勇敢になりたい日には。
札幌に来てから、好きな古着屋さんができた。その中で最初に接客をしてくださった店員さんが質問が上手で、記憶力が抜群な方だ。すぐにその店員さんのファンになってしまって、行ったらついつい喋りすぎてしまうし、近くに来たらついつい寄ってしまうようになった。
その店員さんは、店長なのだという。だからだったのか。いつも教えてくれる洋服の知識が、すごく勉強になる。この前はアランニットについて話してくれた。
アランニットとは、どこの古着屋さんでも冬になれば必ずといってもいいほど置いてある分厚いニットだ。決まって色は白いものが多くて、編み方もひとつひとつ少しずつ違う。
その店員さんが言うには、これはフィッシャーマン、つまり漁師の方が着ているものだったという。漁に着ていくから、風を通さないくらい分厚い糸できつく編み上げられている。それゆえに温かいのだ。
そして網目の模様は、各家庭で独自のものがあるらしく、網目をみれば、どこの家庭で作られたのもわかるそうだ。だから、水難事故にあったときの身分証明の役割もしていた、という悲しい話まで教えてくれた。
かつてフィッシャーマンが着ていたニットを、わたしも1着買うことにした。
漁師さんのような、勇敢な人になりたい日に着ようと思う。着ればたちまち、勇気が湧いてくるような気がする。そして社会の波に流されないよう、つよくつよく生きていきたい。
勇敢にならなくていい平穏な日でも、かわいいから着てしまうと思うけど。