「公務員として定年まで勤めるのは私には無理だ」という思いが、年を経るごとにどんどん強くなっていったように思います。
私の転職活動
自分の考える3つの条件のうち、2つしか満たさず、おそらく一番重要な「能力」に秀でるところのなかった私の転職活動は、簡単ではありませんでした。
志望度の差を無視するならば、合計数十社は応募しましたし、実際内定をもらったのはわずか2社です。
業務をしながらの転職活動は体力的にしんどかったですし、この年になって何度も「お断り」を受けるのはメンタルも削られるところがありました。
しかし、結果的には2社のうちの1社(今の会社)に転職を決意し、とても楽しく働いています。転職から半年が経とうとしている今、公務員を辞めたことに全く後悔はありません。
公務員としてのキャリアとは違い、5年後10年後も見えない道に移ってきましたが、人生の選択肢が増えているという実感とともに、日々の充実を感じています。
公務員からの転職は「できる」し「必要」
公務員からの転職はできます。考えている方がいるのなら、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
こんなことを書くと自治体の人事の人に怒られそうですが、私はもっとどんどん公務員が辞めるようになってほしいです。
そのくらいの事実がないと、長い歴史の中で凝り固まった悪しきルールや職員の意識は変わらないと思うからです。
そして、優秀な人を確保するために、魅力ある職場、仕事内容に変わってほしいと強く願っています。
行政も人材が流動化し、新陳代謝がよい場所になる必要があると思うし、その方向へ向かう流れは今後も止められないと思います。
そうなれば、もはや公務員からの転職は「もったいないこと」ではありません。
公務員という職業において、「安定性」という名のメリットの顔をした錘ができるだけ早くなくなることを元公務員は祈っています。