今日もまた、おくすり手帳を忘れてしまった。
「おくすり手帳、もってきてますか?」
「あ、今日わすれてしまって……」
こんなやりとりをしたのは、何回目になるだろうか。わたしが答えるべきは、正確には「あ、今日もわすれてしまって……」というセリフに違いない。宿題を家にわすれたことを先生に報告する、情けない小学生時代にタイムスリップしたような気分になる。
おくすり手帳の存在は、冒頭のセリフを薬局できかれてはじめて思い出す。過去の処方歴を確認してもらう重要な役割を担っているはずが、なぜだか私的知名度は低いままである。でかける直前、診察券はしっかりとカバンの中にいれるのに、おくすり手帳はというと、その存在すら脳内に残っていない。
これまで持って行けた回数なんて、片手でおさまるくらいしかない。わたしの場合、忘れることがデフォルトなのだ。
だからわたしは、こう考えることにした。
「おくすり手帳を持って行けたことは、虹を目撃するくらい珍しいこと」。
達成できた暁には、病院帰り、コンビニで杏仁豆腐を買ってもよいこととする。
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