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人口オーナス期における「教育」「学び」の姿は

沼田翔二朗 (第23期・高崎市・NPO法人DNA)

現代を生きる群馬の10代は、2つの歴史的な出来事を経験している世代である。一つはいわずもがな「コロナ禍」。学ぶことでも、遊ぶことでもニューノーマルが求められている。そしてもう一つは「明治以降、戦後最大」といわれる教育改革である。

産業革命時に発明された教育システムである「一斉授業」は、日本には明治時代に輸入された。日本式に変更しながら、およそ150年続く日本社会の学校教育を支え、今日に至るまで発展されてきた。一説によると、アフリカ南部に位置するザンビア共和国にも日本の教育システムを参考にされていると耳にするほど、世界的にも日本の教育システムが広がっている。

また、日本の高度経済成長を支えてきたのも、この教育システムだ。市場はモノに飢えて、「作れば売れる時代」を経験した日本においては、一分一秒でも指示されたこと通りに習い、動けば、働く評価に値する。なぜなら、標準・規定通りに作れば売れるため、標準・規定通りに動けば成果が上がるからだ。社会(仕事社会)と、学校教育がピタッと連動しながら、開発・発展されてきた「一斉授業」は、素晴らしい教育システムであるといえよう。しかし、だ。その教育システムが大きく通用するのは、「人口ボーナス期」の国々である。

「人口ボーナス期」は、若者がたくさん溢れ、高齢者が少ししか居ない時期のことで、人口構造によって経済にボーナスを与えてくれる時期のことだ。社会保障よりもインフラに投資ができ、市場も成熟していないために、経済発展をするのがある意味では当たり前(※)と指摘されている。この時期にはまったのが、いわゆる「一斉授業」だ。ただ、残念なことに私たちが生きる日本、もっというと群馬、さらにいえば私の故郷である北海道は、とっくの昔に「人口オーナス期」に入ってしまっている。

「人口オーナス期」は、若者がほとんど居なく、高齢者が多くいる時期のことで、人口構造が経済に負荷を与えてしまう時期のことを指す。社会保障費の割合が増えるとともに、市場も成熟し、「作れば売れる時代」から「付加価値の高いものが売れる時代」に突入する。日本は、2000年前半にオーナス期に入り、15年近く経ってしまっている。この時期においては、規定通りに動くことだけではなく、自ら課題を発見したり、創造性を発揮していくことが必要不可欠になるために、連動して教育のあり方も見直される必要になる。

そのような背景の中で取り組まれているのが、「明治以降、戦後最大」といわれる教育改革である(ただし、本稿ではわかりやすく「一斉授業」をピックアップし表現しているが、この改革は学習指導要領の改訂に基づく「社会に開かれた教育課程」「探究的な学び」や、「大学入試改革」「GIGAスクール構想」等の様々なことを含めた一連の教育改革のことを指す)。

言わずもがな、教育は経済成長を支えるため“だけ“の手段ではなく、本来は一人ひとりが幸せに生きるための力を身につけていくものである。一人ひとりの幸せや豊かさを目指した「教育」や「学び」は、いったいどのようなものだろうか。ニューノーマルな「教育」「学び」の姿は、どのようなものなのか。さらに私自身の個人的な問いとしては、「群馬の10代が学びの創り手となる教育環境を、向こう10年でどのように実装していけばよいのか」である。

そのようなことを、この「オピニオン・ネクストぐんま」では、みなさんとともに探っていきたいと思っています。


(参考)
●「平成27年版厚生労働白書 -人口減少社会を考える-」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/
●「人口ボーナス期・オーナス期」ハーバード大学デービッド・ブルーム(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%82%B9#cite_note-jetro-2
●「人口構造から見るゲームチェンジの必要性」小室淑恵氏/株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役(youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=NTwOUPCI1w4&feature=emb_title


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