社割で洋服をかったら、何か変わるかもしれない。

いま、ちょっと辛い。新しく入った会社で、仕事をするのが辛いのだ。原因はわかっている。

いままで優しい人たちに囲まれてきたからだろうか。雨をも跳ねのけそうな強い人と遭遇すると、びっくりしてしまう。そして部署の上司は、そういう方だった。サバサバしている方なのだと必死で思おうとしても、上手くできない。

早めに見切りをつけるのか、それとも、やりたかったことができるまで、もう少しだけ頑張ってみるのか。

この2週間のあいだ、考えても考えても簡単には答えは出ない。

どちらを取るとしても、自分がなにか行動を起こさなければ、現状だって変わってくれないはずだ。

だから今日、ひとつやってみたことがある。

はじめて、社割をつかって洋服をかってみたのだ。申し遅れたが、わたしはアパレルの会社で働いている。だけどお店に立つわけではないから、自社の商品を必ず身につける必要はない。義務ではないけど、ついに自社服を購入した。

うちは通販のみで販売をしているから、今かったとしても自分の手元に届くまでには時間がかかる。購入方法も、お客さん時代とおんなじだ。ログイン画面からメールアドレスとパスワードをいれて、ほしい商品をカゴに入れる。指定されたクーポンコードを入力すると、社割が適用されるという仕組みというわけだ。

不規則な暗号を入力すると、取り消し線がひかれて金額が訂正される。これって社内の人間にしか適用されないものなんだよな。

わたしもこの会社の一員であることは、どうやら確かみたいだった。仕事中に縮んでいった背筋が、少しずつ元に戻っていく。

そうだ、わたしはちゃんとこの会社で採用された人間なのだ。事実を再確認できた、たいせつな夜になった。

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